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【レビュー】若き表現者と友達が作る楽園 | 中村佳穂『リピー塔がたつ』

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中村佳穂『リピー塔がたつ』

中村佳穂
リピー塔がたつ
SIMPO RECORDS, 2016年
BUY: SIMPO RECORDS

友人が無ければ世界は荒野に過ぎない。と、言ったのはフランシス・ベーコンだが、この作品もまた彼女の友人達がいなければ完成できなかった作品と言ってもいいのかもしれない。彼女というのは中村佳穂、まだ20代前半の若き歌い手、いや表現者と言ったほうが相応しいのかもしれない。

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【ライヴレビュー】葉山久瑠実復帰記念企画『しあわせ売り場はどこですか?』at 梅田シャングリラ

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【ライヴレポート】葉山久瑠実復帰記念企画『しあわせ売り場はどこですか?』at 梅田シャングリラ

【ライヴレポート】葉山久瑠実復帰記念企画『しあわせ売り場はどこですか?』at 梅田シャングリラ

長らくお待たせ致しました。
会場でお会いしましょう。

彼女がTwitterでツイートしてからこの日をどれだけ待っていたか。ゴールデンウィーク明けた5月10日の火曜日。大粒の雨が降る中、私は梅田シャングリラへと足を運んだ。彼女の、そう葉山久瑠実のライヴを観るために。

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【レビュー】~紙の月~ | Special Favorite Music『World’s Magic』

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Special Favorite Music『World's Magic』

Special Favorite Music
World’s Magic
P-VINE RECORDS, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunesで見る

ここは見世物の世界 何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら すべてが本物になる

(作曲:ハロルド・アーレン 作詞:エドガー・イップ・ハーバーグ、ビリー・ロウズ 「It’s Only a Paper Moon」より抜粋)

村上春樹の『1Q84』はこんなエピグラフから始まる。この小説に登場する“1Q84”という世界ではビック・ブラザーという大いなる支配者がいなくなり、向かうべき目的を失った若者達が“ここではない、どこか”へと自らの存在を求め、その結果リトル・ピープルに魅せられてしまい、捕らわれるといった事が描かれている。僕はこの小説を読みながら「もし、この世界にこんな音楽があれば人々は救われるのでは。」と、そんなことを考えていた。自らをリトル・ピープルの時代に生まれ育ったというSpecial Favorite Musicはそんな心に傷を負い、疲れ果てた人々に音楽という魔法で一筋の光を届けてくれる。そう、それが『World’s Magic』である。

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【レビュー】終わりは始まり | リアーナ『アンチ』

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リアーナ『アンチ』

リアーナ
アンチ
Universal Music, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunesで見る

我々が始まりと呼ぶものは往々にして終わりでもある。
締めくくりは始まりでもある。結末は我々の出発点なのだ。

T.S. エリオットの詩集『4つの四重奏』にある「リトル・ギディング」の最終章はこのような書き出しである。『4つの四重奏』の重要なモチーフの一つは“時間”であり、時間は直線的に流れているのではなく、過去、現在、そして未来は互いに影響し合って円環的に流れているという事が書いているのだが、そのように考えればリアーナの『アンチ』はその体現ともいえる。そう、この作品こそリアーナの“終わり”であり“始まり”なのである。

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【レビュー】女は怖い | 葉山久瑠実『いてもいなくても一緒だよ?』

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葉山久瑠実『いてもいなくても一緒だよ?』

葉山久瑠実
いてもいなくても一緒だよ?
dont care records, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

今回『いてもいなくても一緒だよ?』を聴くにあたり、改めて過去にリリースされた作品を聴き直していたのだが、その時に「葉山久瑠実というアーティストはブラック・ユーモアのセンスがあるアーティストなのかもしれない。」と、そんなことを感じた。以前、このki-ftで葉山久瑠実の『イストワール』をレビューしたときに、生々しいながらもコミカルとシニカルが融合した歌詞と、一歩引いて客観的に見る構成が彼女の魅力であるという事を書いたのだが、それはブラック・ユーモアという差別や偏見といった笑えない事を、皮肉やユーモアを交えて描くときに生きる要素ではないかと考える。そして、顎関節症により歌手活動を約1年休止していた彼女が2月5日にリリースする本作は、まさにこのセンスが思う存分に活かされた形で女性というものを描いた作品となっている。

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【レビュー】音楽で国を変えようとした男 | フェラ・クティ『ゾンビ』

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フェラ・クティ『ゾンビ』

Fela Kuti
Zombie
Knitting Factory, 1976年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

フェラ・クティと言えばファンクやジャズ、アフリカ音楽などを咀嚼し“アフロビート”という音楽を確立した人物であるが、そのダンサブルなサウンドとは対照的に歌詞は黒人の解放や母国ナイジェリアの政府を非難したものが目立つ。ナイジェリアといえばアフリカ大陸では最大級の石油産出国であるが、上流階級の人間はごく一部あり、国民の大半は貧困に苦しむ状況が古くから続いている。この国を音楽で変えようとフェラは白人に強制的つけられたという理由でミドルネームであったキリスト教の洗礼名を捨て、ナイジェリアにて活動を行っていた。反政府的な姿勢から何度も言われのない罪で逮捕されたが、それでも彼は屈せず、その体験すらも自らの音楽へと変えていった。その集大成となった作品こそ、この『ゾンビ』である。

