【コラム】スリー・オクロック初来日によせて

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The Three O'Clock: Sixteen Tambourines

The Three O’Clock
Sixteen Tambourines
Frontier Records, 1983年
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渋谷系ミュージシャンに習って自分もレコードを聴かなければ。そう思い立ったのは、もう15年前のこと。いま思えば、軽率な志で中古LPの世界に足を踏み入れたものだ。そんなわけで、初めて立ち寄った中古レコード店では、置いてあるLPを見ても、知らない名前ばかり。引っ込みがつかない私は“ギターポップ”と書かれた箱の中から、ジャケットが気に入ったものを買うことに決めた。右も左もわからない広大な世界で“ジャケ買い”を無理やり羅針盤にしたのだ。

スリー・オクロック(The Three O’Clock)の前身バンドであるサルヴェーション・アーミー(Salvation Army)が1982年に発表したアルバムの再リリース『Befour Three O’clock』も、そうやって買った一枚だ。ジャケットには、赤・青・紫、三色刷りの女性の顔に白い花があしらわれていた。だからこそ中身を聴いてびっくりした。ジャケットの可憐さとは裏腹に、ギターがギャンギャン鳴った60年代風パンクだったのだ。録音期間はたったの3日。ベース&ボーカルのマイケル・クエシオも「ライブで演奏している通りに録音した」と解説している。いわば勢い任せの一枚だ。

The Three O'Clock: Vermillion

The Three O’Clock
Vermillion
Paisley Park Records, 1988年

ところが、このスリー・オクロック、足跡を追ってみると、後に華麗なる変貌を遂げている。1983年のファーストアルバム『Sixteen Tambourines』で、うるさいギターリフにキーボード、美麗なコーラスを加えたサウンドで、当時のサイケデリック・ロックの潮流“ペイズリー・アンダーグラウンド”を確立。1984年のメジャー移籍後、同路線で2枚目を発表。1986年の3枚目でニューウェーブ色を強め、1988年の4枚目『Vermillion』で、打ち込みを基調とした上質なポップスを完成させた。この作品では、プリンスが全面協力しているほか、ジェリー・フィッシュのジェイソン・フォークナーも参加しており、80年代アメリカ音楽シーンのダイナミズムが感じられる。その後、活動を休止していたが、2013年にライブを再開。今年は〈フジロック・フェスティバル2014〉出演のため、初来日を果たす。

Salvation Army: Befour Three O'clock

Salvation Army
Befour Three O’clock
Frontier Records, 1982年
BUY: Amazon CD & MP3, iTunes

キャリアを振り返った上で『Befour ~』を聴き直すと、また違った趣が出てくる。このバンドの変わらない良さは、クエシオのか弱い声と甘酸っぱいメロディーなのだが、『Befour~』では、その歌声とともに、後の作風ではありえない高速パンクが披露されている。そこに込められた青春の激情が、後の偉大な変貌を予感させる。時を経てなお、『Befour~』は新芽のように青々しい作品に感じられた。“ジャケ買い”の羅針盤が、結果として素晴らしい音楽に出会わせてくれた。フジの舞台でも、彼らの変わらない輝きに期待したい。

Author Profile

二宮 大輔新聞社アルバイター
1981年愛媛県生まれ、京都育ち。大学卒業後、ローマに留学。帰国後、イタリア音楽専門誌MusicaVitaItaliaでコラム執筆。京都ドーナッツクラブで映画字幕を制作。フラフープスでバンド活動。