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【レビュー】クリスマスの新たな名曲 | ビバ☆シェリー『クリスマスソング』

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ビバ☆シェリー『クリスマスソング』

ビバ☆シェリー
クリスマスソング
SIMPO RECORDS, 2016年
BUY: SIMPO RECORDS

例えるなら、80年代のハリウッド映画に登場する賑やかなパブのジュークボックスから流れる往年のクリスマス・ソング。子供のころ何も考えずにワクワクしていたクリスマスの高揚感を、ビバ☆シェリーのクリスマス企画CDを聴いて思い出した。そんな感覚に陥るのは音楽の魔法の効用であり、そんな魔法をいともたやすく体現する彼女たちには舌を巻くばかりだ。

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【レビュー】ナイショから世界へ | From Here To Another Place

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Helga Press『From Here To Another Place』

Helga Press(岡村詩野)
From Here To Another Place
Helga Press, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

京都三条会商店街の自転車屋店内奥に、こっそりと営業している喫茶店がある。その名もナイショ。そこに自家製ケーキを卸しているのがマルヤマさんという男性で、彼は勤め人をしつつ、自主レーベルからフォーク・シンガー安藤明子さんの7インチレコードを出している。安藤さんがマイマイズの東くん、ムーズムズの小西くんと主催している不定期イベント「具なし焼きそばナイト」が、7月某日、浄土寺の軽食屋みなみで開かれた。今は閉店したみなみの店長をしていたのが風の又サニーのギター今成哲夫で、風の又サニーは来る10月、木屋町アバンギルドでボニー・プリンス・ビリーと共演を果たす。風の又サニーのパーカッションが、本作『From Here To Another Place』の一曲目に収録されているシャラポア野口だ。

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【レビュー】アパート、街へ出る | アパート『ACCESS THE AGE』

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アパート『ACCESS THE AGE』

アパート
ACCESS THE AGE
自主制作, 2016年
BUY: ライヴ会場、100000tアローントコほか

これは「街」のアルバムだとアパートこと原田和樹くんは語る。京都で一人ユニットとして活動する彼が、宅録を彷彿とさせる前作のスタイルを捨て、同世代の音楽仲間と作り上げたのがこのセカンド・アルバムだ。その代表曲M5「歓楽街は賑やか」は、夜の街を歌った艶っぽいR&Bナンバー。弾き語りライブでは”What’s going on…”とマーヴィン・ゲイの名曲の一節を挿入していた。だが、R&Bだけが本作のサウンドというわけではない。アルバムに収録されている他の曲は、フォークやサンバ、完成に半年かけたというヒップホップまで揃っており、ただならぬ深みを感じる。

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【レビュー】トーベヤンソン・ニューヨーク『Someone Like You』

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自戒なのだが、シャッグスやヴァセリンズを例に取り、演奏の下手さを安易に抽出してバンドを評することがよくある。

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【レビュー】ギリシャラブ『商品』

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ギリシャラブ『商品』

ギリシャラブ
商品
SIMPO RECORDS, 2015年
BUY: SIMPO RECORDS

演奏力も歌唱力もいらない。ただ溢れんばかりの音楽愛があれば。

「ヘタウマ」賛美の定型句に辟易とする読者もあろうが、その魅力を考え直したい。まず、私はそういった音楽を聴いていると、身近で音が鳴っているような錯覚に陥る。例えば初期のくるりがそうだった。プロ・ミュージシャンの音とは明らかに違う、変な曲に変な歌詞。まるで近所の大学生のお兄ちゃんが思いつきそうな、身近で楽しいアイデアが詰め込まれていた。

その点に関しては似た香りを感じる。ギリシャラブだ。2014年、京都の某大学で結成され、メンバー変遷を経て活動を続ける三人組。昨年、人気レコーディング・スタジオSIMPOが立ち上げた同名レーベルの第一弾としてEP『商品』を発表した。これがまさに、ひねくれたポップス・センスの光る「身近な音」だったのだ。

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【コラム】スリー・オクロック初来日によせて

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The Three O'Clock: Sixteen Tambourines

The Three O’Clock
Sixteen Tambourines
Frontier Records, 1983年
BUY: Amazon CD, iTunes

渋谷系ミュージシャンに習って自分もレコードを聴かなければ。そう思い立ったのは、もう15年前のこと。いま思えば、軽率な志で中古LPの世界に足を踏み入れたものだ。そんなわけで、初めて立ち寄った中古レコード店では、置いてあるLPを見ても、知らない名前ばかり。引っ込みがつかない私は“ギターポップ”と書かれた箱の中から、ジャケットが気に入ったものを買うことに決めた。右も左もわからない広大な世界で“ジャケ買い”を無理やり羅針盤にしたのだ。

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アパート: 写生帖

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アパート: 写生帖

アパート
写生帖
自主制作, 2014年
BUY: ライヴ会場, 100000tアローントコ

戦後すぐ、当時の俳句について、とんでもない批判がなされた。素人とプロの俳句を数作、無記名で並べたところ、どれがプロの句か判別できなかった。そのような事態が起こるのは、現代俳句が未完成な芸術だからであり、真の芸術とは区分して“第二芸術”と呼ぶべきだ。仏文学者の桑原武夫『第二芸術論』である。

私はポップミュージックも第二芸術だと思う。未完成と言えば聞こえが悪いが、見方を変えれば、無名の素人が大家に比肩できるほど、その芸術分野には未知の可能性があるとも捉えられる。原田和樹ことアパートの『写生帖』を聴いて、この自論は確固たるものに変わった。

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