【インタビュー】空間現代 | 彼らはなぜ拠点を東京から京都に移し、ライヴハウス「外」を作ったのか?

Pocket

空間現代が作った京都のイベントスペース「外」ロゴ

空間現代が作った京都のイベントスペース「外」ロゴ

空間現代が京都に活動の拠点を移す。更に「外」というライヴハウスらしからぬ名前を持ったライヴハウスを作る。突然流れたそんなニュースに驚き、未だ混乱している方も少なくないと思う。彼らは東京で結成され今年で10年目を迎える。ヨーロッパツアーの敢行や演劇を始めとした他ジャンルとの共演などその活動は年々拡がりをみせている。ジャンルも国も超え順風満帆に活動を続けているように見える彼らが今、なぜ京都に? そして京都の“外”からやってきた彼らはこの街で何を企むのか。実際に三人に話を聞くことで少しずつ解き明かしていきたいと思う。(インタビュー:堀田 慎平

「地点のアトリエであるアンダースローにみんな自転車で来て入口にバーっと自転車並んでいる風景とかとても新鮮で。」

──まず、なぜ空間現代は京都に移ってきたのか、そしてなぜ「外」という場所を作ろうと思ったのか教えて頂けますか。

野口順哉(Gt, Vo / 以下、野口):京都は地点という劇団と一緒に『ファッツァー』という作品を作って、それをきっかけとして結構頻繁に来るようになったんです。

山田英晶(Dr / 以下、山田):その前からもライヴでちょくちょく来るようになってはいましたけど。

野口:アバンギルドにイベントで呼ばれたりもしてそれで結構通うようになりました。そんな中、京都は街がコンパクトでみんな自転車で移動しているというような話を地点の人たちから聞いたんです。実際に地点のアトリエであるアンダースローにみんな自転車で来て、入口にバーっと自転車並んでいる風景とかとても新鮮で。自転車でイベント観に行くって東京だと本当にご近所じゃないと目にしないので。

──そうなんですね。

古谷野慶輔(B / 以下、古谷野):それから『ファッツァー』をやっている2015年くらいは、空間現代のメンバーが仕事の都合で東京と大阪に分かれていて、物理的にもかなり距離があったんです。集中して作品を作るとなると物理的にも距離は近い方がいいし、地点とやってく中でやっぱり自分達の場所を持っていて、時間の制限もなく集中してものをつくれることへの憧れはありましたね。

山田:空間現代は曲作りに時間がかかるので、三人集まって一緒にやるっていう時間がたくさん必要なんです。一人の時間はそんなに必要じゃないっていうか。だから地点みたいなスタイルはかなりいいなって思っていました。

古谷野:空間現代は誰かが曲を作ってきてそれをやるみたいなのじゃない。集まってみて何が出来るかみたいなのでしかほとんどやってきてないので。

野口:その点考えると京都って場所のイメージと(地点との共演で)、自分達でスペースを持って練習も制作もやって、本番も同じ場所で出来るという具体的な体験があったから、拠点を作ると考えた時にまず思いついたのが真っ先に京都だったというのがありますね。

──では地点の存在やアンダースローという場所からの影響は大きかったのでしょうね。

野口:ありますね。元々場所を持ちたいというのは常々考えていたんです。最初はなんとなく楽しそうくらいの感じで飲みの席で言っていた感じなんですけど、やっぱり地点と仕事するようになって、彼らがアトリエをオープンしたというので、そこで一緒に作品を作ってその作品を定期的に同じ場所でやり続けるという具体的な体験ができたというのがかなり大きいですね。

──そんな中、京都に拠点を移すというのは、三人の中でスムーズに合意がとれたのでしょうか?

古谷野:一年間くらいかけて徐々にって感じでしたね。

山田:もちろん行くという前提で。三人で行くって決めて。そこから色々場所とか探して実際に行くまでは一年くらいかかっています。

──左京区という場所を選んだ理由についてお伺いします。左京区はアンダースローもありますし、京都の中でも文化的拠点というイメージが強いと思うのですが、それも関係あったのでしょうか。

山田:他にも色々探したんですけどね。

古谷野:西陣の方とかも探したんですけど。

野口:ただとにかく予算も限られているし、中心地というのもなかなか手も届かない。そんな中でアンダスローの近くでやるというのは面白いなというのもあるし、ここら辺だったらいいんじゃないかというのはありました。昔から京都に住んでいる人からは「ここら辺は流行らないよ」とか言われたんですけど。でもガケ書房がホホホ座として移ってきたり、新しい動きも感じるし良いんじゃないかと。面白いかも、とは考えていました。

