【コラム】2016年 関西のヴィジュアル系シーンを紐解く

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【コラム】2016年  関西のヴィジュアル系シーンを紐解く

【コラム】2016年 関西のヴィジュアル系シーンを紐解く

2015年5月17日、大阪アメリカ村の7つのライヴハウスに、全国から総勢約60組のヴィジュアル系(以下V系)バンドが集結しました。〈KANSAI ROCK SUMMIT’15 EXPLOSION CIRCUIT VOL.2〉と銘打たれたこの大型イベントは、〈MINAMI WHEEL〉や〈見放題〉のような、いわゆるサーキットイベントのV系版と言えるもので、2014年にVOL.1が開催され、今年もVOL.3の開催が5月15日に決定しています。〈MINAMI WHEEL〉開催時ほどの、まるで大きな学園祭かのような賑わいはありませんが、一歩会場に足を踏み入れるとそこには、若者だけでなく、幅広い年齢層のオーディエンスに加え、外国人のお客さんまでもが集い、出演バンドを歓迎する、熱心なオーディエンスの姿がありました。

調べてみると、近年の関西V系界隈では、〈KANSAI ROCK SUMMIT EXPLOSION CIRCUIT〉の他にも、2008年から大阪城音楽堂や服部緑地野外音楽堂で行われていたフェス型イベント〈BANDS SHOCK REVOLUTION ~びじゅある祭~〉が、2015年には会場を舞洲スポーツアイランド 太陽の広場特設ステージに移して開催されていたり、2015年大晦日のカウントダウンイベントが、OSAKA MUSEをはじめ、西九条BRAND NEW、HOLIDAY OSAKA、心斎橋soma、KYOTO MUSEなど、いくつものライヴハウスで開催されるなど、イベント数も増え、その規模も大きくなっています。また、京都の放送局であるKBS京都とネットが連携した、V系とアイドルに特化したテレビ番組『mine Presents CYBER CIRCUS TV』の放送が始まったり、関西のV系バンドを集めたコンピレーション・アルバムも発売されていたりと、熱気を帯びる関西V系シーン。

そこで本稿では、現在の関西V系シーンの盛り上がりを3部構成で紐解いていきます。まず「Part1 関西ヴィジュアル系のルーツ」で、現在の盛り上がりに至るまでの関西のV系のルーツを、「Part2 関西ヴィジュアル系シーンの今」では、現在の関西V系シーンの中心バンドやレーベルについて紹介し、そして「Part3 関西ヴィジュアル系シーンのこれから」では、V系の枠にとどまらず活動するバンドを例に、V系の今後について考えてみたいと思います。

【Part1】関西ヴィジュアル系のルーツ

関西ヴィジュアル系の歴史

そもそも関西は、V系のルーツのひとつでもある、ジャパニーズハードロック、ジャパニーズメタルの盛んな土地でした。ライヴハウス、心斎橋バハマを拠点に活動していた44MUGNAM、EARTH SHAKER、また、元LAZYの高崎晃と樋口宗孝を擁したLOUDNESSなど、ジャパニーズハードロックのパイオニアの多くは関西出身です。80年代には、LUNA SEAのJがローディをしていたAION、DEAD END、Gargoyleも登場します。そして、更にその下の世代になると、現在活動する多くのV系バンドが直接的に影響を受けているL’Arc~en~Ciel、西川貴教のLuis-Mary、90年代にはJanne Da Arc、DIR EN GREY、TRANSTIC NERVE(現defspiral)など、が登場し、関西から生まれたV系バンドは枚挙にいとまがありません。

