

今年関西地方では春一番が吹かなかったらしい。そういえばニュースやってなかったなと思いながら早めの桜の開花と、ぶり返す寒さ、いつも違った春の匂いを感じている。しかし吹き付ける“春ですよ”の合図があろうがなかろうが、大阪では毎年ゴールデンウィークになれば風物詩的に〈春一番〉を体いっぱいに味わうことが出来る。祝春一番コンサート、まだ日本に大規模なロックコンサートなど数少なかった1971年の初回開催以来、44年に渡るシリーズイベントである。
今年も服部緑地野外音楽堂で5月3日(日・祝)から6日(水・休)の4日間開催が決まった。現在発表されている主な出演者は中川イサト、中川五郎、大塚まさじ、友部正人ら70年代からイベントを支えるベテランから、金佑龍と横浜方面・小野一穂・リーテソンとPiratesCanoeらその子世代の歌い手たちまで。桜川唯丸一座(江州音頭)・山中一平トリオ(河内音頭)の音頭、押尾コータロー・曽我部恵一・ハンバート ハンバートら全国的な人気者、漫談のナオユキや、ちちんぷいぷいでもお馴染みのヤマヒロ(エルキュール上野アフターアワーズSHOW)まで正に“端から端まで”の出演者を揃えている。全ての演者を楽しんでほしいという思いからタイムテーブルは発表せず、出番外の飛び入りゲスト出演やコラボが多いのも特徴だ。
初回からプロデューサーを務める福岡風太も67歳。これまで春一番を彩った演者たちの訃報も聴こえ、「いつまでも あると思うな 春一番」「今年はクヨウのコンサート」と言いながらも公式ウェブサイトのトップに掲げられている風太氏のメッセージは力強い。
多くの仲間達が逝ってしまいました。死にぞこないのアーチスト達が孫みたいな子供達にこそホンモノの音楽を見せつけます。
ごあいさつ – 祝春一番2015
昨年は開催直前の体調不良でしばらく休止していた遠藤ミチロウも、昨年11月に緊急入院した木村充揮も堂々と名を連ねている。きっとホンモノを見せつけてくれるだろう。
食べ物・お酒持ち込みOK。ピクニック気分で子供がシャボン玉をしているのもいい風景、昼間っからヨッパライがふらふらしているのもいい風景。昨年はステージ上に櫓を建設、出番が終わった演者が上って焼酎を飲み始めてからは居酒屋スペースに変容した。下では演奏、上では宴会、異様な光景を観客も楽しんでいる。また櫓のふもとにこっそり置かれていた自転車は看板演者の一人であった故・高田渡のものだったそう。この演者のステージだけではなく春一番で起こること全てまとめて一つの作品なのである。
また何といっても今年は記念すべき30回目の開催だ。演者としては風太氏と共に長年取り仕切っていたあべのぼる(2010年死去)が初期のマネージャーを務めていた山下洋輔が、あべの追悼の意味も込められた2011年度以来3年ぶりの出演。また今年は高田渡の10周忌に際して10数年ぶり、ソロ名義としては初めての息子・高田漣の出演が決まっている。その他会場・ステージ・出演順・ゲストなどなど……今年ならではのどんな仕掛けが飛び出すか注目である。
チケットは各種プレイガイド他、関西のライヴハウス・バー・居酒屋など通称「関西不良水商売店」でも発売中。その他詳細はHPにて。

コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜
キングレコード, 2015年
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