【関西ヴィジュアル系シーンを読む】第1回 FEST VAINQUEUR

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FEST VAINQUEUR「GLORIA~栄光のキズナ~」

FEST VAINQUEUR
GLORIA~栄光のキズナ~
PLUG RECORDS west, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, 楽天ブックス

このたび、関西のヴィジュアル系(以下V系)シーンについてのコラムを連載することになりました小川あかねと申します。これまでも、当サイトki-ftにて、関西のV系シーンを考察するコラムはいくつか執筆しましたが、今月からは連載として、毎月、関西のV系バンドやシーンにまつわる事柄を取り上げたいと考えています。

過去の記事

本題に入る前に、今回ki-ftでこの連載をはじめようと思った理由について、少し述べさせてください。これには、大きな理由が2つあります。まずひとつめは、単純に今、関西のV系シーンが熱いという事実を伝えたいこと。そして、もうひとつは、V系のことをV系ファンにだけでなく、より開かれた場所で紹介したいと思ったからです。どういうことかと言いますと、V系というのは、音楽的にはとても奥行きがあって、いろんなジャンルの音楽と接点があり、海外でも人気があるにも関わらず、V系シーンになると、他のシーンとの関わりがほとんどない、とても閉じた文化になっていると感じます。もちろん、その良さもあるのでしょうが、私は、少し息苦しさを感じています。

個人的な話になりますが、私は、音楽ライター講座京都校に通いはじめて4年が経ちました。講座に集まる人たちは、年齢も職業もいろいろですし、音楽の嗜好も、それはそれはさまざまです。そんな、バラバラな趣味の集まりですから、講座での交流は、これまで全く関わりを持たなかった分野の音楽との交流でもありました。そういう環境に身を置いたことで、私は、自分がいかに狭い世界で生きてきたのかを知りました。更には、V系以外の音楽に触れることで、別の角度から、愛着のあるV系を見ることができ、新たな発見をしたり、新鮮な気持ちを味わうこともできました。

当サイトki-ftは、音楽ライター講座の受講生が主となり記事を書いています。先ほど述べたように、講座には、さまざまな音楽の趣味を持つ者が参加しているので、関西にもいろんな音楽家がいるということを知れるサイトになっています。そんなki-ftで、関西V系の連載をすることで、V系とはあまり関わりのない方の目に留めてもらったり、普段はV系にどっぷりな方が、ki-ftにアクセスすることで、別の音楽、別のコミュニティ、別の音楽シーンに触れるきっかけになれれば幸いです。また、連載でもできるだけ、関西V系シーンを、V系以外の音楽とも関連付けて紹介できるよう努めたいと考えています。

それでは本題に移ります。

現在の関西のV系シーンというのは、決して急に発展したわけではなく、この地に脈々と続く音楽文化の延長にあります。(詳しくは【コラム】2016年 関西のヴィジュアル系シーンを紐解くをご覧いただければ幸いです)

LOUDNESSやEARTHSHAKER、44MAGNUMなどのジャパニーズハードロック勢や、そこにプログレ色を加えたDEAD END、成田忍らニューウェーヴ勢などの影響を経て、L’Arc〜en〜CielやLuis-Mary(西川貴教がかつて所属したバンド)が登場したのが、この関西の地ですが、本格的に関西にV系の文化を根付かせたのは、KISAKIという人物の存在が大きいでしょう。自身もベーシストとしてバンド活動をしながら、彼が2003年に設立したV系インディーズレーベルUNDER CODE PRODUCTIONは、関西だけでなく、日本のV系シーンの中でも“地下線”と呼ばれる一大勢力でしたし、何より、関西を拠点としながらも、全国区で認知されるような活動ができると証明されたことは、その後の若手バンドにとっても大きな希望となったでしょう。惜しくもUNDER CODEは2013年に解体しましたが、関西では現在も多くのバンドが、大阪を拠点に精力的に活動しています。また、京都の老舗V系レーベルCROW MUSICが主宰する〈KANSAI ROCK SUMMIT〉など、V系に特化した大型イベントも目立ち、UNDER CODE帝国無き後も、その熱が途絶えることなく、燃え続けているのが、現在の関西V系シーンです。