──ホホホ座の動きも左京区を選ぶ理由としてあったんですね。

野口:安心材料としてありましたね(笑)。でもガケ書房店主の山下賢二さんがなにかのインタビューで、北白川にガケ書房オープンする時も「こんな僻地でいいのか」って言われたけど、お土産屋さんとして機能するから僻地の方がいいんだって事をおっしゃっていて、なるほどなって思ったんです。僕らの感覚だと、日常とライヴイベントが一体化しているイメージが東京だったからかは分からないですけど、あまり無いんです。「今日は暇だからあのライヴハウス行こう」ってあまり思ったことないんですよ。そういう感覚があるから、たとえ僻地でも大丈夫かなって。面白いことをやっていれば自転車でみんな来てくれるんじゃないかなって。これが東京っていう大きなエリアで家賃の相場が低いところでやると、電車を乗り継ぎ乗り継ぎみたいなことになるのでちょっと行けない。面白そうだけどちょっと遠いみたいな感覚があるんですけど京都だったらもしかして行けるかもと思いました。やっぱり自転車でみんな来ているという風景が印象に残っていて。

──東京で活動を続ける不安や違和感のようなものはありましたか?

古谷野:東京にいることに対して、完璧な必然性は感じていなかったんだろうなとは思います。でも、これからも東京には行くし、別に「東京捨てて京都きたぜ」って感じでもないです。東京を嫌いになったという訳でもない。

山田:東京で自分たちの場所を持つってなると難しいし、イメージも持てなかったんです。

東京から京都に拠点を移したバンド空間現代

東京から京都に拠点を移したバンド空間現代

「自分達の音楽をやるということと同じくらい自分達が面白いと思う人を見せていきたい」

──ちなみに「外」の名前の由来はどういったものなのでしょうか。

野口:由来は良い名前が思いつかなくて、自分達の曲名からはどうだっていう話になって、それで今までの曲挙げていったら「外」っておもしろくない? ってなったんです。その時は半分ギャグで言っていたんですが、その後また考えていた時にあの物件が決まって。天井は低いし、狭苦しく窮屈になるのは目に見えているのに「外」っていう名前を付けるのは、なんか面白いバランスだなと思ったんです。

古谷野:京都から見たら(僕らも)外の人、よそ者。音楽的にも外の音楽というか、ジャンルとかからは外れているっていうイメージがある。

野口:あとは空間現代がCDをリリースしているレーベル「HEADZ」主宰の佐々木敦さんが書いたもので『ex-music』という本があるんですが、僕はあの本読んで色んな音楽聴くようになったし、外れていくみたい感覚ってそういうところからも影響を受けていたので、丁度いいかなと思ったんです。

──今後は楽曲制作も「外」で行っていくということですが、生まれてくる曲にも変化がありそうですね。

野口:そうですね。ひとつは時間の枠を自分達で決められる。スケジュール調整が自分達の都合で出来るというのは恵まれた環境だと思っています。僕ら曲作るのが遅くて、全然新曲増えないし、アルバムもいいペースで出せない。なかなかポンポンできる感じにはならなくて、いつも悶々としながら作っているんですけど。でも、自分に鞭打つ環境があると、面白いものが出来やすいんじゃないかという期待がありますね。集中して潜る感覚で作るのと、週2回3時間ずつスタジオ入って作るというのでは、ちょっと質が違うのではと思います。あとは僕らライヴのときに、その曲をどう料理するか、アレンジとかを結構こねくり回したりしていて。例えばライヴをワンマンで一時間やるっていったら、その1時間をどういうセットリストでいくかっていうのを考えるのは大変だなと最近感じていて。結局自分で演奏しないと見えてこない部分があるから、1回録音しなきゃとか、1回1時間、本番同様で通したのを後で聴いてみようとかやっていかないと難しい。それをがっつりできるようになればいいなと思います。

山田:制作した場所で本番が出来るのも大きいですね。音自体へのこだわりというか。僕らの場合、生演奏だから場所によって全然鳴りが違ったりするので、いまいち音にこだわりを持ち辛かった。曲を作っても、結局本番やる場所が違うから、どういう音で鳴るのかを掴み切れてなかったんですが、作っている時点で本番こういう音が鳴るんだと分かっているのは、結構大きい気がしています。

──自分たちのスタジオであると同時に「外」はライヴハウスを名乗っていますが、バンド自体がライヴハウスを運営するというのは珍しいように思います。

野口:でも僕らの場所と言いつつ、僕ら以外のアーティストも出演するって事に関しては実は沢山話し合ったりしていて。地点のアンダースローに影響を受けたと繰り返し言っていますが、(地点が劇団専用の稽古場兼アトリエとして利用しているように)「外」も空間現代専用のライヴスペースにしたっていいじゃないかって話もあったんです。だけど、最終的には空間現代は出ないけど、僕らが聴きたい音楽っていうのを、僕らが企画してやっていった方がむしろいいんじゃないかってなって。だから僕らの場合はアトリエじゃなくてライヴハウスって言う方がいいのかなと。

古谷野:自分達の音楽をやるということと同じくらい自分達が面白いと思う人を見せていきたいと以前から思っていたので。

野口:イベントを組んでいく中で、この日は空間現代いらないって日もあると思うんです。そういう意味では空間現代だけの視点だけではなくて「外」という場所としての視点、二つの視点を持ってやらなきゃいけないんだってことに気付かされて。その二つの視点が面白いバランスになればいいなと思っています。

