【関西ヴィジュアル系シーンを読む】第2回 ザアザア

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ザアザア「○と×」

ザアザア
○と×
タイムリーレコード, 2017年
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先月からスタートしましたコラム、【関西ヴィジュアル系シーンを読む】。第2回目にとりあげたいバンドはザアザアです。ザアザアは、大阪を拠点に2014年12月から、一葵(Vo)、春(G)、零夜(B)、口弐(Dr)の4人で活動を開始。結成から間もないバンドですが、すでに4枚のミニアルバムと、フルアルバムを1枚リリースしており、また、結成からわずか1年でOSAKA MUSEでのワンマン公演もソールドアウトさせるなど、大躍進中のバンドです。

ザアザアの興味深い点は、振り幅が広く、それでいてキャッチーさも備えたサウンドと、それに相反するように、人の負の感情に徹底的にフォーカスした歌詞という、このコントラストです。

まず、サウンド面においては、歌メロはもちろん、ギターのフレーズもとてもキャッチーで、どことなく哀愁を帯びた旋律が耳をひきます。そこに、ハードコアや、ジャジーなシャッフルを取り入れたり、また、歌謡曲やフォークの匂いも感じさせたりと、とにかく、メンバーそれぞれが影響を受けた音楽を、素直に、惜しげもなく作品の中に詰め込んでいる印象を受けます。だから、彼らの曲には、ヴィジュアル系シーンの先輩であるPlastic Treeやカリガリ、LUNA SEAやムック、ナイトメア、それに、シドもメリーも息づいていて、ひいては、それらのバンドのルーツにあたる、BauhausやJoy Division、あるいは、遠藤ミチロウなどの姿も感じることができます。また、それだけでなく、ミドリやあふりらんぽなどの、関西ゼロ世代のはちゃめちゃなノイジーサウンドの影も垣間見える気もします。

ザアザア「ぐちゃぐちゃ」

あふりらんぽ「ミラクルラッキーガールズ」

それぞれが影響を受けたものを素直に反映する彼らのサウンドからは、この4人が起こす化学反応を、まずは自分たち自身が楽しんでいるような無邪気さすら感じます。ですが、その一方で、歌詞はというと、それとは対照的に、哀しみと虚しさに塗りつぶされたドス黒さが目立ちます。

これまで彼らがリリースした作品の多くには、<闇>、<雨>、<絶望>などのコンセプトが用いられ、歌詞では、そのテーマに沿った物語が紡がれています。しかしながら、どんなテーマであれ、そこで歌われているのは一貫して、人の抱える虚しさや寂しさ、哀しみについてです。

憎しみ 痛み 悲しみ
僕に与えてきたもの
全て感じたら 眠らせてあげる
「子守唄」

あなたの悲しみは所詮 あの人の百分の一で
いや千分の一くらいのもので
「大雨警報発令」

ギョッとする歌詞が並びますが、これに加えて、歌詞カードの各曲のページには、実際に歌われる歌詞とは別に、2〜3行の短い詩が添えられており、それは、歌詞以上に胸がザクザクえぐられるような内容です。

例えば、3月にリリースされたオリジナル・アルバム『不幸な迷路』収録の「人殺し」(曲名もものすごいインパクト)は、愛する人との別れを想像させる内容ですが、この曲の歌詞カードの右端には、

あなたにそんなつもりはなくても
とても重い罪で
ちょっとした気まぐれだとしても
命に関わることで
それは人殺しです。

と、添えられていました。一見、別れを告げられた者の怨念の詩のように受け取ることもできるでしょう。ですが、私にはこの言葉は、まるでブーメランのように、その言葉を発した本人にも向かってしまう凶器のように思えるのです。愛と憎しみは紙一重だけれど、愛した者に向ける刃は、同時に自分の心もズタズタに切り裂いてしまう。この短い詩には、そんな意味も含まれているように思えます。

ザアザア『不幸な迷路』

ザアザア
不幸な迷路
タイムリーレコード, 2017年
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この曲以外にも、彼らの曲は常に、人の奥底に眠る、決して表には出さない負の感情を、言葉にして表現しています。だから、暗いし、痛々しい、ちょっと怖いところもあります。ですが、どうにも私には、その言葉の裏に、まだ、たったひとつの愛を求めてもがいている人の姿が見えるのです。そして、それこそがこのバンドの本質であり、他にはないザアザアならではの魅力になっていると感じます。決して万人に受け入れられる曲ではないでしょうが、間違いなく、このナイフのような言葉に救われる人がいるはずです。悲しみや絶望の先を見つめようとするバンド、それがザアザアなのではないでしょうか。7月26日には、ニューシングル「○と×」のリリースも控えている彼らの動向に、今後も注目したいです。

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