【コラム】ki-ftレビュアーが京都レコード祭りで見つけた一枚!

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第3回 京都レコード祭り 2日目夕方の模様

第3回 京都レコード祭り2015 2日目夕方の模様

すでに年に一度のお楽しみとして定着化しつつある〈京都レコード祭り〉。三回目を迎えた2015年は5月16日(土)と17日(日)にゼスト御池で行われ、今年も多くの人が訪れました。聞くところによると、初日の午前中は一番揃っている時間帯ということもあって、レコード・ジャンキーでごった返したとか。会場の至るところでレア盤や名盤が安価で見つかるということもあって、ki-ftレビュアーも17日夕方に会場入りし、気合を入れてダンボール箱のLP・EP・CDを掘りに掘ってきました。この記事では「ki-ftレビュアーが京都レコード祭りで見つけた一枚!」と題し、写真とレビュー付きで購入した音源を紹介しましょう。ジャケ買いあり、思わぬ収穫ありな一日となった模様です。

須山公美子『Les chansons qui filent du reve…(夢紡ぐ日々)』

須山公美子『Les chansons qui filent du reve…(夢紡ぐ日々)』

須山公美子『Les chansons qui filent du reve…(夢紡ぐ日々)』
1984年, zero records
購入価格:1500円

西宮のかげろうレーベルとともに80年代の関西の音楽シーンを支えたゼロレコードから発表された須山公美子のソロ一作目。異国情緒感じる幻想的なサウンドと伸びやかな須山の歌声と裏腹に、時に耽美で切ない歌詞はどことなく稲垣足穂の作品を思い起こさせる。知名度と実際に聴いた時のインパクトという点では86年に発表された「夢のはじまり」に軍配があがるかもしれないが、本作には「夢のはじまり」では見られなかった激しいバンドサウンドの曲も収録されるなど聴きごたえは十分。今も関西で根強い“うたもの”の歴史を辿る意味でも彼女のこの2枚はおさえておくべきだろう。
ちなみに「夢のはじまり」はpocoapocoの移転記念のショップで、そして本作は今回のレコマツで発見ということで、今後レコマツといえば須山公美子を思い出しそうである。(堀田 慎平

VA『南インドの古典音楽~フルートによるパッラヴィ』

VA『南インドの古典音楽~フルートによるパッラヴィ』

VA『南インドの古典音楽~フルートによるパッラヴィ』
1973年, ワーナー・パイオニア/ノンサッチ(日本盤)
購入価格:500円

最近ではタイヨンダイ・ブラクストンの新作を発表したことでも知られるアメリカの良心的レーベル、ノンサッチ。もともとは現代音楽、ワールド・ミュージック、電子音楽などをリリースしてきた歴史があるのは十分知られているところですが、このレコードはそんなノンサッチの本質を伝える“ノンサッチ・エクスプローラー・シリーズ”の一つです。コツコツと見つけては買い集めている70年代の日本のワーナーの良い仕事。これはヒンドゥー神話の英雄、クリシュナの象徴でもあるフルートを用いた南インドの美しくも暖かな音色を伴った古典音楽を集めたもので、五音音階やタミル語の歌詞がどのように組み込まれているのかが理解できる解説も勉強になります。(岡村詩野)

Gwen Stefani『The Sweet Escape』

Gwen Stefani『The Sweet Escape』

Gwen Stefani『The Sweet Escape』
2006年, Interscope records(輸入盤)
購入価格:300円

白・黒・金色に統一されているジャケットのデザインに一目惚れし、部屋に飾ったらお洒落だと思った。ただそれだけの理由で購入した一枚。金色の鉄格子を掴み、色っぽく誘惑するような眼差しでこちらを見ている女性は、スカパンクバンド「No Doupt」のヴォーカル「グウェン姐さん」ことグウェン・ステファニー。タイトル通りSweetで、レトロっぽいエレクトロ・サウンドをベースに、リズミカルなタンバリンの音、ホーンが徐々に重なり合っていくのが心地良くごきげんになるPOPな曲。Woohoo Yeehoo~が印象的で、聴いていない時も脳内で再生されてしまい口ずさんでしまう。とにかくこのジャケットが気に入った。こういう出会いがあるのはレコマツの魅力だと思った。(泉谷 麻紀

Tito Puente & His Orchestra『Carnaval Cubano』

Tito Puente & His Orchestra『Carnaval Cubano』

Tito Puente & His Orchestra『Carnaval Cubano』
1990年(オリジナルは1956年), RCA Records(輸入盤 / リイシュー)
購入価格:500円