現在の関西V系シーンを牽引する旗手こそがFEST VAINQUEUR(フェストヴァンクール)

さて、そんな現在の関西V系シーンの中でも、その存在感が抜きんでているのが、FEST VAINQUEUR(フェストヴァンクール)です。2010年に活動を開始したHAL(Vo)、GAKU(G)、I’LL(G)、HIRO(B)から成る4人組バンドで(※4月28日にドラムKAZIの脱退が発表されました)、彼らの活動で最も特徴的なのが、徹底した大阪レペゼンの姿勢です。これまでリリースされた作品には、関西地区限定で購入できる“なにわ盤”が販売されていたり、「NANIWA SAMBA」や「NANIWAリスペクト〜Yah man! 俺たちラガマフィン〜」など“NANIWA”を冠した曲も発表していますし、2015年からは8月に大阪で〈FEST FES〉という、自分たち主宰のフェスを開催しています。他にも、関西拠点のV系バンドを集めて、NANIWA V系連合軍を発足させ、コンピレーション・アルバムをリリースするなど、まさに、現在の関西V系シーンを牽引する旗手こそがFEST VAINQUEURです。

特に、ここ数年の彼らの活躍ぶりは、目を見張るものがあります。ライヴの動員も、関西ではBIG CATや梅田クラブクアトロでワンマン公演ができるほどの集客がありますし、8thシングル「GLORIA~栄光のキズナ~」は、オリコンウィークリーチャート8位を獲得するなど、関西のV系シーンだけでなく、日本のV系シーンにおいても重要なバンドだと言えるでしょう。

音楽的な特徴としては、まず、演奏技術が高いです。その腕の良さは、SIAM SHADEを彷彿させるほど。音楽性は、ハードロックやメタルが下地となっていますが、サンバをやってみたり、レゲエを取り入れたり、リスナーの想像の斜め上をいく発想の自由さも彼らの強みです。

FEST VAINQUEUR「ペルソナ傷女」

FEST VAINQUEUR
ペルソナ傷女
PLUG RECORDS west, 2015年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, 楽天ブックス

そのような彼らの活動姿勢について、以前、7thシングル「ペルソナ傷女」のレビュー(【レビュー】FEST VAINQUEUR「ペルソナ傷女」)を執筆した際に、❝自分たちがやりたいと思ったことをやるという、あっけらかんとした素直さがある❞と書きましたが、それに加えて、ここ最近の彼らに対して感じるのが、卓越したサービス精神です。元来、V系のファンというのは熱狂的で、時にその声は、プレッシャーとなることもあるでしょう。しかし、彼らの場合、熱烈な声援をすべて、自信と力に変え、期待を背負えば背負うほど、その状況を楽しんでいるようにすら見えます。彼らにとっては、自分たちをどう魅せるか、バンドをどうやって大きくするかなどの戦略よりも、とにかく、お客さんをビックリさせよう、楽しませようという精神が先にくるのでしょう。そして、それを実行していく中で、自然とバンドも大きくなっていったのではないかと思います。前述の8thシングル「GLORIA~栄光のキズナ~」は、結成5周年を記念した作品で、その歌詞の内容は、まるで、ファンに宛てられたラヴソングのようでした。その作品が、チャートアクションを起こしたことも、それを物語っているように思います。

先日、4月19日には3枚目のオリジナル・アルバム『BREAK!!』がリリースされました。この作品については、また別の機会にレビューを書ければと考えていますが、少しだけ述べさせてもらうと、私はこのアルバムタイトルを見た時、❝壊す❞という意味よりも、❝ブレークスルー❞という言葉をまず連想しました。そして、バラエティに富んだ収録曲の中でも、7曲目の「ALEXANDRITE」は、まるで冒険アニメの主題歌のような前向きな歌詞と、ポップかつパワフルなサウンドで、おそらく子どもでも親しめるであろう大衆性があり、胸が弾みました。きっと、V系の枠を超えたポピュラリティを獲得するのではないか。そんな期待を抱かずにはいられないバンドが、FEST VAINQUEURです。

2017年4月19日発売 FEST VAINQUEUR 3rd Full Album「BREAK!!」全曲試聴トレーラームービー