カテゴリー : Disc Review

【レビュー】音楽で国を変えようとした男 | フェラ・クティ『ゾンビ』

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フェラ・クティ『ゾンビ』

Fela Kuti
Zombie
Knitting Factory, 1976年
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フェラ・クティと言えばファンクやジャズ、アフリカ音楽などを咀嚼し“アフロビート”という音楽を確立した人物であるが、そのダンサブルなサウンドとは対照的に歌詞は黒人の解放や母国ナイジェリアの政府を非難したものが目立つ。ナイジェリアといえばアフリカ大陸では最大級の石油産出国であるが、上流階級の人間はごく一部あり、国民の大半は貧困に苦しむ状況が古くから続いている。この国を音楽で変えようとフェラは白人に強制的つけられたという理由でミドルネームであったキリスト教の洗礼名を捨て、ナイジェリアにて活動を行っていた。反政府的な姿勢から何度も言われのない罪で逮捕されたが、それでも彼は屈せず、その体験すらも自らの音楽へと変えていった。その集大成となった作品こそ、この『ゾンビ』である。

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【レビュー】シカゴが持つソウルミュージックの歴史を体現した一枚 | Donnie Trumpet & The Social Experiment『Surf』

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あのカニエ・ウエストもフェイバリットに上げ、シカゴ・ヒップホップ・シーンを越えて人気を集めているチャンス・ザ・ラッパーことチャンセラー・ベネット。そんな彼が地元シカゴの仲間と組んだ5人組バンドThe Social Experimentの1stアルバムは、シカゴで受け継がれてきたソウルミュージックの歴史を詰め込んだ作品だ。

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【レビュー】人との縁で歩んだ、ここ2年の航路を辿る作品 | 金 佑龍『ling lom』

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金 佑龍『ling lom』

金 佑龍
ling lom
apple of my eye, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

筆者がスタッフをしていた今年の祝春一番。出番を前にフラフラでお茶を注ぎに来る彼。「出番前はお酒やないんですね」と聞いたら「昨日もライヴで、飲みすぎてまいましてん。」と腰低く、顔色悪く、にっか~と笑う彼。何とも人懐っこく、愛らしく、人との関わりと縁の中で生きているという感じがする。

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【レビュー】クリエイター集団が生んだ今の京都を体現するポップアルバム | 渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』

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渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』

渚のベートーベンズ
フルーツパーラーミュージック
思い出レコード, 2015年
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まるで町屋を改築したコワーキングスペースやシェアハウスに集うクリエイター達のようにそれぞれの特色を希釈も折衷もさせずに同居させているかのようだ。小さい街、少ない人数で入れ替わり立ち替わりにエイジレス、ジャンルレスな無法地帯的なコラボが繰り返されることで、びっくりするような音楽が生まれ続けているのが2010年代に入っての京都の印象である。

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【クロスレビュー】ザ・ローリング・ストーンズ『ブラック・アンド・ブルー』

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ザ・ローリング・ストーンズ『ブラック・アンド・ブルー』

THE ROLLING STONES
BLACK AND BLUE
ソニー・ミュージックレコーズ, 1976年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

ki-ftレビュアーが参加している岡村詩野による〈音楽ライター講座in京都〉では、6月14日に田中宗一郎さん(the sign magazineクリエイティブディレクターetc.)をお迎えし、特別講座「田中宗一郎先生の赤ペン講義」を実施致しました。先生から我々に与えられた課題はザ・ローリング・ストーンズ『ブラック・アンド・ブルー』(1976年発表作品)でした。

「この作品を選んだ理由は、音楽的な参照点が明確で、時代的な背景にも影響されてて、リリックも分析対象になり、すでにしっかりと歴史的な位置付けがされているから。これについて書けないなら、何についても書けない、現代のものも書けないよ」とおっしゃる先生。当日は4時間に及ぶ熱血指導で、濃密な講義となりました。その指導を経て完成した二つの記事をアップいたします。

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【レビュー】想像で語る故郷 | シャムキャッツ『TAKE CARE』

