

今熱い“関西で”活動しているバンドや音楽シーンを紹介している本サイト、初のミュージシャンによる連載記事が始まります。私が連載をお願いしたのはオルタナティブ・ギター・ポップバンド、花泥棒のフロントマン稲本裕太。ついこの前までは京都で活動していたが今年単身上京、その真意については今年8月に本サイトでたっぷり語ってもらいました。
京都に思いを残しながら、先月にはボロフェスタのスタッフとして中枢を担いながら、未だにライブでは「京都から来ました花泥棒です」と言いながら、それでも東京で一旗あげてやろうと意気込む男、稲本裕太。そんな彼に、インタビューに引き続いて自ら奮闘記を綴ってもらおうと依頼しました。“今日から俺東京の人になる のこのこときちまったけど”(by 長渕剛)みたいな泥臭いものでも、“陽はまた昇る この東京砂漠”(by 内山田洋とクール・ファイブ)のような哀愁漂うようなものでもございません。愛らしく飄々と東京都(ヒガシキョウト)の地をサーフ・ライドしようとしている彼の姿をみなさん一緒に追いましょう。(峯 大貴)
1. Kyoto to anywhere.
きっかけとは不思議なもので連載を持つことになった。「京都で活動していた花泥棒というバンドのフロントマンが東京に引っ越してライク・ア・ローリングストーンするさま」を書いてほしいとのこと。もちろん東京での暮らしぶり以外のことも書いていくことになるかと思う。なお、花泥棒は現在フロントマンの筆者・稲本しかメンバーがいない状態。全てのパートのメンバーを募集中なので、やりたいこと・バックグラウンドが近い人はちょいっと気軽にメールしてほしい(末尾プロフィール参照)。
生まれは奈良、大学生からつい今年の6月の終わりまでは京都とずっと関西で暮らしていた筆者にとって、東京での暮らしはなかなか新鮮だ。本格的にバンドをはじめたのも京都なので、京都での生活の中で音楽を作ることが自分のスタンダードとなっているようだ。
東京へ来てまず思ったのが、窮屈な街だなあということ。揶揄ではなく単純にスペース的な意味でだ。敷地を確保できている大きな施設以外はどこも基本的には狭い。バンドの練習をするスタジオも、狭い敷地の中で部屋数を確保するためにそうせざるをえないのだろうが、おれんちのほうが広いぞサイズだったり、くの字型に奥まっていてドラマーから他のメンバーの姿が見えないなんて部屋があったり、不便だなあと思うこともしばしばである。
京都は自転車の町だ。道は割と広いし、老若男女問わず自転車を移動ツールとする人が多くいた。そう比べると東京には自転車移動の人が少ないように思う。というよりも、圧倒的にみんな電車移動だ。クロスバイクで移動するような人もいるにはいるのだが、自転車が走るようなスペースは道路の脇ぐらいだし、そもそも自転車を停める場所が少ない。ましてや原付なんて! 家を探すときに驚いたのだけど、自転車置き場がない物件もざらにあるようだ。しかし京都と比べると不便というだけで、もちろん自転車移動が不可能なわけではない。なぜ移動だけで一日何百円も電車代がかかるのか! と思ってしまう貧乏性の筆者は未だに自転車移動だ。みんなが自転車に乗っている景色=人が生活していることの象徴、みたいな部分が自分の中にあったので、電車移動の方がよりみんなの生活に溶け込んでいることに関しては少しさみしく思う。
よくないことばかりのように書いてしまったがもちろん好きなところもたくさんある。毎日どこかで楽しいライヴがある、来日するバンドが絶対来る、おいしいお店がたくさんある、レコ屋が多い、買い物が楽しい、映画見る! 文化的な面ではやはり京都よりも先進的だ(バンドの盛り上がりに関しては京都も対等だけど)。なにかしらの表現をする人には向いている街だと思う。きっかけも多い。ただ、流れが早い! 置いてかれないようにしないと。
よく言われる“東京の人は冷たい”というのは今のところはとりたてて感じていない。むしろ京都のおっさんおばさんのほうがタチが悪い。
今はまだ京都が恋しいことも多いけど、きっとじきに東京のことも好きになっていくかな。なんやかんやで今でも割と楽しんでいるんだけどね。とりあえずこれから極寒の京都の冬を過ごさないですむことには心底安心している。
♪Listening Now
Luna:『Bewitched』(1994)
(夜に書くことが多いので夜っぽいアルバムばかりになりそう!)

daydream ep
自主制作, 2014年
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