カテゴリー : Disc Review

【レビュー】イージー・ライダーには早すぎる | ギリシャラブ『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』

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ギリシャラブ『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』

ギリシャラブ
イッツ・オンリー・ア・ジョーク
ミロクレコーズ, 2017年
BUY: Amazon CD&DVD, タワーレコード, 楽天ブックス

京都出身のバンド、ギリシャラブ初のフル・アルバムとなる本作。資料に「ティアドロップ・エクスプローズやデーモン・アルバーンのソロ作を日本語ロックとして翻訳する」と書かれていたため、サイケデリックなテイストや現代音楽からの影響を受けた作品になるかと思ってはいたが、とてもメロディアスで愛着のあるポップ・ソング達へと仕上がっており、また不器用ながらも愛らしさを感じるボーカル天川悠雅の歌声はデーモン・アルバーンや ジュリアン・コープよりも『犬は吠えるがキャラバンは進む』の頃の小沢健二の歌声を思い起こさせてくれる。と、本作を一通り聴き終えて、今度は彼らの歌詞を注視しながら改めて聴き直すと驚いた。今まで耳から流れていた音が脳内でヴィジョンとなり映画になったのだ。しかも、それは以前、僕も観たことのある映画だ。豪華絢爛乱な1940年代のハリウッド映画? 違う。フランスのヌーベルバーグ? 違う。この感じは……そうだ、思い出した。アメリカン・ニューシネマだ。

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現在関西音楽帖【第6回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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“よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画”「現在関西音楽帖」は今回は2017年一発目、第6回目の更新。ベランダ『Any Luck to You』、Creepy Nuts『助演男優賞』、Balloon at dawn『Out finder』、揺らぎ『night life e.p.』、ミックスナッツハウス『All You Need is Nuts』、Ribet Towns『ショートショート』の6枚を取り上げる。

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【レビュー】クリスマスの新たな名曲 | ビバ☆シェリー『クリスマスソング』

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ビバ☆シェリー『クリスマスソング』

ビバ☆シェリー
クリスマスソング
SIMPO RECORDS, 2016年
BUY: SIMPO RECORDS

例えるなら、80年代のハリウッド映画に登場する賑やかなパブのジュークボックスから流れる往年のクリスマス・ソング。子供のころ何も考えずにワクワクしていたクリスマスの高揚感を、ビバ☆シェリーのクリスマス企画CDを聴いて思い出した。そんな感覚に陥るのは音楽の魔法の効用であり、そんな魔法をいともたやすく体現する彼女たちには舌を巻くばかりだ。

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現在関西音楽帖【第5回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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“よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画”「現在関西音楽帖」は第5回目の更新。今回はFouFou『Fou is this?』、In The Blue Shirt『Sensation of Blueness』、絶景クジラ『自撮り』、The Josephs『DUNE』、Easycome『風の便りをおしえて』を取り上げる。「現在関西音楽帖【第1回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」「現在関西音楽帖【第2回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」「現在関西音楽帖【第3回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」「現在関西音楽帖【第4回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」と合わせて読んで頂きたい。

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現在関西音楽帖【第4回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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“よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画”「現在関西音楽帖」は第4回目の更新。今回はプププランド『Wake Up & The Light My Fire』、THE BOSSS『おとうふ』、大槻美奈『MIND』、中井大介『somewhere』、YeYe『ひと』、踊る!ディスコ室町『新しいNEWネオ室町』、V.A.『From Here To Another Place』を取り上げる。「現在関西音楽帖【第1回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」「現在関西音楽帖【第2回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」「現在関西音楽帖【第3回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」と合わせて読んで頂きたい。

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【レビュー】ナイショから世界へ | From Here To Another Place

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Helga Press『From Here To Another Place』

Helga Press(岡村詩野)
From Here To Another Place
Helga Press, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

京都三条会商店街の自転車屋店内奥に、こっそりと営業している喫茶店がある。その名もナイショ。そこに自家製ケーキを卸しているのがマルヤマさんという男性で、彼は勤め人をしつつ、自主レーベルからフォーク・シンガー安藤明子さんの7インチレコードを出している。安藤さんがマイマイズの東くん、ムーズムズの小西くんと主催している不定期イベント「具なし焼きそばナイト」が、7月某日、浄土寺の軽食屋みなみで開かれた。今は閉店したみなみの店長をしていたのが風の又サニーのギター今成哲夫で、風の又サニーは来る10月、木屋町アバンギルドでボニー・プリンス・ビリーと共演を果たす。風の又サニーのパーカッションが、本作『From Here To Another Place』の一曲目に収録されているシャラポア野口だ。

