【インタビュー】日野浩志郎(birdFriend, goat, bonanzas)

日野浩志郎(birdFriend, goat, bonanzas)
Interview
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goat [Koshiro Hino a.k.a YPY (guitar, composer), Akihiko Ando (Sax), Tetsushi Nishikawa (Drums), Atsumi Tagami (Bass)]
goat [Koshiro Hino a.k.a YPY (guitar, composer), Akihiko Ando (Sax), Tetsushi Nishikawa (Drums), Atsumi Tagami (Bass)]

多分メンバー4人の為の音楽って感じなんです。

──goatとbonanzasは決して別々のものという訳ではなくて地続きなものなんですね。では、2つのバンドの住み分けはどうのように行われているのでしょうか?

作曲の方法は…、一緒か(笑)。一応、意識して住み分けして作曲はしてますが…、どう思いますか?(笑)

──goatは凄くストイックなバンドという印象を受けます。bonanzasはもっとダイナミックというか日野さんの自由にやりたい部分が出ているのかなと思いました。

そうですね。bonanzasめっちゃ楽しいですからね(笑)。気持ちいい! って感じで。

──ではgoatのストイシズムな部分はどこから生まれるのでしょうか?

やっぱり僕の性格的なドMなとこからきてるんだと思います(笑)。詰めてずっと一つのことをやるのが好きで。バンドの作曲をしている期間はすごいピリピリしてる。

──goatにはストイシズムな部分だけではなく、聴き手との間にも凄く緊張感があるように感じます。共感とかを求めていないような。

共感に関しては作り始めたときから諦めているところがありました。基本的には他の人はどうでもいいというか。やってる僕らが多分一番カタルシスがあると思うし 、多分メンバー4人の為の音楽って感じなんです。だから他の人の反応も期待してなかったというか想像すらできなかった。けどライブをする事によって緊張感が増してカタルシスを共感できた方がより気持ちよくなれる。ただこのバンドは受動的なので、どうかこっち来て覗いてみてくださいという感じ(笑)。だから共感されたいと思ってるけど、パフォーマンス的な要素は一切無いので共感を求めてないように見えるのかもしれません。

──goatの音の面に関しては具体的にどういったところから影響を受けていますか?

普通の音程のところに飽きたって言ったらおかしいですけど、前身バンドの時から12音階に違和感を感じていて、何かどこを弾いても合わない、どうしようって思って、単なるサウンドの面白さを作曲に取り入れてみることにしました。(机を叩いて)ここの音がいいじゃんみたいな、それを一個ずつ足していくという感じで。どうしたら自分が納得できるのかなというのを探していたら、ミュート音であったり、普通の音程じゃないところがしっくりくると分かってきました。そういう音選びはインプロやってた時の感覚に近いと思います。あと、goatを作曲する上であるミニマルのミュージシャンを一回めっちゃ研究しました。どう構成しているのか、誰がどこでどう変わっていっているのかというのを1つ1つ100回くらい観て。そうゆうの考えたり謎解きするのが好きなんです(笑)。

goatはコンプレックスの塊で出来ている。

大学は何を専攻してましたか?

理系ですね。

──そういう理詰めで考えることは、今の音作りに部分的に活かされてますか?

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多分ありますね。けどそれがコンプレックスでもあったというか。僕がライブを観に行ってヒーローみたいな存在なのはオシリペンペンズとかだったわけだし。ある種文系じゃないですか。インプロに対しても僕はコンプレックスがあったし、ノイズに関してもやらなかったけどすごい憧れみたいな部分はありました。そういった音楽を僕はあまりできませんが、それぞれ少しずつバンドに取り入れているんです。言ったらgoatはコンプレックスの塊で出来ている。

──オシリペンペンズやDODDODOと言ったバンド名も何度か出てきましたが、いわゆる “関西ゼロ世代”と呼ばれたようなバンドはよく聴いていたのですか?

そうですね。特にオシリペンペンズや巨人ゆえにデカイ、DODDODOは大学生の時にライブもよく観に行ってました。

──リアルタイムでゼロ年代のバンドを聴いていた日野さんから見て、今の関西のアンダーグラウンドシーンはどういう風に映っていますか。

現時点では若い人が全然出てこないなと。新しく面白いことやってるなと思っても、元々面白いことやってた人たちが形を変えてやってたりだとか。もちろん若い子も出てきてるけど僕の中で「これだ!」というのが正直ほぼない。

──そういったなかで自分が関西のシーンを背負っていくという感覚とかはありますか?

自覚してないし背負うつもりも器量もないけどプレッシャーを感じることはたまにあります。でもシーンってやっぱり認め合えるバンドがいくつもあって成り立つものなんじゃないかなと思うんです。僕は近い世代で近い目線の人って本当に少ないです。

──goatもしくは日野さんの活動は、関西のアンダーグラウンドの音楽に影響を受けながらも枠にとらわれず、むしろ拡げていこうとしている様に感じます。

でも僕はシーンをどうこうとか、その周りの状況がどうこうとか、それを変えていきたいっていうのは正直あんまり無いんです。ネガティブな考えは持ってますけど。

──ネガティブな考えというのは?

面白くないなというのはあります。だけど面白くなってもそれを楽しめるかは分からない。盛りあがったら大抵終わるじゃないですか。消費されたくないっていうところがあるというか。この前ある人に「日野君、本当周りのこと冷たい目で見てるでしょ」みたいなこと言われたんですけど(笑)。でもそれは冷たい目で見ているというか、どこのシーンに対しても思うんですが、批評が足りなすぎると僕は常に思ってる。友達だから誉め合うとか無しでしょって思うし。もしここが違うと思ったらそれは言うべきだし、言われた側もそれは無視してもいいと思う。それを言い合える人たちが少なすぎると思うんです。もっと良いもんできるし、もっと良いもん聴きたいと思うから厳しい事を言うことはある。こんな厳しい事ばかり言ってますが、そんな中でも素晴らしい人もいるし見合わない評価の人だっています。birdFriendに関してはそういう人達を拡げようとしているけど、ある種、閉じようともしているというか。

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