カテゴリー : Disc Review

【レビュー】終わりは始まり | リアーナ『アンチ』

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リアーナ『アンチ』

リアーナ
アンチ
Universal Music, 2016年
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我々が始まりと呼ぶものは往々にして終わりでもある。
締めくくりは始まりでもある。結末は我々の出発点なのだ。

T.S. エリオットの詩集『4つの四重奏』にある「リトル・ギディング」の最終章はこのような書き出しである。『4つの四重奏』の重要なモチーフの一つは“時間”であり、時間は直線的に流れているのではなく、過去、現在、そして未来は互いに影響し合って円環的に流れているという事が書いているのだが、そのように考えればリアーナの『アンチ』はその体現ともいえる。そう、この作品こそリアーナの“終わり”であり“始まり”なのである。

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【レビュー】大阪文化の伝統を現代にリバイスさせるミクスチャー・ヒップホップ | ローホー『Garage Pops』

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ローホー『Garage Pops』

ローホー
Garage Pops
P-VINE RECORDS, 2016年
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昨年2015年末の本サイト、ベストアルバム企画でも私が筆頭としてあげていた大阪のラッパー、ローホーの『Garage Pops』がついに全国発売となる。これまでは心斎橋アメリカ村を中心に本人とゆかりのある店数軒、ライヴ会場でしか入手できなかったが、これでどこでも入手が可能だ。とはいっても単なる再発ではなく、Skitトラック含め4曲の追加、既存曲もいくつか録り直しを行い、ジャケットも異なる“白盤”として再構築、全国に打って出る気合いを入れなおしている(これまでの自主制作盤は“黒盤”)。

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【総力特集】Especia第2章へ…。第1章総括の全作品レビュー

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2016年1月17日。新木場STUDIO COASTで行われた5人組大阪堀江系ガールズ・グループEspeciaのフルバンド編成ツアーファイナルワンマン。昨年メジャーデビューを果たし、全国ロングランツアーも開催。飛躍的な活動を見せた2015年の集大成を見ることが出来る場であるとぺシスト・ぺシスタ(ファンの総称)は誰もがそう思い、キャリア最大級の会場、新木場へかけつけた。そんな中アンコールで発表された重大事項とは3月以降の活動拠点を大阪から東京に移すこと、伴って三ノ宮ちか・三瀬ちひろ・脇田もなりの卒業であった。その後披露された最も盛り上がるはずの「We are Especia~泣きながらダンシング~」にも会場は衝撃に打ちひしがれるのみ。こんなに終演後の空気が悪いライヴは初めてで、まるでSMAPに便乗した悪い冗談かと実感の沸かぬまま幕を閉じた。

卒業発表後の1か月間はメジャー初のフルアルバム『CARTA』のレコ発インストアイベントやNegiccoとのユニットNegipeciaでのライヴなどで再び全国を回り、残り少ない5人での活動を駆け抜けた。

そして2月28日恵比寿ガーデンホールで1日2回に分けて行われた東京での最終公演“Hotel Estrella -Check out-”。驚くべきは1部と2部で同じ曲はなく、これまで発表してきた全てである45曲を、MCを挟むことなくノンストップDJスタイルで披露したことだ(※企画シングル「Our SP!CE」とNegipeciaの楽曲を除く)。2時間超給水も取らずただひたすら限られた時間内で全ての曲を披露し切る。その中でも残る冨永悠香と森絵莉加は先を見据えながらも離れる3人を明るく送り出そうと振る舞う。離れる三ノ宮ちかと三瀬ちひろは過度に卒業を思わせることもなくいつも通りのパフォーマンスをこなす。そしてもう一人の卒業メンバー脇田もなりはグループを離れるさみしさと悔しさが身に染み、この先の不安と迷いも顔に滲ませながら複雑そうに最後の花を咲かせていた。

今回の3人の卒業、残る2人の上京、アルバム『CARTA』発売で、第1章が完結と銘打っている。今後の活動はわからないが、今一度このタイミングでこれまでを振り返っておきたい。南堀江という大阪の小さな区域で2012年に産声をあげ、3年9か月を駆け抜けてきたEspecia。結成時はすでにアイドルブームも円熟期、日本のポップス全体としても長らくソウル・ディーバ不在が続く中、立派に補完していた存在として。またシティポップ・A.O.Rなどの80’sサウンドの再評価・再構築のトレンドの中、アイドル界からその潮流を体現していた存在として。後世まで語り続けなければいけないという使命感でもって、ここに第1章全ての音源作品を振り返るテキストを残したいと思う。(峯大貴)

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【レビュー】女は怖い | 葉山久瑠実『いてもいなくても一緒だよ?』

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葉山久瑠実『いてもいなくても一緒だよ?』

葉山久瑠実
いてもいなくても一緒だよ?
dont care records, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

