ミュージック マラソン くるり全曲解説への道 Vol.001「東京」

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気づけば走り出していた。そんなふうに、ふいに流れてきた音楽にガツンと心はもとより体まで動かされた、そんな経験を皆さんはお持ちだろうか。私は、3度あったりする。最初は、5歳の時に幼稚園で聴いた“エリーゼのために”。この曲を弾きたくてピアノを始め、12歳の時に部活紹介で“グレン・ミラーのメドレー”を聴いて即座に吹奏楽部に入部。そして、2008年にたまたまテレビから流れてきたくるりのパシフィコ横浜でのライヴ。そこで演奏された“ブレーメン”を観て感銘を受け、気がついたら次のZeep Tokyoのライヴに行っていた。それまでろくに関西からでたこともなかったのだが、それ以来、全国津々浦々ライヴに足を運ぶように。音楽の知識は流行りのものをかじる程度だったが、 今では、くるり好きがこうじて、こうして音楽について文章を書くまでになった。もっぱらくるりばかり、ではあるが。

そんな私はくるりファンになって10年が経ち、くるりはメジャーデビュー20年。無謀かもと思いつつ、くるりが今まで出してきた公式音源を全曲解説するという企画を立ち上げた。その名も「ミュージックマラソン くるり全曲解説への道」。くるりの楽曲に含まれるいろいろな音の要素にふれつつ、時にトリビアなんかも交えながら、くるりが生み出した楽曲たちの軌跡をたどっていきたいと思う。

Vol.001「東京」

インディー時代に1000枚限定で発売されたファーストアルバム『もしもし』の1曲目に収録されている“東京”。ちょうど、1997年の台風で散々だったフジロックを経験したあとに、シュガーフィールズの原朋信のスタジオで岸田が5分で歌詞を書き上げたという。メジャーデビューシングルの“東京”と比べると、ヒリヒリとした空気感を帯びたこの曲は、なぐり書きのようにも見えるが、シンプルながらもくるりらしい音のこだわりがつまっている。

よく耳をすますと聴こえるドラムのハイハットの一音をきっかけに、サイレンのようなエフェクトがかかったギターがじれったく鳴らされ、あのイントロのギターリフがはじまる。実は、BPMは82ほどで、もう一つの“東京”と比べると全体的なテンポは早いはずなのに、楽曲の長さは約6分と30秒ほど長いのは、イントロやアウトロのせいだろう。鍵盤は入らず、岸田のギターと佐藤のベース、森のドラムのみというシンプルな編成だが、エフェクトのかかったギターや、ずれていびつに重なるコーラスなど、実験的な音が随所にちりばめられている。その効果か、絞り出すような岸田の歌声も相まって、蒸し暑い夏の陽炎のような歪みを感じる。くるりの“東京”といえば思い出すあの音のなくなる瞬間もなく、音がぎっしりと詰め込まれたこの曲には、たぶんあの日の夏の記憶を、ぎゅっと音にして閉じ込めてしまったようなフレッシュさが残っているのだ。そんな、ちょっとタイムカプセル感もある1曲である。

もしもし (1st インディー アルバム)
1.東京
song written by くるり、 arranged by くるり&シュガーフィールズ
1997/11/21 Release
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