【コラム】2016年 関西のヴィジュアル系シーンを紐解く

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【Part3】関西ヴィジュアル系シーンのこれから

ここまで、Part1とPart2で関西V系シーンの過去から現在について紹介してきましたが、Part3では少し毛色を変えて、V系について問題提起をしてみたいと思います。V系の持つ、“閉鎖的”という特性についてです。

より開けた文化へ、キーワードは“ユーモア”

V系というのは、良くも悪くも閉じた文化という面があります。海外での人気や、アニメ文化との親和性の高さなどはありますが、それでもやはり、狭いコミュニティに収まっている印象が拭えません。

もちろん、V系の中でも、MERRYやムックなどの一部のバンドは、V系以外のアーティストとも積極的に対バンしたり、インディーズで地道に活動しているユニークな音楽性を持った地方のバンドを、自分たちのライヴのオープニングアクトに迎えたりと、すそ野の広い活動をしているバンドもいますし、〈COUNT DOWN JAPAN〉や〈氣志團万博〉、〈イナズマロックフェス〉などの大型フェスにV系バンドが出演することもあります。ですが、やはりV系の、特にインディーズのコミュニティというのは、どこか息苦しさを感じることも事実ですし、単純にもったいないと感じるのです。果たしてこのままV系という狭い文化の中だけで消費されて終わっていいのだろうか。V系というコミュニティの外に出たときにこそ、V系と接点のなかった多くの人たちに面白がられるのではないか。もっとV系以外のジャンルのアーティストとも交流すべきなのではないかと。そして、V系のバンドがジャンルを超えた活動をするとき、関西らしい人懐っこさやユーモアこそが、その突破口になるのではないかと思うのです。

例えば、関西出身の雅-MIYAVI-は、今や世界中を飛び回るアーティストで、SMAPに曲提供をしたり、FNS歌謡祭に出演したりと、スラップ奏法を駆使した彼のギターテクをお茶の間でも耳にする機会が増えましたが、彼はもともとDué le quartz(デュールクォーツ)というV系バンドのギタリストで、ソロになってからも、hideを彷彿とさせるような、少し奇抜でありつつもポップなセンスを持ち、V系では珍しく、ブルースやヒップホップなど黒人音楽からの影響も強く感じさせるアーティストでした。

Dué le quartz『BEST ALBUM』

Dué le quartz
BEST ALBUM
PS COMPANY, 2005年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

その雅-MIYAVI-は、2009年に結婚して家庭を持ったことを機に事務所を離れ、同時にV系というシーンからも飛び出しました。もちろん相当の覚悟と責任を背負って飛び出したわけですが、それでもやはり、高いギターテクニックに加え、持ち前の人懐こい、ノリのいい関西の兄ちゃん気質も手伝い、どこか飄々と、V系という狭い世界を飛び出したように見えるのです。

雅-MIYAVI-ほどの軽やかさと、広い世界と繋がろうとする貪欲さは、簡単に真似できるものではありませんが、雅-MIYAVI-のように、ひょいっとV系の枠を超え、V系とその他の音楽シーンを自由に行き来しながら活動をしているバンドが、実は関西シーンにいます。しかも23年前から。最後に、その重鎮バンドを紹介して、本稿の締めとします。

関西の重鎮、Dear Loving

大阪府枚方市出身。1993年結成。今も現役で活動中。はっきり言ってこの23年間、大きなブレイクがあったわけではありませんし、同時期に結成し、今も活動を続けているバンドはほとんどいません。ですが彼らは、ドラムの脱退や、ヴォーカルMASAのポリープ手術に伴う一時的な活動休止期間こそあれど、今日までずっと地道に活動を続けてきました。また、〈大阪淀川花火大会〉の公式テーマソングを手掛けるなど、関西を中心に活動し、昨年はなんと、“22年目の再デビュー”ということで、約6年ぶりにメジャーからミニアルバムをリリースしているのですから、驚きです。

同じく枚方出身のバンド、Janne Da Arcのローディをしていたそうで、先輩であるJanne Da ArcがJ-POP的なキャッチーさを持っていたのと同様に、Dear Lovingの曲も、ポップで聴きやすく、かつ素直でシンプルなメッセージの分かりやすい曲が多いです。近年は若手のV系バンドが出演するイベントに参加する機会も多いようで、私も昨年10月にOSAKA MUSEで行われた、凛主催のハロウィンイベントでDear Lovingのステージを観ましたが、やはり、歌の持つ説得力たるや、長年続けてきたバンドの強さを感じすにはいられませんでした。メッセージ性の高い、前向きな歌詞も、言葉を届けることに比重を置く姿勢も、激しいサウンドとインパクトのあるコンセプトを重視しがちなV系バンドがひしめき合うイベントでは、とても新鮮に見えました。また、会場の様子も、他のバンドとは明らかに違っていて、目当て以外のバンドには極めてシビアな態度を示すV系のオーディエンスが、Dear Lovingの時ばかりは、熱心に曲に聴き入っていたのも印象的でした。

エール

そしてDear Lovingの活動について、特筆すべき点こそが、V系以外のアーティストと対バンしたり、MASAはソロで弾き語りライヴをし、シンガーソングライターと競演するなど、V系の垣根を超えて活動していることです。彼らの曲に、メッセージ性の高さを感じるのは、弾き語りなどの活動からの影響なのでしょう。V系コミュニティの中だけにとどまらず、外からの刺激を自分たちの音楽に柔軟に取り入れることで、V系という型にとらわれない自由さがDear Lovingにはあります。さらに、そうやってV系の外に目を向けることが、バンドに新鮮な風を運び、彼らがここまで長く活動を続けられているひとつの要素でもあると感じます。

Dear Loving『Positive Toy Box』

Dear Loving
Positive Toy Box
ライツスケール, 2015年
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現在の関西V系シーンは、若手がどんどん台頭し、新しい時代が始まろうとしています。個性的なバンドが増える中で、V系という枠だけにおさまらずに、どんどんジャンルの壁を超えて、他の音楽シーンとの繋がりが広がることで、関西のV系シーンだけでなく、日本のV系シーンが、より豊かになることを期待せずにはいられないのです。

参考文献リスト

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