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数年程前まで、V系シーンは、とても閉じた世界だった。一部のバンドがロックフェスに出たり、V系以外のシーンと交流のあるバンドもいるが、それでもやはり、90年代の黄金期が終わってからのV系には、閉塞感があった。
とはいえ、近いシーンはいくつかあって、近い音を鳴らすバンドもある。でも、それを口に出すのはためらわれる、という意識がバンギャの間ではなんとなくあった。
というのも、V系にはこれといった音楽の定義がない。それ故に、ラウドっぽかったり、歌謡曲っぽかったり、メタルコアっぽかったりはするけど、その分野を極めない、“なんちゃって”だと軽んじられる節がある。だから、多くのバンギャは、ひっそりとV系を愛でる。敢えて厳しい言い方をするならば、国内のロックシーンで、V系は市民権がないのだ。


しかし、その状況は、2010年代後半から変わりつつある。

見た目は確かにV系だが、曲は本格的なメタルコアだったりラウドロックに接近していたり、あるいは、J-POPでも渡り歩けるようなストレートな歌ものだったり、正直、「わざわざV系を選ばなくても」と思ってしまうバンドがぐんと増えた。でも、だからこそ、彼らからは、並々ならぬ、V系バンドでいることへのこだわりを感じる。

私はこれを、“V系はカッコイイ”という価値観の再熱だと捉えている。そして、そのきっかけとなったのが、LUNA SEAが2015年と2018年に開催した、LUNATIC FEST.(以下ルナフェス)と2016年にYOSHIKIが音頭をとった、VISUAL JAPAN SUMMIT(以下VJS)だと考える。

まず、ルナフェスには、9mm Parabellum Bulletやthe telephones、THE ORAL CIGARETTES、[Alexandros] 、back number、BRAHMANら、V系ではないバンドが多数出演した。しかも、ただ「LUNA SEAに呼ばれたから」出たのではなく、ヴィジュアルロックに対しても、敬意を払っていたのだ。THE ORAL CIGARETTESの山中拓也にいたっては、「実はこういう音楽がルーツのひとつ」というような発言もしていたほどだ。
そのうえで、ルナフェスは、X JAPAN、BUCK-TICK、GLAY、DIR EN GREYというV系の神髄バンドたちを、最も重要な時間に配置したタイムテーブルが組まれていた。これは、V系を世に広めたバンドであるLUNA SEAの、責任と矜持を感じさせるものだった。

そして、第1回目のルナフェスに続いて、翌年に開催されたVJSは、新旧のV系バンドを集めまくった、V系のお祭りだった。大物から若手までが同じフェスに出る。これはいわば、V系総大将YOSHIKIによる、90年代のV系黄金期と今は地続きなのだというメッセージであり、結果、世代による分断が起きなかった。

この二大フェスをポイントに、シーンの雰囲気が変わったような体感がある。

前置きが長くなったが、連載Vol.2では、この、ルナフェスとVJSのバトンを受け取り、他のシーンへ接近しつつも、“V系こそカッコイイ”という強い意志を感じさせるバンドを紹介したい。


ZON

2015年結成の4人組のラウドロックバンド。私が観た、2019年のロクサミでは、ZONがベストパフォーマンスだった。曲によっては、スカテイストの軽快なツーステップを取り入れており、UVERworldやSiM、MY FIRST STORYらのバンドと並べても違和感がない。どんどんV系の外に出て活躍してほしいと思う。ライブキッズのようなカジュアルな衣装もポイント。

空想ノベル

2018年に始動した5人組バンド。ZONと同じレーベル、Planet CHILD Musicの後輩バンドにあたる。派手なシンセと、伸びのある歌声が耳を惹く。

L.A bate

クラブコアを掲げているバンド。オートチューンのかかったボーカルとダンサブルな打ち込みの音色は、Fear, and Loathing in Las Vegas、オラオラ感は、ROTTENGRAFFTYを彷彿させる。

The Guzmania

2019年に活動を開始した4人組。DAIGOがボーカルのバンド、BREAKERZをよりラウドにして、そこにダンスミュージックが加わったような印象。覚えやすいメロディラインで、幅広く受け入れられそう。

nurié

amazarashiのように、言葉の力で人の闇をあぶりだすような曲。これほど、詩に重きを置くのは、V系としては珍しいスタイル。またサウンドも、鍵盤が主体だったり、カッティングギターを駆使したりと、R&Bやブラックミュージックを感じさせ、これまでのV系ではあまりないものだ。2019年始動の4人組バンド。

マチルダ

軽やかなダンスミュージックとは裏腹に、「死にたい」「殺したい」のどん底の歌詞。まったく救われないこの感じに、V系らしさを感じる。2018年から活動している4人組バンド。

THE NOSTRADAMNZ

3人組のパンクロックバンドで、珍しく、ベースボーカル。音もファッションも、V系に入れていいのか戸惑うほど、パンク。こういうバンドがV系にいるのがおもしろい。

RAKUGAKI

パンクロックとハードコアに、ポップさと毒気を掛け合わせた、2019年始動の4人組。曲によってはアニィ(Vo)はギター(しかもV系ではほとんど見ないリッケンバッカー)も弾く。

the LAHNGS

ギガマウスのギタリスト、ユッキーのソロプロジェクト。特殊なリバーブのかかったボーカルに、シューゲイザーっぽい音作りのギターとベースだが、決して音圧で攻めるわけではないサウンドと、早すぎないテンポ感も、現行のV系シーンでは異色。陰鬱とした雰囲気はバウハウスやスージー・アンド・ザ・バンシーズなどを彷彿とさせる。

サイノ筐ニワ~31-8520~

2018年結成。2020年3月にバンド名を<31-8520>から<サイノ筐ニワ~31-8520~>に改名した。シャッフルビートや、モータウンビートを取り入れていたり、ダンスミュージックっぽいエレクトロなアプローチの曲があったりと、アイディアが豊富。改名後の躍進に期待。

The Benjamin

ex.花少年バディーズのメンバーにより2015年に始動したバンド。V系にはロックンロールを得意とするバンドはほとんどいないが、彼らは、前のバンドも含めると、10年以上も、V系シーンでご機嫌なロックンロールを鳴らすことを貫いている。彼らのような存在が、このシーンの屋台骨なんだろうと思う。

 

◆小川あかね

セーラームーン&SPEED世代。ヴィジュアル系村の住人。ガンダムはシャア派。モビルスーツはシナンジュ。好きなタイプは空条承太郎。声優沼に腰くらいまで浸かってます。

akane.o1218*gmail.com  (*=@)

Twitter:@akam00n


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