【インタビュー】国内唯一のダクソフォン奏者・内橋和久に聞く〈犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago〉

内橋和久 犬島サウンドプロジェクト
Interview
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【インタビュー】国内唯一のダクソフォン奏者・内橋和久に聞く〈犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago〉
【インタビュー】国内唯一のダクソフォン奏者・内橋和久に聞く〈犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago〉

瀬戸内国際芸術祭2016・犬島パフォーミングアーツプログラムとして、アルタードステイツや超即興などでギターをかきならす一方で、国内唯一のダクソフォン奏者として活躍する即興音楽の探求者、内橋和久が『犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago』を始動させる。このプロジェクトは、ジャワ島のジョグジャカルタを拠点とし、現地の呪術や霊性の宿る民族音楽を基本としながらも、そこにアヴァンギャルドな手法を織り込むことで、サイケデリック・ミュージックや実験音楽の範疇を逸脱し続けるSENYAWA(現在はベルリンに拠点を置く、超先鋭的テクノ・レーベルMorphine Recordsからもリリースしている!)のルリー・シャバラとヴキール・スヤディー、インドネシア・バンドン出身のマルチ・インストゥルメンタリスト、イマン・ジンポットらと内橋が犬島に滞在し、犬島の自然、環境の音も含めた島に根付く音に対峙し、新たな音楽を発見していく挑戦である。このサウンドプロジェクトの全貌はいったいどうなっているのだろうか。内橋和久にメール・インタビューを試みた。(聞き手・坂本 哲哉

音楽を奏でるものであるという以前に、しゃべる楽器である

──まず、この『犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago』が開催されることになった、そもそもの経緯を教えてください。

内橋:元々アジアのミュージシャンたちとのネットワークを作るプロジェクトを企画していました。そんな時に犬島でのプロジェクトの話を頂き、その企画の一部をこのプロジェクトに盛り込もうと思いつきました。

──今回のこのプロジェクト内のワークショップで、内橋さんはダクソフォンを扱ったプロジェクトを行われます。ですが、内橋さんは、ダクソフォンの他にも、アルタードステイツや超即興などではギターを用いた演奏もなされています。どうして、今回のプロジェクトではギターではなく、ダクソフォンを扱おうと思ったのでしょうか。他にも何か案があったのでしょうか。

内橋:今回3名が別々にワークショップを行います。普段私は、即興のワークショップとダクソフォンのワークショップを平行してやっていますが、メンバーの1人であるヴキールの今回のプロジェクトでのワークショップが、楽器を制作するという質のものなんです。私のワークショップも音楽家を対象としたものではなく、初心者も含め一から楽器を習得すると言う意味合いのワークショップなので、ダクソフォンのワークショップが向いてるのではないかと思ったわけです。

ダクソフォン奏者・内橋和久によるワークショップ
ダクソフォン奏者・内橋和久によるワークショップ

──実際、内橋さんがダクソフォンに触れ、演奏することで発見したことを具体的に教えてください。

内橋:私はもうダクソフォンを20年近く演奏していますが、歴史の浅い楽器というものは、お手本もあまりありませんし、演奏方法も自分で発見していかなければなりません。もちろんこの楽器を制作したハンス(ライヒェル。音楽家。デザイナー。ダクソフォンの開発者であり、演奏する楽器は全て自作であったという)が1番のお手本なわけですが、最近私が特に感じているのは、この楽器が音楽を奏でるものであるという以前に、しゃべる楽器であるという点です。つまり演奏者が何の言語をしゃべるのかということに密接に関係あるということです。私はここ数年この楽器を演奏することから自分の日本人であるというアイデンティティーを強く感じるようになりました。それが自分のギターの演奏にも、凄く影響を与えていると思います。

──私がダクソフォンの音を初めて聴いたとき、まるで歌を歌っているような、何か声に近い音を発しているように感じました。ギターとダクソフォンの違いは何なのでしょうか。

内橋:ダクソフォンは、ギターのようにメロディーを弾いたりハーモニーを作ったりするのが簡単ではありません。なぜなら、元々そういう演奏するために作られていないからです。基本面白い音を出すという目的で開発されていますから、この楽器を楽器としてどのように扱うかも演奏家のイマジネーションに委ねられているということです。だから、ギターとダクソフォンは真逆の楽器といえます。繰り返すようですが、ギターはメロディーやハーモニーを奏でるために作られていますからね。私は基本、楽器の可能性のようなものに挑んでいるので、私がギターを演奏するときは、よりギターで出来ないような音を出そうと試みますし、ダクソフォンは逆に面白い音は容易に出ますがメロディーを弾くのは容易ではありませんから、音階を弾く練習とかもかなりやっています。

──内橋さんはダクソフォンのワークショップで何を実現したいと思っていますか。

内橋:まずは、この楽器のことを1人でも多くの人たちに知ってもらいたいということと、この楽器の演奏者を育てて、アンサンブル楽器としての可能性を模索したいと言う点です。いつかダクソフォン・オーケストラなんてできたらいいなって思っています。