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邦楽と漫画は同じサブカルチャーとして常に(時には邦楽と洋楽よりも)近い間柄にあるが、邦楽でいう“東京インディー”が漫画界にもあるのをご存知だろうか。なかでも澤部渡(スカート)や鴨田潤が寄稿する自主制作漫画誌『ユースカ』に関わる漫画家やミュージシャンは、その相思相愛ぶりもあって、ジャンルを超えた一つのカテゴリとして多くのファンを得ている。『ユースカ』常連のひとりで、今作と前作でシャムキャッツのアートワークを手がけた京都出身の漫画家・サヌキナオヤは、昨年11月、同誌周辺の漫画家3人と漫画誌『蓬莱』を創刊した。表紙には足立区荒川沿いのありふれた道路風景が描かれ、「ロードムービー」という題に沿った淡々とした作品が並ぶ。メジャー誌でいえば『聲の形』や『惡の華』もそうだが、震災以降、都市でも田舎でもない“地方都市”を舞台に選び、かつそれを隠さない漫画が増えているように思う。前述2作品はそこが作者の故郷だからで、彼らが自身の青春を堂々と作品に持ち込むことは、今やエゴではないのだ。同様の流れは邦楽の方の“東京インディー”にもあり、大雑把に言えば、シャムキャッツの前作『AFTER HOURS』もそれに括られる作品だった。今作『TAKE CARE』は、その続編ということらしい。2014年春の千葉県浦安市を閉じ込めたタイムカプセルの“続き”。それは決して、単なる一年後の世界ではないはずだ。

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【レビュー】職人気質な神戸っ子に宿るパンへのリスペクト | シンリズム『NEW RHYTHM』

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シンリズム『NEW RHYTHM』

シンリズム
NEW RHYTHM
Ano(t)raks/FAITH MUSIC ENTERTAINMENT INC., 2015年
BUY: Amazon CD&LP, タワーレコード, iTunesで見る

「海があって、人があまりいなくて、パンもすごくおいしい。」

LOSTAGE 五味岳久の奈良からの手紙~LOVE LETTER form NARA~ > 第5回 tofubeats

tofubeatsの神戸感。あまりにも的確な一言である。特筆すべきは最後の一文! フランスパンを戦後の日本に広めたドンクやビゴの店は神戸から生まれ、今では修行を積んだブーランジェ達が至るところでお店を開いている。レコルト、ビアンヴニュ、レ・ミュウ……。トップクラスの実力と人気を誇る上記のベーカリーも、兵庫県内にてDNAを引き継いでいる。

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【レビュー】ヤバイTシャツ屋さん「そこまでヤバくない」

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ヤバイTシャツ屋さん「そこまでヤバくない」

ヤバイTシャツ屋さん
そこまでヤバくない
FUZZ MUSIC RECORDS, 2015年
BUY: Amazon CD, 三国ヶ丘FUZZ店頭, ライヴ会場物販

キタでもミナミでもない、大阪エリアの南に位置する街、堺が最近騒がしい。

その中心にあるのは、三国ヶ丘FUZZというライヴハウスだ。快進撃が止まらないKANA-BOONのホームであり、南大阪エリアの数少ないライヴハウスということで、この地域の登竜門的な役割を担い、多くの若手が集うことで横の繋がりも生まれ、シーンの形成に一役かっているのだろう。その三国ヶ丘FUZZから新たな刺客が現れた。その名も、ヤバイTシャツ屋さん、通称ヤバTだ。メンバーのこやま(Vo, G)は「寿司くん」名義で、岡崎体育やみるきーうぇい、ハウリングアンプリファーといった同世代アーティストのPVを手掛けており、この寿司くんを通したバンドの繋がりが堺発信のシーンを更に面白くしていキッカケになる……日もそう遠くないだろう。そして、その渦中ど真ん中のヤバTが、2015年4月に待望の初音源『そこまでヤバくない』をリリース。タイトルに反して、この作品は憎たらしいほどかっこよくて、十分ヤバイ作品だ。

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【レビュー】出せば売れる!“ライヴ・アルバム”というトレンドを作った怪作 | ピーター・フランプトン『フランプトン・カムズ・アライヴ!』

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ピーター・フランプトン『フランプトン・カムズ・アライヴ!』

ピーター・フランプトン
フランプトン・カムズ・アライヴ!
A&M records, 1976年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

美しい顔立ちにウェーブがかったロングヘア。スマートな出で立ちで女性の心をつかみ、圧倒的なアイドル・ミュージシャンとして地位を確立。さらには高校時代にデビッド・ボウイとギターを弾き、スティーヴ・マリオットとハンブル・パイを結成し、その後はジョージ・ハリスンの作品にギタリストとして参加。世間からも音楽家からも溺愛された中、全米ツアーを敢行し、選りすぐりのテイクを収めた2枚組のライヴ・アルバム『フランプトン・カムズ・アライヴ!』は、1976年を代表するどころか、”ライヴを録音して販売すれば売れる”というトレンドを作った怪物盤だ。

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【レビュー】永遠に踊るための準備はいいかい? | 夜の本気ダンス「By My Side」

