神聖さと高貴さへの執念~OL兼業ライターのひとりロクサミ(仮)Vol.7

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本稿は、2020年のKANSAI ROCK SUMMIT(通称ロクサミ)が新型コロナウイルスの影響で中止になったことを受け、出演予定だった81組のヴィジュアル系(以下V系)バンドを紹介しようと企画した短期集中連載です。

ヴィジュアル系(以下V系)には、“仰々しい”という面がある。衣装やメイクはもちろんのこと、楽曲面において特にそれを感じるのが、メタルやハードロックのヘヴィネスに、ストリングスや聖歌隊のコーラスのような音色を重ね、空間に奥行を持たせるアレンジだ。このようなシンフォニックな音像には、まるで教会音楽のような神聖さと高貴さがある。
ロックとシンフォニーを融合させる手法は、V系ではすでに90年代から見られ、V系の総大将YOSHIKI率いるX JAPANは、派手な見た目のバンドが、メタルにクラシックを掛け合わせる意外性と、それを演りきる技量の高さを大きな武器としていたし、GACKTが在籍していたMALICE MIZERは、耽美なストリングスやチェンバロの音色を楽曲に用い、ヴィジュアル面でも徹底的に優美であることを貫いていた。
オーケストラであれば、何十人もの演奏によって生み出される荘厳さを、どうにかこうにか、たった4〜5人編成のロックバンドでやり切ろうとするその心意気は、V系バンドの大きな魅力だ。
時代を経て、V系は、メタルコアをとりこんだり、ラウドやエレクトロに寄ったり、少しずつ変化を遂げてはいるものの、現在でも、高貴さと神聖さは、V系においてとても重要な価値観である。
というわけで、今回は、その価値観を脈々と受け継ぐバンドたちを紹介したい。

Rides In ReVellion

2015年に結成。2020年11月のワンマンライブをもって飴(Dr)が脱退し、現在は4人の新体制となった。彼らの楽曲は、構成がとてもドラマチック。特に、ベースソロからツインのギターソロへ、そして、いったんスローダウンして、ラストのサビへ繋がる流れはX JAPANのRusty NailやDAHLIAなどの名だたる名曲たちを彷彿とさせる。また、シャウトのパートからは、DIR EN GREYやガゼットなど、V系にメタルコアを取り入れたバンドの血もあり、V系の先人たちへの敬意を確かに感じさせる1曲。

Astaroth

2020年1月に始動した5人組。『負感情から生まれた悪魔の居場所』というコンセプトに相応しく、コーラスのような音像のシンセには薄気味悪さがあるし、サビでは、ダンダンダンダンと恐怖が迫りくるような四拍子のドラムがなんとも物々しい。とはいえ、そこに流れるメロディは、もの悲しく美しく、心地がいい。まるで、まじないにかかるかのよう。2021年1月15日をもって、無期限の活動休止が発表されている。

AIOLIN

2017年2月に始動した4人組。このバンドの特徴は、なんといっても、ヴォーカル、ギター、ヴァイオリン、ピアノをこなす、ヒカリトの存在だろう。 イントロからいきなりバイオリンと豪快なバンドサウンドが弾け飛ぶように耳に飛び込む。その勢いからは、出しても出しても満足できない表現欲求や才能が、次から次へと溢れ出しているよう。デスボイスも使うし、エモーショナルなギターソロもあってとにかく盛りだくさん。それでも、1曲聴き終えると、サビのメロディが強く耳に残るのは、天晴れ。

EviLA

2018年に始動した4人組。言葉に強いこだわりがあるのではないだろうか。ヘヴィなサウンドの中でも、歌詞をしっかり聞き取ることができる。「神」や「善悪」というワードが聞こえてくるが、それが、ストリングスっぽい音色や空間を埋めるパットの音がリンクしている。演奏面では、屋台骨を支える迫力があるドラム際立つ。Bメロの手数の多いトリッキーなフレーズがいい。

SARIGIA

2017年結成の現在4人組のバンド。一聴すると、デジタルなシンセの音とヘヴィなリフに耳を惹かれるが、演奏はとてもソリッドで、メロディックな歌が際立つ。そして、その後ろで控えめに鳴っているパットの音色が、しっかりと高貴さを醸し出している。

自我-ジガ-

2020年1月に始動した5人組だが、12月5日のワンマンライブをもって解散。琴や三味線のような音色を取り入れ、和のテイストをミックスしているのが耳をひく。歪んだギターがべったりと空間を埋め尽くすなか、スパイスとなっているのはベースだろう。ルート弾きではなく、メロディックなフレーズを奏でているが、これが非常に不穏で、ホラーな印象を与える。

Scarlet Valse

2011年始動の5人組。まず目を引くのが、MALICE MIZERやVersaillesを彷彿とさせる華美な衣装とメイクだ。演奏も、ツーバスで迫力のあるドラムと、メロディアスなギターソロ、聖歌隊のようなコーラスとても華やか。そして、X JAPANのToshIを彷彿させる伸びやかな高音が光る歌とそのメロディは大変ポップで、歌で間口をグッと開いている印象を受ける。

NETH PRIERE CAIN

2018年結成の4人組。高音でビブラートが光る歌声や、弦楽器隊のフレーズの多彩さ、メロディのキャッチーさは、ナイトメアを思い起こさせる。サビの主旋律はシンコペーションで展開し、裏拍にアクセントがおかれ、オーディエンスの乗せ方にも目配せした1曲。

BlacK TeaR

2017年始動。現在4人体制で活動するバンド。バンド名と曲名からは、“涙”がキーワードのひとつであることが分かる。歪んだギターの音やシャウトはもがきや苦しみを、澄んだシンセの音色は、まさに透明な涙を表しているようで、その明暗のコントラストがおもしろい。

ラミヤ

2017年から活動する4人組だが、2020年10月をもって終幕。この曲は「walpurgis」というの曲名のとおり、魔女や黒魔術を彷彿とさせる1曲。冒頭から流れるチェンバロの音色は、まさに教会を思わせるが、その神聖な空気を、歪んだギターの音で黒く塗りつぶすよう。歌の音階も怪しい響き。

Marvelous Cruelty

2020年9月9日にファーストシングルをリリースした4人組。ピアノの旋律からはじまるナンバーで、重低音で攻めるのではない、甘いメロディからは、JAPANやBauhausら海外のポストパンクやニューウェーブの影響を受けていた90年代のV系バンドの影を確かに感じさせる。

 

◆小川あかね
セーラームーン&SPEED世代。ヴィジュアル系村の住人。ガンダムはシャア派。モビルスーツはシナンジュ。好きなタイプは空条承太郎。声優沼に腰くらいまで浸かってます。
akane.o1218*gmail.com (*=@)
Twitter:@akam00n


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