【コラム】市民が繋げた神戸国際フルート音楽祭

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神戸国際フルート音楽祭の300人アンサンブル

神戸国際フルート音楽祭の300人アンサンブル

Future『Mask Off』やDrake『Portland』などフルートの印象的なフレーズの曲が全米で特大のヒットを記録している2017年。神戸では、世界三大フルートコンクールの一つと評される〈神戸国際フルートコンクール〉が今年も6月に行われた。1985年から4年に一度開催されており第9回となる今大会は、実は最も大きな財源となっていた市の助成金が「認知度に課題があり、市民への還元の度合いも低い」との理由で打ち切られ資金難となり開催が危ぶまれていたのだ。それにより市民の署名や募金、地元企業の援助、大部分はセレモア文化財団による寄付によって事業費を確保し開催された経緯があった。

そのため今回は、同大会を周知させるためにも神戸港開港150年事業とも連携しながら、フルートを様々な角度から捉えた120以上もの様々なイベントを神戸の街のあちこちで開催し、期間も3月~6月までと大幅に拡大、〈神戸国際フルート音楽祭〉として生まれ変わらせた。その甲斐もありコンクール本選では入場規制がかかるなど、これまでで最も多くの集客を記録した。

その中でも面白かったのが、フルートオーケストラだった。一つ目は「神戸Wave《笛フェニックス!》~心を癒すマリンブルーの風~」。これはNHK交響楽団の首席フルート奏者で今大会の運営委員長も務める神田寛明をはじめプロのフルート奏者によるオーケストラ。高音はピッコロから低音は世界に2本しかないダブルコントラバスフルートなどを使い全てフルート尽くし。神戸出身の神本真理による作曲『暁のシルエット』の世界初演や、F・ボルヌ『カルメン幻想曲』を編曲した仮屋賢一などが客席から登壇するなど、この日のために尽力した人たちの顔が見えるという意味でも能動的な雰囲気がした面白い演奏会だった。同僚が出演したこの公演がきっかけとなり私もこの音楽祭に足を何度も運ぶようになった。二つ目は「フルート300人アンサンブル‐みんなで奏でる大人数オーケストラ‐」。こちらは、公募によって集まった300人を超えるフルート経験者による即席オーケストラ。神戸市による補助金の打ち切りの理由が“市民の認知や神戸市民にとっての文化的意義が見られない”であったことを考えると、当事者がそれを訴える意味で大きな意義があるイベントだったのではないだろうか。

そしてこれらの行動が功を奏し、久元喜造神戸市長は第10回のフルートコンクールについて「従来通り市が主催し、公費も投じて開催する方向で市会と調整したい」と市からの助成金を再検討する方針を明らかにした。神戸には自分たちで地域を活性化させよう“街衆 文化”(※1)がある。それがあったからこそ、オーケストラの形をとって訴えることができたのではないかと思う。なぜならオーケストラは市民社会によって成り立つものだから。(※2)

オリバーソースなど神戸に拠点を置く企業による支援やそこに住む市民が自ら参加してこの音楽祭が作られていく様子を眼の前で見れたことは、私にとって音楽文化が街の人たちを繋げ能動的にさせたという意味でとても面白い体験だった。

  • ※1 街衆とは、KOBE三宮・ひと街創り協議会という三宮センター街の組合を中心とした地域団体の構成メンバーのこと。行政や政治家など第三者に頼ることなく、自ら進んで動き、自分たちで自分たちの街を守り育て、地域に貢献していくのだという強い意志をもった人々を意味する。(『KOBE・三宮物語三宮復興の軌跡と明日への飛翔』より引用)
  • ※2 小沼純一著『オーケストラ再入門』では、市民社会の成立がオーケストラ成立の大きな要因だと語られている。