今回『いてもいなくても一緒だよ?』を聴くにあたり、改めて過去にリリースされた作品を聴き直していたのだが、その時に「葉山久瑠実というアーティストはブラック・ユーモアのセンスがあるアーティストなのかもしれない。」と、そんなことを感じた。以前、このki-ftで葉山久瑠実の『イストワール』をレビューしたときに、生々しいながらもコミカルとシニカルが融合した歌詞と、一歩引いて客観的に見る構成が彼女の魅力であるという事を書いたのだが、それはブラック・ユーモアという差別や偏見といった笑えない事を、皮肉やユーモアを交えて描くときに生きる要素ではないかと考える。そして、顎関節症により歌手活動を約1年休止していた彼女が2月5日にリリースする本作は、まさにこのセンスが思う存分に活かされた形で女性というものを描いた作品となっている。

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【レビュー】ギリシャラブ『商品』

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ギリシャラブ『商品』

ギリシャラブ
商品
SIMPO RECORDS, 2015年
BUY: SIMPO RECORDS

演奏力も歌唱力もいらない。ただ溢れんばかりの音楽愛があれば。

「ヘタウマ」賛美の定型句に辟易とする読者もあろうが、その魅力を考え直したい。まず、私はそういった音楽を聴いていると、身近で音が鳴っているような錯覚に陥る。例えば初期のくるりがそうだった。プロ・ミュージシャンの音とは明らかに違う、変な曲に変な歌詞。まるで近所の大学生のお兄ちゃんが思いつきそうな、身近で楽しいアイデアが詰め込まれていた。

その点に関しては似た香りを感じる。ギリシャラブだ。2014年、京都の某大学で結成され、メンバー変遷を経て活動を続ける三人組。昨年、人気レコーディング・スタジオSIMPOが立ち上げた同名レーベルの第一弾としてEP『商品』を発表した。これがまさに、ひねくれたポップス・センスの光る「身近な音」だったのだ。

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【レビュー】現場から生まれたフォークオリエンテッドな“うた” | 中川敬『にじむ残響、バザールの夢』

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中川敬『にじむ残響、バザールの夢』

中川敬
にじむ残響、バザールの夢
ブレスト音楽出版, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

寄る年波に抗いはせずとも、若い世代に負けてられるかと、信念曲げずいつまでも番長気質な中川敬の姿がここにある。ソウル・フラワー・ユニオンのフロントマンによる3年ぶりのソロアルバム。前作『銀河のほとり、路上の花』からの彼の動きは前身ニューエスト・モデルからの全キャリアを含めても最も精力的といえるだろう。本体のユニオンは昨年アルバム『アンダーグラウンド・レイルロード』をリリースし、3か月に1回は東名阪宮ツアーを欠かさない。またソウル・フラワー・モノノケ・サミットでも年始と盆時期のツアーは恒例で長らくデフォルトサイクルとなっていた。しかし2012年以降、その合間を縫って盟友リクオとの「うたのありかツアー」、そしてさらにその合間を縫ってソロ弾き語りツアーを行うという一年中全国行脚の見事な“旅芸人”っぷりを発揮しているのである。

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【レビュー】Tequeolo Caliqueolo『S.O.S』

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Tequeolo Caliqueolo『S.O.S』

Tequeolo Caliqueolo
S.O.S
PRIVATE RECORDS, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

「このバンド名、何て読むの?」彼らとの出会いの多くは、ここから始まるのではないだろうか。しかし、リスナーの頭上に浮かんだ“?マーク”は、彼らの音楽を聴けば、胸躍る“!マーク”へと変わっていくのだ。

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【レビュー】とんねるず全盛期の輝きが詰まっている | 野猿『撤収』

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野猿『撤収』

野猿
撤収
avex trax, 2001年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

京都講座東京特派員(ややこしい)の峯です! 9月27日(日)の〈音楽ライター講座 in 京都〉は音楽歴史街道編“2001年”をテーマとして開催されました。ストロークス、ホワイトストライプス、映画『オー・ブラザー!』O.S.T、レイ・ハラカミ、菊地成孔、宇川直宏……というキーパーソンを軸に講義が進んでいきました。しかし何といってもこの日は講座生としてひょっこり参加していた「日本の電子音楽」の著者・川崎弘二さんに、冒頭から急遽ご登壇いただいたことに尽きるでしょう。電子音楽の歴史からコーネリアス、レディオヘッド、シガーロスまで、そのお話は多岐に渡りました。岡村さんや講座生からの質問にもロジカル・簡潔明解にお答えいただき、本当に有意義な時間&京都講座史上最も岡村さんが手に汗握る回となりました。ご登壇の模様は後日ki-ftに記事としてアップされる予定ですのでお楽しみに!

そして講座生もそれぞれの“2001年作品”をレビューして持ち寄りました。その中から野猿のレビューをお送りいたします。

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【レビュー】新たな居場所を求めて | 花柄ランタン『またねっきり来ん、あの春の日よ。』

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花柄ランタン『またねっきり来ん、あの春の日よ。』

花柄ランタン
またねっきり来ん、あの春の日よ。
自主制作, 2015年
BUY: ライヴ会場など

セーラー服を着た女子高生が神社の鳥居の上に腰かけ町を見下ろしている絵。その町にはもくもくと雲が立ちこめていて、一見ファンタジックな世界に見えるが、よく見るとそれは雲ではなく工場の煙という、どこか二重構造を示唆するようなジャケット写真。そのパッケージを開封すると中にはA4サイズ一枚仕様の歌詞カードが入っており、それを取り出して驚いた。なんと裏面が住民票を模したものになっているのだ。そしてそこには“トワノ森町”と記されている。トワノ森町とはいったいなんなのか? この住民票にはどういう意図があるのだろう?

