【コラム】ティーンエイジ・ファンクラブとベル・アンド・セバスチャン – 先輩の仕打ちと下心が僕をグラスゴーへと誘ったのだ!

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Teenage Fanclub『GRAND PRIX』

Teenage Fanclub
GRAND PRIX
MCAビクター/Creation, 1995年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

音楽評論家・岡村詩野が講師を務める「音楽ライター講座in京都」は2012年にスタートし、第三期を迎えました。2015年はテーマを設け、課題に取り組んでいます。1月から4月にかけて、『ローカルシーンを考察する』と題し、地域音楽について掘り下げながら、講義を進めている最中です。

2月15日は「英国グラスゴーやエジンバラなどスコットランド周辺の音楽シーンについて」という内容です。僕をはじめとする30代以上の方はもちろん、20代の洋楽リスナーやミュージシャンたちは、何かしらの影響を受けているのではないでしょうか。本コラムでは、講座で触れるであろうティーンエイジ・ファンクラブとベル・アンド・セバスチャンについて、「先輩の仕打ちと下心が僕をグラスゴーへと誘ったのだ」という理由を解説しつつ、少しだけ紐解いていきたいと思います。

何故あの時に教えてくれなかったのか! 我憤る。ティーンエイジ・ファンクラブとの再会

中高は一貫教育の男子校に通っていて、通学範囲だったのですが寮生活もしていました。寮では基本的にゲームや漫画は持込NG、そして外出禁止だったため、スポーツか音楽やるという選択肢になります。音楽好きの先輩はかなりいたのですが、とある日に同室の先輩が、爽やかで青っぽいギターと美しいコーラスが特徴のバンドをコンポから流していました。僕はキラキラしたメロディーに一瞬にして心を奪われてしまったので、「これは何というアーティストですか?」とその先輩に訪ねたのです。そうすると彼はこう答えました。「自分で考えろ」と。なんなんですか、この体育会的な受け答えは。今考えると無性に腹が立ってくるのですが、当時は反抗すると面倒くさいことになりかねないので「仕方ないか……」と思いました。確か中2の終わりだったかと思います。

月日が経つこと2年。当時はUKロック志向からパワー・ポップへの変換期を迎えていたので、ヴェルヴェット・クラッシュ、ポウジーズ、ファウンテインズ・オブ・ウェイン、マシュー・スウィート、サマー・キャンプなどを聴いていました。そうすると必然的にティーンエイジ・ファンクラブに再会したわけです。「Sparky’s Dream」を聴いたときは本当に興奮して心のなかで号泣しました。だって2年前のことを鮮烈に覚えていたんですから。実はこういう経験は何回かあるんですけど、今みたいにiPhoneアプリのMidomi SoundHoundShazamを立ち上げて、スピーカーに向けて曲名とミュージシャンを調べることを当時できていたら、何て幸せだったんだろうと思うことがあります(2年越しの再会が感動を呼び込んだというのもありますけども)。

ティーンエイジ・ファンクラブは〈サマー・ソニック2005〉でライヴを見ています。一番のお気に入りは「About You」ですが、見事に演奏してくれ、イントロにて男泣きしました。2分30秒のなかで何度も鳥肌(関西で言うところのさぶいぼ)が立ち、よく分からないけど笑っちゃうし、しっちゃかめっちゃかな状態だったことを覚えています。

バンドはジャド・フェアーとの共作『Words Of Wisdom And Hope』をリリースしたり、特にキーマンであるノーマン・ブレイクはジャドとテニスコーツの共作『How Many Glasgow』に参加するなど、最盛期とは異なる音楽的志向を見せており、現在も精力的に活動しています。昨年、ジョー・パーニスと組んでいるザ・ニュー・メンディカンツとして京都公演も行っており、柔らかな歌声と体型は健在でした。90年代のファンだった方にも、今のノーマン及びバンドをぜひ聴いてほしいと思っています。

下心から入ったベル・アンド・セバスチャン

ティーンエイジ・ファンクラブの項が長くなってしまったので、1月14日にHostessからアルバム『Girls In Peacetime Want To Dance』をリリースしたばかりのベル・アンド・セバスチャンは手短に。高3くらいのときに彼らは『わたしのなかの悪魔(Fold Your Hands Child, You Walk Like a Peasant)』を発売し、シングル「Legal Man」がヒットしたことから、ラジオやTVからもオシャレなポップ・ミュージックが流れていました。

Belle and Sebastian『Tigermilk』

Belle and Sebastian
Tigermilk
Matador Records, 1999年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

当時、同級生だった森川裕之(euphoria, organic stereo)がベルセバを愛聴していたので、その影響を受け、僕も色々と調べて1st『Tigermilk』に行き着きました。このジャケットにビビビと反応した高校三年男子は、下心を覚醒させ、異様なほどに聴き入ってしまったのです。今思えば、『わたしのなかの悪魔』とはよく言ったものです。アルバムではホーンが印象的で疾走感のあるM2「Expectations」が好きでした。

彼ら経由でギター・ポップやネオ・アコースティックに感心を持ち、80年代のインディ・ロックへの扉が開かれたように思います。また、今考えると、スウェーデンのインディ・ロック・レーベルLabrabor Recordsから『This Past Week』などをリリースしたTHE RADIO DEPT.などは、ベルセバフォロワーそのものでしょう。影響を受けたミュージシャンは他にもたくさんいるのでしょうね。下心万歳と、当時の自分に言いたいです(ファンの方、すみません)。

The Radio Dept.『This Past Week』

The Radio Dept.
This Past Week
Labrador Records, 2014年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

つまり2月15日の音楽ライター講座in京都及び、今期のテーマ『ローカルシーンを考察する』はぜひ参加して欲しい!

最後は宣伝になってしまうのですが、こうして聴き返してみると、ローカルシーンは確実に存在し、現在のミュージシャンに多大な影響を及ぼしているということです。それらは国境を飛び越え、僕らの元へ届けられるわけですが、音楽から現地のことを想像したり、関心を持って書物を読んだり、インターネットの海を泳ぐことも可能です。それこそリアルタイムで聴いていて、たくさんのミュージシャンにインタビューをしている岡村詩野さんによる講義は、スコットランド周辺の音楽を紐解いてくれるのではないでしょうか。フランツ・フェルディナンド、モグワイ、パステルズ、ヴァセリンズ、カメラ・オブスキュラ、アラブ・ストラップ、そしてオレンジ・ジュース……。関心ある方は「音楽ライター講座in京都」ページをご覧ください。

最後に先輩である小山君、今では感謝しています。ありがとうございます。

Author Profile

山田 慎運営者、sweet music、PAINLOT
1982年東京生まれ。東京新宿で過ごした後、2008年夏にふらっと京都市へ移住。フリーペーパーを製作した後、sweet musicとしてライター、音楽ライター講座in京都の企画、インタビュー、Web制作などで活動中。紆余曲折を経てパンの水先案内人PAINLOTというプロジェクトを開始。ex. CRJ-tokyo、OTOTOY