44MUGNAM〈BOMBARD ATTACK 44MAGNUM ON TOUR 2014〉Digest

EARTH SHAKER「夕星の芒野と消ゆ」

LOUDNESS『THUNDER IN THE EAST 30th Anniversary Edition』トレーラー

また、V系のルーツとして、ハードロックやメタルの他にも、ニューウェーヴからの影響は見逃せません。特に注目したいのが、成田忍とV系の関わりです。現在、成田忍は、女性のV系バンドexist✝traceや、男装アイドルグループ風男塾などのプロデュースやアレンジャーとして有名ですが、そもそも成田忍といえば、4-Dや、“ポストYMO”と言われたテクノバンド、URBAN DANCEのメンバーです。そしてその成田忍が初めてバンドのサウンドプロデュースを手掛けた作品が、D’ERLANGERのセカンドアルバム『BASILISK』です。たしかに、『BASILISK』の硬質な音作りは、URBAN DANCEを彷彿とさせます。そしてD’ERLANGERといえば、LUNA SEAのギタリストINORANやDIR EN GREYのギタリストDieなど、後のV系バンドに多大なる影響を与えたことは有名ですし、『BASILISK』を愛聴盤にあげるアーティストもたくさんいますし、成田忍は『BASILISK』以降もPlastic tree、PIERROTなどの、数々のV系バンドのプロデュースを手掛けています。また、出身が京都であることから、京大西部講堂周辺のヒッピーたちや、スタジオZOO、クラブ・モダーン周辺のEP-4などとも深い関わりのあった人物です。これらの文化は、V系とは一見遠い存在に思えますが、成田忍の存在によって、繋がりがあることを証明していますし、V系の音楽にも、80年代の京都のクラブ界隈の前衛的なエッセンスが少なからず注入されていると思うと、とても興味深いです。

D'ERLANGER『BASILISK』

D’ERLANGER
BASILISK
BMGビクター, 1995年
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また、関西にV系シーンが根付く要因のひとつとして、西九条BRAND NEWや、姫路Beta、HOLIDAY OSAKA、OSAKA RUIDO、OSAKA MUSEや、今年2月で閉店してしまった難波ロケッツなど、メタルやV系が多く出演するライヴハウスの存在も大きいでしょう。更に、CROW MUSIC、FACE MUSIC、Rozetta、CRIMZONなど、V系のレーベルや事務所の多さも目立ちます。過去にさかのぼると、80年代には、当時X JAPANと人気を二分した、大阪のバンド、COLORのヴォーカルDYNAMITE TOMMYが設立した「FREE WILL」や、90年代にD≒SIREのヴォーカル幸也が設立したレーベル「kreis」には関西出身のV系バンドが多く在籍していました。そんな中、関西V系の歴史の中でも、特に大きな存在感と影響力を持ち、2000年代、関西V系シーンで一時代を築いたのが、KISAKIが率いた「UNDER CODE PRODUCTION」です。

関西V系の雄、KISAKI

DIR EN GREYの前身バンドとして知られるLa: Sadie’sのベーシストであったKISAKIは、La: Sadie’s解散後、レーベルMatinaの運営を経て、2003年にUNDER CODE PRODUCTIONを設立。関西拠点でレーベルを運営し、ヴィドールや12012などの全国規模で活躍する多くのバンドを輩出しました。そして自身もPhantasmagoriaや凛といったバンドのベーシストとして活動し、UNDER CODE PRODUCTIONは関西だけでなくV系シーンのなかでも「地下線」と呼ばれる一大勢力となりました。

Phantasmagoriaの代表曲である「神歌」は、V系シーンにおいて、今後も語り継がれるであろう、有名な1曲です。

この曲の秀逸な点は、先人に対するリスペクトが随所にちりばめられているところです。それこそURBAN DANCE、D’ERLANGERから受け継がれたような、キレのある硬い音作りや、LUNA SEAのSUGIZOを彷彿とさせる華やかで艶っぽいギターソロなど、彼らが過去のV系から受けた影響の大きさを感じます。そのうえ、圧倒的にキャッチーで、おまけに振り付けもあるので、曲のクオリティだけでなく、ライヴでどう映えるか、どうお客さんを楽しませるかというところまで考えられているのです。

Phantasmagoria『TERRITORY OF DIVINE-2006.3.27 SHIBUYA-AX』

Phantasmagoria
TERRITORY OF DIVINE-2006.3.27 SHIBUYA-AX
UNDER CODE PRODUCTION, 2006年
BUY: Amazon DVD, タワーレコード

また、関西拠点で活躍したバンドとしては、Sadieの存在も欠かすことはできません。2005年の結成から約10年間、関西に拠点をおいて活動し(現在はメンバー全員東京へ移っています)、なんばHatchやZEPP NAMBAでワンマンを行うほどの人気を獲得した彼らの存在も、関西で活動するV系バンドにとって頼もしい存在でした。

Sadie『DECADE』

Sadie
DECADE
Majestic Records, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

しかし、Sadieは2015年秋に活動休止、凛は2016年3月20日のなんばHatch公演をもって解散。奇しくも、この2バンドが同じ時期に歩みをとめたことにより、本格的に若手主導のシーンへと転換しつつあるのが現在の関西V系シーンです。

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