白い歯が眩しい彼、ティト・プエンテはNY生まれのプエルトリカン。ティンバル奏者として40年代NYのマンボ・ブームに貢献したスターだ。ジャケットが放つ色物感とは裏腹に、のっけのM1「Elegua Chango」から、ガーシュウィンばりにきらびやかなマンボが繰り出されたので少し面食らった。最終曲M11「Cuban Fantasy」も主役はグロッケンで、『キューバのカーニバル』というわりにはジャズ寄りで国際色豊かな1枚ではないか。特に、曲名通りアジア音楽のスケールをそのままマンボにしたようなM8「Mambo Buda」。個人的に櫛田胅之扶の「元禄」を思い出すので、吹奏楽部のレパートリーにひとつどうだろうか。(吉田 紗柚季

Jimmy Castor Bunch『It’s Just Begun』

Jimmy Castor Bunch『It's Just Begun』

Jimmy Castor Bunch『It’s Just Begun』
1972年, RCA Records
購入価格:1,000円

「What we’re gonna do right here is go back, way back, back into time.」
この一節が流れてきたとき、驚いき思わず”いぃ~!?”と声を荒げてしまった。なぜならヒップホップのサンプリングの元ネタとしてよく使われているからである。最近ではアリアナ・グランデが「The Way」で使用していた。本作の「Troglodyte」と「It’s Just Begun」はサンプリング・ソースとして頻繁に使われている。本作は、ループされるグルーヴィーなベースと推進力のあるギターのカッティングで体を熱くするファンクチューンが多く収録されているが、B面にはマーヴィン・ゲイを思わせるスムージーなR&Bも収録されており、ノーザンソウルとの同時代性も見えてくる。
さらにニューヨークを拠点に活動していた彼らの音楽が、この後、同地から出てくるトーキングヘッズ。もっと言えば彼らの代表作「リメイン・イン・ライト」へ繋がっているように感じた。その流れはエイドリアン・ブリューを介してキング・クリムゾン「ディシプリン」にも繋がっているように思えた。そう考えると本作はヒップホップに与えた影響だけでなく、ロックシーンにも繋がっているのではないか。シュールなアートワークに惹かれて買った一枚だが、時代性や地域性を考える上で面白い材料となった。(杉山 慧

Schrammel & Slide『Hell Billes from Venus Vol.3』

Schrammel & Slide『Hell Billes from Venus Vol.3』

Schrammel & Slide『Hell Billes from Venus Vol. 3』
1997年, ACOUSTIC MUSIC RECORDS(輸入盤)
購入価格:500円

くるみ割り人形のようなつぶらな瞳に一目惚れして、ジャケ買いした1枚。「北欧メタルかも」なんて予想を裏切り、流れてきたのはテキサスを思わせる愉快なギターの音色。全編カントリー・ミュージックのインストゥルメンタルかと思いきや、途中にクラリネットのはいったクレツマー的な曲あり、クラフトワークの「モデル」のカバーあり。演奏しているのは、やはりドイツ人。2人のギタリストによるユニットなのだが、ユニット名にあるシュランメルとはウィーンの民族音楽のこと。アメリカで発展をとげたカントリー・ミュージックもヨーロッパの伝統音楽に端を発している。という意味では、彼らのカントリー・ミュージックを詰め込んだ1枚なのかもと思いを巡らす。予期せぬ出会いが楽しめるのがジャケ買いの醍醐味。今回はワンコインで思わぬ大収穫だった。(乾 和代

Chet Baker『Lerner And Loewe』

Chet Baker『Lerner And Loewe』

Chet Baker『Lerner And Loewe』
1959年, RIVERSIDE RECORDS(輸入盤)
購入価格:500円

通称「麦ジャケ」(勝手に命名)。北海道江別市にはチェットベイカリーという名のパン屋さんがあり、インスピレーションを受けた人物はもちろん、トランペット奏者チェット・ベイカーだ(昨年閉店後、アンチェインドベイカリーとして移転再出発)。そのチェットが『マイ・フェア・レディ』をはじめとした、往年のミュージカルを手がけたコンビの楽曲をカヴァー。ビル・エヴァンス、ハービー・マンなどの名実ともに折り紙付きのメンバーによる優雅な演奏。そりゃあ、太陽が降り注ぐ黄金色の小麦畑に、美しいパリジェンヌが佇むってもんでしょう。
さて、小麦の収穫は春と秋だが、今年も新小麦を味わう〈ヌーヴォー小麦〉が秋口に全国で実施される予定。このレコードをまわしながら、フレッシュな小麦香るPainとWineで乾杯なんてのはどうでしょう。(山田 慎

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関西拠点の音楽メディア/レビューサイト ki-ft(キフト)
関西を拠点とした音楽メディア/レビューサイト「ki-ft(キフト)」は音楽ライター講座in京都を通して生まれました。音楽を伝えるためのメディアとして、アルバムレビューを中心に更新。複数人によるクロスレビュー、コラムなども書いています。
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