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関西を中心に定期開催されているLIVE&DJイベントで、〈見放題〉〈MINAMI WHEEL〉と共に近年の関西ロックキッズ達の登竜門的存在となっている「onion night!」で、2013年に初めて見た時、なんじゃこのバンド名は? と思ったが、そこから早2年。全国各地のロックフェスに引っ張りだことなった今、もはや“ザ・ベスト・オブ名は体を表す”としか思えなくなった夜ダン。神戸から出てきたキュウソネコカミ、大阪は堺から出てきたKANA-BOONに続く、京都からの“第三の男たち”として関西ギターロックシーンを牽引する存在となっている。

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【レビュー】odd eyes『A love supreme for our brilliant town』

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odd eyes『A love supreme for our brilliant town』

odd eyes
A love supreme for our brilliant town
Summer Of Fan, 2015年
BUY: Summer Of Fan 取扱い店一覧

大人げない大人たち。odd eyesはそんな集団だ。世代を代弁し、時には毒を吐くことが音楽の役目だが、彼らの狙いは多分そこにはない。競争と力が全ての社会と対峙し、自己を確立するためにバンドをやっているのではないか。自由と責任の中で生きていくためには、それが必要なのだ。大人にコントロールされるのは嫌だ。その象徴とも言える場所が、METROで月1で開催している、京都拠点のバンドマンが中心となり、各地方から多種多様なゲストを招く〈感染ライブ〉であり、このコミュニティ周辺からodd eyesは支持を拡大している。

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【レビュー】オシリペンペンズ『オールバック学園Z』

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オシリペンペンズ『オールバック学園Z』

オシリペンペンズ
オールバック学園Z
こんがりおんがく, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunesで見る

「まだパンクスやらせてくれ」と、石井モタコはステージでそう言った。3月6日、南堀江socore factoryで行われたオシリペンペンズのレコ発ライヴでのことだ。何気ない一言かも知れないが妙に引っかかった。“パンクス(punks)”とはなんだろうか? 社会に反抗する精神を持つ者、ステージ上で過激なパフォーマンスを見せる者、セックスとドラッグにまみれた生活を送る者のことだろうか? パンクスの定義は十人十色、人それぞれだがオシリペンペンズの最新アルバムを聞いた上で私は「理屈抜きにその時代に流れる空気感や雰囲気を切り取ることが出来る者」を挙げたい。

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【レビュー】FEST VAINQUEUR「ペルソナ傷女」

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FEST VAINQUEUR「ペルソナ傷女」

FEST VAINQUEUR
ペルソナ傷女
PLUG RECORDS west, 2015年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

ユニークなバンドである。関西発のヴィジュアル系(以下V系)バンドFEST VAINQUEUR(以下FV)は、見目麗しく、妖しい雰囲気もあって、クールで、という従来の王道V系スタイルに、おもしろさと親しみやすさをくっつけたようなバンドだ。

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【レビュー】DABIDE’s fire『おはよう、チェッコリさん。』

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DABIDE's fire『おはよう、チェッコリさん。』

DABIDE’s fire
おはよう、チェッコリさん。
YASAI RECORDS, 2015年
BUY: DABIDE’s fire CD

気の抜けるようなタイトルだがその内容は至って真面目。バンド史上初の流通盤『おはよう、チェッコリさん。』は「DABIDE’s fireとは?」という問に対して、現時点で考えうる答えを全て収録した、そんな1枚だ。

彼らが現メンバーでの活動を開始したのは2013年。大阪を拠点とし、年に一度のペースで自主企画を開催。そこにはthe unknown forecastやAge Factoryといった同世代の盟友バンドが名を連ねる。コンスタントな活動の一方で、大型サーキットフェス〈見放題〉へ2年連続で出演したり、関西を代表するライヴ&DJイベント〈onion night!〉で彼らの曲が流れたりと、常に関西インディー・ロック・シーンの最前線に彼らの名が見えてくる。

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【レビュー】neco眠る『BOY』

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neco眠る『BOY』

neco眠る
BOY
こんがりおんがく, 2014年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

2012年の活動再開以後、私は関西の様々なイベントでneco眠るを目撃した。活動休止前は「盆踊り系」と形容されていたが、初めて味園ユニバースで彼らを観た時には、本作品の1曲目でもあり、こんがりおんがくとカクバリズムのWネームで12インチでも発表されている「お茶」がneco眠るのリード・トラックとなっていた。キャッチーで踊れる事に間違いはないのだが、形容されているサウンドと若干のズレが生じているのを感じた。その予感通り、本作で彼らは6年のブランクを経て、新たなステージへ華麗に着地した。

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