峯大貴、フォークのよもやま 第一回~札幌のバンド、BENBE~
- By: 峯 大貴
- カテゴリー: Column
- Tags: BENBE, ROTH BART BARON, T字路s, ザ・ポーグス, 夜のストレンジャーズ, 踊ろうマチルダ

ここは東京杉並区、よしだたくろう上京のち最初に不時着した街、フォークのメッカこと高円寺より。大阪出身の音楽ライター峯大貴による連載企画の第一回をお送りしてまいります。プリミティブなサウンドの質感はもちろん、音楽の鳴る場所では人と人とが繋がる媒介になるようなフォーク・ミュージックの粋なあり方がものすごく好きで。私のライターとしてのスタンスも、現場で出会った音楽や人との繋がりを肌で感じ、それを確かな絆として残すように記事を書くという姿勢に今年から本格的に変わっていきました。そんなスタンスもフォーク的と呼べるかもしれません。本連載はそんな日々の中で出会った今語るべきフォークについて気ままに綴っていく場所にします。

札幌にBENBEというフォーク・ロック・バンドがいまして。今年の9月10日に1stアルバム『BENBE』をリリースしました。古川直久(Vo / Gt)、北山雅之(Ba)、川内陸(Gt)、貞廣萌夏(ヴァイオリン ※現在は脱退)で録音された全9曲。今はだつ(アコーディオン)が加わり再び4人でライヴ活動を行っています。だだっ広い夜空に向けて白濁した息を吐きながら歌がこだましていく、そんな風景が浮かんでくるホーボー・ソング集です。フォーク、ブルースに加えてスコティッシュやアイリッシュ・トラッドの要素を感じさせるサウンドにはザ・ポーグスや踊ろうマチルダ、T字路sなんかを思わせますし、酩酊する歌の魂のゆくえを追いながら深い森に迷い込んだような広大な世界には、度々イベントで共演しているROTH BART BARONとも確かな共鳴を感じます。
また古川は札幌でバーのマスターとしてカウンターに立っており、BENBEの音楽にも豊穣なウィスキー樽の匂いが立ち込めるような酒場の情景を感じさせます。そのバーの店名を冠した“Raymond”からは、雄大なバイオリンとスライドギターの音色、そして酒と仲間を求めて同胞たちが集まる場を切り盛りする古川の温かい目線からなる歌がやけに優しく響いてくるのです。そして最後の“WHISKEY (NANCY WHISKEY)”はスコットランド民謡のアレンジ・バージョン。日本においても踊ろうマチルダや夜のストレンジャーズが取り上げているスタンダード・ナンバーですが、仲間を呼んで合いの手や野次が入っていくどんちゃん騒ぎの様相は“日本全国酒飲み音頭”を取り込んだドリンキング・ミュージックと化しています。
当初本作の販売はライヴ会場や道内の各種店舗のみでしたが10月18日よりディスクユニオンで取り扱い開始、オンラインでも購入できる状態です。私自身まだ彼らのライヴは見たことがなく、現状道外でのライヴは2016年に恵比寿リキッドルームで行われたROTH BART BARONの企画イベント以来となっており、切望しております。いやでも、札幌に根を下ろして活動している彼らですからBENBEのライヴとRaymondに足を運ぶために札幌に行くのが最良でしょうな。あぁウィスキー飲みたくなっちった、ペニーレーン24でバーボンを。(結局最後も拓郎かい!)