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【レビュー】若き表現者と友達が作る楽園 | 中村佳穂『リピー塔がたつ』

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中村佳穂『リピー塔がたつ』

中村佳穂
リピー塔がたつ
SIMPO RECORDS, 2016年
BUY: SIMPO RECORDS

友人が無ければ世界は荒野に過ぎない。と、言ったのはフランシス・ベーコンだが、この作品もまた彼女の友人達がいなければ完成できなかった作品と言ってもいいのかもしれない。彼女というのは中村佳穂、まだ20代前半の若き歌い手、いや表現者と言ったほうが相応しいのかもしれない。

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現在関西音楽帖【第3回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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“よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画”「現在関西音楽帖」は第3回目の更新。今回はカニコーセン『True Blue』、POST MODERN TEAM.『Be Forever Young?』、yonige『かたつむりになりたい』、AZUMI & YAKU『Poor Boy Long Way From Home』を取り上げる。「現在関西音楽帖【第1回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」「現在関西音楽帖【第2回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」と合わせて読んで頂きたい。

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【レビュー】フレッシュ&ポップな熱量を感じるリスタート作 | 花泥棒『Yesterday and more』

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花泥棒『Yesterday and more』

花泥棒
Yesterday and more
Cotton Club, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

京都のバンド、花泥棒。2014年にフロントマン稲本裕太(Vo,G)以外のメンバーが全員脱退、単身夢を追い求めこの東京砂漠に流れ着いたが早くも3年目。今日の京都シーンの充実を見ると上京ドリームなど偉大なる勘違いヤローなのかもしれない。事実東京上京後はまずメンバー探しから始まり、ようやくのことでイラミナタカヒロ(Ba/ex sukida dramas)がジョイン。下北沢THREEでの主催イベント〈DOWN TOWN〉を始め、定期的にライヴを出来る環境を整ったのは比較的最近だろう。本作はようやく届いた東京移住後初音源となる5曲入りのEP。ここには「渚」に代表されるような京都時代のJ-POPな甘酸っぱさも、上京後の模索期間に一時期顕著になっていたファズがかった荒々しいローファイな面もマイルドにブレンドされた、東京でついに一旗あげる準備の整った花泥棒がここにいる!

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現在関西音楽帖【第2回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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“よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画”である「現在関西音楽帖【第1回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~」は、意外や意外と(と言ったら失礼だが)、特にツイッター上では反響も大きく、多くの方がki-ftを訪れることとなった。第2回目ではthe oto factory『date course』、Seiho『Collapse』、DENIMS『iggy & pops』、岡崎体育『BASIN TECHNO』、And Summer Club『HEAVY HAWAII PUNK』、SATORI『よろこびのおんがく』、THE FULL TEENZ『ハローとグッバイのマーチ』の7アーティストを取り上げる。夏〜秋フェスなどで見かける機会も多いだろう。アルバムレビューを参考にして欲しい。

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【レビュー】アパート、街へ出る | アパート『ACCESS THE AGE』

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アパート『ACCESS THE AGE』

アパート
ACCESS THE AGE
自主制作, 2016年
BUY: ライヴ会場、100000tアローントコほか

これは「街」のアルバムだとアパートこと原田和樹くんは語る。京都で一人ユニットとして活動する彼が、宅録を彷彿とさせる前作のスタイルを捨て、同世代の音楽仲間と作り上げたのがこのセカンド・アルバムだ。その代表曲M5「歓楽街は賑やか」は、夜の街を歌った艶っぽいR&Bナンバー。弾き語りライブでは”What’s going on…”とマーヴィン・ゲイの名曲の一節を挿入していた。だが、R&Bだけが本作のサウンドというわけではない。アルバムに収録されている他の曲は、フォークやサンバ、完成に半年かけたというヒップホップまで揃っており、ただならぬ深みを感じる。

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【クロスレビュー】音楽ライター講座in京都〈スピッツ考現学〉で読みあった「みなと」の完成原稿

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スピッツ『みなと』

スピッツ
みなと
ユニバーサルミュージック, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunesで見る

2016年6月〜8月の音楽ライター講座in京都は〈スピッツ考現学〉というテーマで全3回に渡り、20年以上も第一線で活躍しているスピッツを考察します。6月12日の初回では、15th album 『醒めない』(7月27日リリース)への布石となる新曲「みなと」を取り上げ、参加者によるレビューを読み合いました。この記事では提出された原稿をブラッシュアップし、完成したレビューを随時掲載します。