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【ライヴレビュー】ベースメント・ジャックス〈JAPAN TOUR 2015〉at 大阪なんばHatch

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BASEMENT JAXX『Junto』

BASEMENT JAXX
フント(Junto)
Hostess Entertainment, 2014年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunesで見る

「ヤバい!! 楽しい!!」

終演後、思わずそんなことを大声で叫んでしまった。〈FUJI ROCK FESTIVAL 2014〉でのライヴ以降、12月には地元イギリスはロンドンにて2万人規模のアリーナ公演を成功させて、今まさに波に乗っているベースメント・ジャックス。そんな彼らの5年ぶりとなる大阪でのワンマン・ライヴは、明るくメロウなダンサブルなナンバーが目立った最新アルバム『フント(Junto)』を受けてのツアーだけあって、徹底的に観客が踊れる演奏を想像したが、“ライヴ”と“ショー”という2つのエンターテイメントを楽しめるものであった。

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【レビュー】CARD『LUCKY ME』

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CARD『LUCKY ME』

CARD
LUCKY ME
STIFF SLACK, 2015年
BUY: STIFF SLACK, Amazon CD, タワーレコード

“心地の良い曖昧さ”。そんな言葉が似合う作品だ。サウンドや歌声、歌詞に至るまで淡い色彩で描かれた抽象画のごとく、はっきりとした形ではあらわす事が出来ない良さがにじみ出ている。その作品こそCARDの2nd アルバム『LUCKY ME』である。

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【レビュー】中村佳穂『口うつしロマンス』

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中村佳穂『口うつしロマンス』

中村佳穂
『口うつしロマンス』
studioSIMPO, 2014年
BUY: studioSIMPO

ある日、ツイッターにてくるりの岸田繁が京都のSTUDIO SIMPOに行った事を呟いていた。その際、そこで録音されたあるアーティストに対して“良かった”と呟いており、気になった僕は試しにその音源を聴いてみた。ピアノの音がどんどん加速をつけて走り出し、そのサウンドが最高速になった瞬間〈重なり合う手をとって 僕らは命を確かめ合うのさ〉と力強い歌声が僕の心を奪っていった。しばらく呆気にとられた後、CDを買ったのは言うまでもない。それが中村佳穂との出会いであった。

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Negipecia: Girl’s Life

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Negipecia: Girl's Life

Negipecia(Negicco / Especia
Girl’s Life
T-Palette Records, 2014年
BUY: Amazon CD & LP, タワーレコード, iTunesで見る

様々なアイドルが登場し「アイドル戦国時代」と呼ばれる昨今。しかし、そんな戦う者同士が時には事務所の垣根を越え、ユニットを組む事もある。新潟のアイドルNegiccoと大阪のアイドルEspeciaがタッグを組んだアイドルユニットNegipeciaがまさにそれである。以前から複数のライヴで共演し、今回「アイドル界を盛り上げていこう」と期間限定で結成(8月30日に解散)。おニャン子クラブからAKB48の楽曲まで手掛けた後藤次利が作曲し、シングル「Girl’s Life」が完成した。

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【コラム】そうだ、OTODAMAへ行こう。

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OTODAMA 2014

OTODAMA 2014 ~音泉魂~のサイトより。

今日は関西のある音楽フェスについて書きたいと思います。日本には様々なフェスがありますが、その中でもお勧めしたいのが大阪は泉大津フェニックスで行われる『OTODAMA’14~音泉魂~』です。

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金 佑龍: ナイトクルージング

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金 佑龍: ナイトクルージング

金 佑龍
ナイトクルージング
Flake Sounds, 2014年
BUY: FLAKE RECORDS, Amazon CD

カットマン・ブーチェを解散後、精力的に活動を続けている金 佑龍(キム ウリョン)が12インチ・アナログ(同内容のCD付き)でミニアルバム『ナイトクルージング』をリリースした。既出曲を含むが、注目すべきは彼のライヴで定番のナンバーであり、タイトルにもなったフィッシュマンズのカヴァー「ナイトクルージング」である。

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遠藤賢司: 恋の歌

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遠藤賢司: 恋の歌

遠藤賢司
恋の歌
disk union / 富士レーベル, 2014年
BUY: Amazon CD

2007年に還暦を迎えたが、その勢いはとどまるところを知らない天下御免の純音楽家、遠藤賢司。デビュー45周年の節目としてキャリア初、全編弾き語りにて作られたこの『恋の歌』は今まで以上に若々しく、エネルギッシュで誰もが新鮮な驚きと感動を得られる作品である。

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葉山久瑠実: イストワール

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葉山久瑠実: イストワール

葉山久瑠実
イストワール
自主制作, 2014年
BUY: 葉山久瑠実 公式サイトにて郵送販売

ある日、パソコンでKANA-BOONやHAPPY等を輩出した音楽コンテスト『eo Music Try』のホームページを見ていた。様々な音源に耳を傾ける中、あるアーティストの唄に思わず体が硬直した。コミカルとシニカルが融合した歌詞に熱のこもるピアノ演奏。しかし、その歌声はビリー・ホリデイのような、どこか暗く虚無感に満ちあふれ、私の耳を惹きつけて離さない。気がつけばそのアーティストの音源を何度も繰り返し聴いていた。これが葉山久瑠実との出会いである。

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