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【レビュー】ムジカジャポニカでナニワのおてんば娘が放つグッドタイムミュージック達 | 前川サチコとグッドルッキングガイ『ラストステージ』

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前川サチコとグッドルッキングガイ『ラストステージ』

前川サチコとグッドルッキングガイ
ラストステージ
SNEEKER BLUES RECORDS, 2015年
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大阪キタの中心地、梅田と天満の間、扇町公園の隣に静かに位置するライヴハウス・ムジカジャポニカ。カレーが名物なカフェバー形式のこぢんまりとしたハコではあるものの、フォーク・ブルースなどオーガニックなグッドタイムミュージックを鳴らずミュージシャン中心に構成された番組が魅力で、数少なくなった“大阪らしい”場所と言える。店主伊藤せい子はバンド夕凪でも長らく活動しており、毎年9月には服部緑地野外音楽堂でフェス〈RAINBOW HILL〉を開催するなどこの界隈の良心となっている点も大阪らしさの由縁だ。

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【レビュー】ポスト・パンクからディスコ・ファンクへの変化 | ギャング・オブ・フォー『ハード』

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Gang of Four『Hard/Solid Gold』

Gang of Four
Hard/Solid Gold
Wounded Bird Records, 2003年
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デビュー後に発表された『エンターテイメント!』はソリッドなカッティング・ギターとポリティカルな歌詞が話題となり、リーズ大学出身にも関わらずNYパンクバンドと勘違いされることもしばしばだったギャング・オブ・フォー。ダンサブルでパンキッシュなサウンドはザ・ラプチャーやフランツ・フェルディナンドなどから、直接的な影響はないものの、今流行りの国内四つ打ち系若手バンドの源流だったと言い切ってもよいだろう。

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【レビュー】音楽で国を変えようとした男 | フェラ・クティ『ゾンビ』

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フェラ・クティ『ゾンビ』

Fela Kuti
Zombie
Knitting Factory, 1976年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

フェラ・クティと言えばファンクやジャズ、アフリカ音楽などを咀嚼し“アフロビート”という音楽を確立した人物であるが、そのダンサブルなサウンドとは対照的に歌詞は黒人の解放や母国ナイジェリアの政府を非難したものが目立つ。ナイジェリアといえばアフリカ大陸では最大級の石油産出国であるが、上流階級の人間はごく一部あり、国民の大半は貧困に苦しむ状況が古くから続いている。この国を音楽で変えようとフェラは白人に強制的つけられたという理由でミドルネームであったキリスト教の洗礼名を捨て、ナイジェリアにて活動を行っていた。反政府的な姿勢から何度も言われのない罪で逮捕されたが、それでも彼は屈せず、その体験すらも自らの音楽へと変えていった。その集大成となった作品こそ、この『ゾンビ』である。

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【レビュー】シカゴが持つソウルミュージックの歴史を体現した一枚 | Donnie Trumpet & The Social Experiment『Surf』

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あのカニエ・ウエストもフェイバリットに上げ、シカゴ・ヒップホップ・シーンを越えて人気を集めているチャンス・ザ・ラッパーことチャンセラー・ベネット。そんな彼が地元シカゴの仲間と組んだ5人組バンドThe Social Experimentの1stアルバムは、シカゴで受け継がれてきたソウルミュージックの歴史を詰め込んだ作品だ。

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【レビュー】人との縁で歩んだ、ここ2年の航路を辿る作品 | 金 佑龍『ling lom』

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金 佑龍『ling lom』

金 佑龍
ling lom
apple of my eye, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

筆者がスタッフをしていた今年の祝春一番。出番を前にフラフラでお茶を注ぎに来る彼。「出番前はお酒やないんですね」と聞いたら「昨日もライヴで、飲みすぎてまいましてん。」と腰低く、顔色悪く、にっか~と笑う彼。何とも人懐っこく、愛らしく、人との関わりと縁の中で生きているという感じがする。

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【レビュー】クリエイター集団が生んだ今の京都を体現するポップアルバム | 渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』

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渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』

渚のベートーベンズ
フルーツパーラーミュージック
思い出レコード, 2015年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

まるで町屋を改築したコワーキングスペースやシェアハウスに集うクリエイター達のようにそれぞれの特色を希釈も折衷もさせずに同居させているかのようだ。小さい街、少ない人数で入れ替わり立ち替わりにエイジレス、ジャンルレスな無法地帯的なコラボが繰り返されることで、びっくりするような音楽が生まれ続けているのが2010年代に入っての京都の印象である。

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