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現在関西音楽帖【第1回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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齢25・フロム大阪。今は“東京の天満”こと阿波踊りとブルースによるカオスなポリリズムが純情的に商店街を席巻する街、高円寺に居を構えるわたくし、品川から地元・新大阪に向かう新幹線の中から口上申し上げております。

関西の音楽を中心に取り上げております音楽メディアki-ft(キフト)は音楽評論家・岡村詩野が講師を務める「音楽ライター講座in京都」の受講者で運営を行っており、間もなく開設2年。“関西音楽へのフォーカス”というコンセプトは2014年3月にBCCKSの電子書籍で発行された前身媒体、『現代関西音楽帖』から引き継いだものでございます。その辺りの詳しい歩みについてはAboutページに説明を任せるとしますが、『現代関西音楽帖』発刊から2年以上経った今、関西のローカルシーンはなお変容と拡大を続けております。

当時新星の芽吹きとして取り上げたtofubeats、Homecomings、夜の本気ダンスらは全国的な人気を獲得し、NOKIES! として取り上げたクメユウスケはSpecial Favorite Musicとしてインディシーンにポップ旋風を吹かせ、THE FULL TEENZやAnd Summer Clubら「生き埋めレコーズ」の面々を始めとして2年前には取り上げていなかったニューカマーたちも続々と台頭しております。

余談にはなりますが、本著の編集長を担当した私も当時は同志社大学の学生でありましたが、今は冒頭の通りのサラリーマンとして東京都(HIGASHI KYOTO)在住の遠隔関西ウォッチング生活となり、2年の時の流れを日々感じております。しかし日本の中枢機能が全て備わった街に住んでいても、年々“関西を拠点とする~”の触れ込みに出会う機会は増すばかり、ましてや関西だけではなく札幌、名古屋、福岡etc……とローカルシーンからの新たな才能の登場はいわんや、ローカルという軸でカテゴライズ(シーン化)するという音楽の聴き方の加速度的な発展をひしひしと感じているのです。

そんなますますの盛り上がりを見せ、リリースタイトルも爆発的に増えております関西シーン。現状のki-ftの体制ではなかなかその全てをフォローしきれないことから、久々の連載企画を立ち上げます。よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画でございます。タイトルは前作を引き継ぎまして「“現在”関西音楽帖」。タイトルは落語家立川談志の名著「現代落語論」の出版50年である昨年、引き継ぐ形で新たな価値観を展開した立川吉笑さん「現在落語論」に対するリスペクト&インスパイアでございます。

2年前も講座受講生である我々の拙い文章、知識不足等々により様々な叱咤激励をいただきましたが、当時も今も“それでも、書くんだよ!!”というマインドは変わっておりません。本稿では関西の音楽の「現在」を紹介してまいりますので興味を持ってもらえるようでしたらこれほど幸いなことはございません。それではさっそく参りましょう。第1回は7枚のご紹介です!(前口上:峯 大貴

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【レビュー】~紙の月~ | Special Favorite Music『World’s Magic』

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Special Favorite Music『World's Magic』

Special Favorite Music
World’s Magic
P-VINE RECORDS, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunesで見る

ここは見世物の世界 何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら すべてが本物になる

(作曲:ハロルド・アーレン 作詞:エドガー・イップ・ハーバーグ、ビリー・ロウズ 「It’s Only a Paper Moon」より抜粋)

村上春樹の『1Q84』はこんなエピグラフから始まる。この小説に登場する“1Q84”という世界ではビック・ブラザーという大いなる支配者がいなくなり、向かうべき目的を失った若者達が“ここではない、どこか”へと自らの存在を求め、その結果リトル・ピープルに魅せられてしまい、捕らわれるといった事が描かれている。僕はこの小説を読みながら「もし、この世界にこんな音楽があれば人々は救われるのでは。」と、そんなことを考えていた。自らをリトル・ピープルの時代に生まれ育ったというSpecial Favorite Musicはそんな心に傷を負い、疲れ果てた人々に音楽という魔法で一筋の光を届けてくれる。そう、それが『World’s Magic』である。

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【レビュー】トーベヤンソン・ニューヨーク『Someone Like You』

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自戒なのだが、シャッグスやヴァセリンズを例に取り、演奏の下手さを安易に抽出してバンドを評することがよくある。

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