精神の深層における共感

──今回のプロジェクトにはSENYAWAのルリー・シャバラさんとヴキール・スヤディーさんも参加されます。どうして彼ら2人に参加してもらおうと思ったのでしょう? また、内橋さんはSENYAWAとアルバムを作っており、私も拝見したのですが日本でライヴも行っています、そもそも、内橋さんとSENYAWAの出会いはどんなものだったのでしょうか。彼らのどんなところに魅了されたかも併せて教えてください。

内橋:2011年にシンガポールのフェスで出会って以来、交流が深まっています。翌年にはジョグジャカルタに出向きSENYAWAとのファースト・アルバムのレコーディングをしました。彼らに感じたことは西洋の音楽家にはない熱い魂です。音楽を超越した次元からやってくる表現とでもいいましょうか。これは凄くアジア的であると感じています。精神の深層における共感ですね。

内橋和久、SENYAWAのルリー・シャバラとヴキール・スヤディー
内橋和久、SENYAWAのルリー・シャバラとヴキール・スヤディー

──ルリー・シャバラさんのヴォイス・ワークショップは、自分自身が聴いたことのない新たな声、あるいは新たな声帯を発見する試みになるのではないかと思いました。これは内橋さんの演奏するダクソフォンと音楽的に非常に親和性が高いものになるように思います。

内橋:かなり私もそう思っています。実際ダクソフォンと声という彼とのデュオ・プロジェクトもあり、それが複数になった時のエネルギーを想像するとワクワクしています。

──ヴキール・スヤディーさんのワークショップは、新たな楽器を作り、その楽器を使った表現方法も探求するものだと伺っています。「新たな楽器を作って、それを演奏すること」は非常に魅力的に映りますが、実際問われるのはその人がどう演奏するかということだと思います。内橋さんは、「新たな楽器を作って、それを演奏すること」に関してどう考えているのでしょうか。

内橋:楽器を作るというのはアイデアですが、それを演奏するには想像力が必要です。大抵の場合作って終わりというものが多いです。それは演奏することまで想像して作っていないから。それでは楽器とはいいません。演奏するところまで行けるようにしないと。

──「Inuto Imago うたプロジェクト」は、現在愛唱される習慣の残っていないという犬島音頭を島民の方と共に新たに生まれ変わらせることや、2013年に作られた「うみものがたり」を再構築すること、そして新たなうたをつくることがプロジェクトの主眼です。実際にやってみないとわからないと思いますが、現時点でそれらの「うた」とダクソフォン、ヴォイス、新たに創造された楽器はどれくらい関わり合うものになると考えていますか。

内橋:この歌のトラックは、参加者全員の音で構成されます。まだ完成していないので比率はわかりませんが、かなりインドネシアサウンド寄りのミックスになるでしょうね。

2016年4月に行われた犬島音頭ワークショップの模様
2016年4月に行われた犬島音頭ワークショップの模様

毎日のコンサートは、このプロジェクトでこの島に歌を残し根付かせるためのお祭り

──犬島音頭はどうかわかりませんが、ある種の民族音楽・伝統音楽、ひいては、あらゆる音楽は即興から生まれてくるものであるようにも思いますが、内橋さんはどう思いますか。

内橋:私もそう言っています。最初からあったものなど、どこにもないですから。

──内橋さんの音楽も、SENYAWAの音楽も、ある種ルールに縛られない音楽であるように思います。ルールに縛られない音楽はどうしてこう魅力的に映るのでしょうか。

内橋:衝動に自然に従っているからでしょう。もちろん頭も使いますが、そちらが勝ちすぎてしまうと表現が弱くなりますから、バランスですかね。

──『犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago』はサウンドプロジェクトという側面もありますが、私は昔から日本各地で行われている盆踊りのような、ある種の祭りのようなものになっていくのではないかと思います。内橋さんは『犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago』をどのような場にしたいと思っているのでしょうか。

内橋:私は奉納だと思っています。毎日のコンサートは、このプロジェクトでこの島に歌を残し根付かせるためのお祭りなんですよ。

瀬戸内国際芸術祭2016の会場の一つ「犬島」
瀬戸内国際芸術祭2016の会場の一つ「犬島」

「Inuto Imago ワークショップ」の詳細

  • 会場:犬島内各所
  • ワークショップ ナビゲーター:内橋和久、ルリー・シャバラ、ヴキール・スヤディー
  • 日程:2016年8月25日〜9月4日(30日は休み)
  • ※スケジュールはご相談に応じます。期間中限られた日数しか参加できない場合はご相談ください。
  • 時間:10:00〜12:00(各ワークショップ全員作業)、午後の時間は各チーム自由に設定
  • 一般通し参加料金:税込み48,000円(期間中宿泊費・食費含む)
  • 学生通し参加料金:税込み40,000円(期間中宿泊費・食費含む)
  • ※期間中限られた日数しか参加できない方は、料金についてもお問い合わせください。
  • 申込締切:2016年8月8日
  • 申込方法:公式サイトでご確認ください。
内橋和久 犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago
内橋和久 犬島サウンドプロジェクト Inuto Imago

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