【関西ヴィジュアル系シーンを読む 番外編】Migimimi sleep tight

Migimimi sleep tight『The Massive Market』
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Migimimi sleep tight『The Massive Market』
Migimimi sleep tight
The Massive Market
SPACE SHOWER MUSIC, 2017年
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コラム【関西ヴィジュアル系シーンを読む】ですが、今回は番外編としてMigimimi sleep tightを紹介します。なぜ番外編かというと、まず、Migimimi sleep tightは、関西のバンドではありません。かねてから親交のあった、ex.メガマソの涼平(G, Cho, Pf)と、the telephonesの松本誠治(Dr, Cho, Perc)を中心に、NEXTRADEの宮川依恋(Vo, G)、ex.FUNKISTのJOTARO(B, Cho)の4人で結成されたバンドです。このメンバー構成を見ても分かる通り、ヴィジュアル系(以下V系)として紹介することにも違和感があるでしょう。ですが、あえて、ここで紹介したいと考えました。その理由は、V系シーンの最も有名な女形の一人である涼平が、V系の枠を飛び越え、他のフィールドで活動しているメンバーで結成したバンドに参加している点に大きな意味を感じたからです。そもそも、私が本連載を始めたのは、閉塞感のあるV系シーンをV系以外の音楽とも関連づけて紹介したいと考えたことが動機のひとつでした。その観点から、今回は、V系バンドでも、関西拠点でもありませんが、V系に愛着のある者としての視点から、涼平をクローズアップする形でMigimimi sleep tightを紹介したいと思います。

結成当初からこのバンドには、<君の人生で一番泣けて、一番踊れるバンド>というテーマがあり、その言葉の通り、琴線に触れる甘く切ないメロディとダンスロックが彼らのサウンドの特徴です。ただ、ダンスロックとは言え、4つ打ちのリズムだけではなく、昨年リリースしたファースト・ミニ・アルバム『The Lovers』では、ヒップホップやサンバなども取り入れながら、”踊れる”というテーマにトライしています。

Migimimi sleep tight『The Lovers』
Migimimi sleep tight
The Lovers
SPACE SHOWER MUSIC, 2016年
BUY: Amazon MP3, タワーレコード, 楽天ブックス

そんな彼らが、12月6日にセカンド・ミニ・アルバム『The Massive Market』をリリースしました。本作では、中華をイメージさせる音階や、トランス、ラテンミュージックなど、多様性という部分では前作と同様にさまざまな試みがされ、また、曲の構成を見ると、「MACAU:The Massive Market」や、「Akirakeiko」では、サビにあたるパートがインストで展開しており、前作以上にクラブミュージックに接近していると言えます。

さまざまな音楽要素が同居していながらも、それらがうまく溶け合い、統一感のある作品に仕上がっているのは、音作りに工夫があるからでしょう。例えば、デンマークのバンドMEWを連想させるような、少し霞みがかった音像が作品全体にファンタジックでドリーミーな印象を与えています。そして、特筆すべきは、その幻想的な音像により、涼平の元来の持ち味が、見事に引き出されている点です。

そもそも、作家としての涼平の大きな魅力は、言葉遊びの巧みさにあります。特に、メガマソの「天使崩壊」というインパクトのあるタイトルや、<まどろむ蛙 さじで掬う 今宵の星は 美味しい>「ICY MILK LAKE」の歌詞に見られるような、甘さと毒々しさを表現することに大変長けた人です。

それがMigimimi sleep tightでは、<落ちた涙舐めたいから、ずっと側で両手差し伸べてる。>「Escape from Tsuki no Uragawa ZOO」や<足りない君を求め、求め。森を彷徨う、裸足で。><君のこと失う。僕だけが失う。>「TREES ON FIRE」から見られるように、甘さの部分は、特有のファンタジックな音像と相まってより際立ち、メガマソで毒々しさとして表現していた部分は、悲しみに置き換えて表現されているように感じます。この変化は、Migimimi sleep tight特有のファンタジックなサウンドによって引き出されたのではないでしょうか。

加えて、「Escape from Tsuki no Uragawa ZOO」では、<Fly me to the moon>と、歌詞にさりげなくジャズのスタンダード・ナンバーを引用していたり、「Akirakeiko」では、平安時代の美しき皇后、藤原明子をモチーフにしていたりと、遊び心と知性を感じる仕掛けも随所に見られます。以前、インタビューで、歌詞は、学生の頃に読んだ多くの文学作品からインスパイアされていると語っていましたが、そうして磨かれた感性が、他のシーンで活躍しているミュージシャンたちから直に受ける影響によって、より豊かに表現されていると感じるのです。

これまで別のシーンで活動してきたミュージシャンたちが結成したバンドの中心に、生粋のV系である涼平がおり、更に、その活動の中で、涼平の元来の持ち味がより引き出されている。これらを踏まえると、Migimimi sleep tightの存在は、閉鎖的になりがちなV系シーンに、何か刺激をもたらすのではないかと期待が膨らみます。そう考えると、Migimimi  sleep tightはV系の視点から見ても、とても重要なバンドなのです。

参考文献

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小川 あかね
小川 あかね
京都府在住。趣味はセーラームーングッズ集めとアニメ鑑賞。ライターとしては、ヴィジュアル系について書く機会が多いです。
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