──すべての公演に空間現代が主催・ディレクションという形で関わっていくというのも明言されていますね。

山田:それに関してもめちゃくちゃ話し合いましたね。単純にお金のこと考えたら、ほかのバンドなどに貸していった方がいい。

古谷野:貸していった方が良いと言えば良いんですが、ライヴハウスの持っているコンセプトや色みたいなのをしっかり出していきたかったんです。

──すでにオープニング・プログラムのラインナップも発表されていますが出演者を選ぶにあたって重要視したポイントなどはありますか。

野口:とりあえず場所をオープンするにあたって、出てほしい人たちを考えた時にこういう人たちが挙がりました。振り返ってみると色々影響をもらった先輩アーティストと、僕らと同世代でお互いにシンクロする部分を持っているアーティストを上手くミックスさせてやりたかったっていうのがひとつ。オープニングなので、僕らが今まで影響受けた人とかルーツになった人を紹介する意味合いもあります。あとは僕たちも観たことない人がいた方が風通しいいなっていうのもあって『SELECTED』 という日を作りました。これは僕らが信頼しているアーティストをセレクターとして、誰を呼んだらいいイベントになるかを一緒に話し合って決めていこうと思っています。

山田:10月に出てもらうダダリズムは自分達のスペースを大阪に持っているんです。そこで曲を作ってそのままそこでライヴもやっているんですけど。彼らは自分達のスペースへのこだわりが強すぎて、ほかではライヴをほとんどやらないんです。そこに行ったとき、本当にクオリティが凄くて、ただ曲の面白さとかじゃなくて、響きも含めて音楽なんだと改めて認識させられました。

古谷野:ダダリズムは「外」で音を作ってもらうというのも込みで二日間出てもらいます。

──では二日間の間に曲が変化していくことも。

古谷野:あるかもしれませんね。

──オープニング・プログラムのラインナップを見ているとダダリズムに限らず、音の響きを重要視されている方が多いように思います。

古谷野:そうですね。

山田:普通のライヴハウスみたいに3〜4バンドが出て、短い時間でやるというのではなくて、1〜2のアーティストが長い時間やって、全体として見せるというのをやりたいよねって話は最初からしていました。だからこういうラインナップになったのもあります。

古谷野:ダダリズムを観てほしいですね。

山田:本当に自分たちのところでしかやらないし来た方がいいです。凄いから。

──今後出演者として関西のバンド、ミュージシャンが増えてほしいという期待もあります。

野口:『SELECTED』の枠で関西の方にやってもらおうという話もあります。ただ関西をどんどんフューチャーしていこうって感じではありません。一緒にやっていく人は増えていくんだろうなとは思いますが。

山田:僕らも関西のアーティストは全然知らないから、僕ら自身も知れる場所になったらいいなと思っています。

古谷野:とにかくまだ知らない音楽を聴きたいっていうのがあるんです。それが関西の人かも知れないし、海外の人かもしれない。

──空間現代は演劇など音楽以外のジャンルとの関わりも深いですが、「外」でもそういったイベントを行うアイデアはありますか?

野口:ほかのジャンルの方の話を聞いたり、パフォーマンスを見たりするのは、僕らにとって凄く刺激になるので、そういうことができる場所にしていきたい。ぼくらも学んだり楽しんだり出来る場所になればいいなと思っています。

空間現代が作った京都のイベントスペース「外」

空間現代が作った京都のイベントスペース「外」

「東京でも外だったんですよ(笑)。東京でも外だったので、京都に来てもそんなにやっていく事は変わんないんだろうなと思うんです。」

──話は変わりますが現時点で空間現代の皆さんか京都の音楽シーンにどのようなイメージを抱いていますか。

山田:音楽と音楽以外のジャンルが交わるっていうのは結構あるなと思っています。もちろん、良い部分悪い部分があるとは思うけど。ライヴハウスじゃなくて、なんでもやれるスペースっていうのが多いなと。

古谷野:分母が小さいコミュニティがいっぱいあるんじゃないかっていう印象は持っていますね。ただシーンとかを把握している訳でもないし、そこに入っていこうとしているわけでもないです。

──とは言っても「外」や空間現代の存在が東京と京都、関西のシーンの橋渡しというか風通しをよくしてくれるのではと期待する方も多いと思います。

野口:ただ空間現代が東京で何かシーンに属していたかというと、それも微妙なところがある。

山田:バンドやってますって言ったとき、どこに出てるんですかって聞かれることが多くて、その度に答えに困っていましたね。

──拠点になるような場所がなかったと。

山田:他の人があるのかも分からないけど。根なし感は元々強かったですね。

古谷野:東京でも外だったんですよ(笑)。東京でも外だったので、京都に来てもそんなにやっていく事は変わんないんだろうなと思うんです。結果的にそういう場所になればいいですけどね。

野口:こういう場を作ってしまった以上は、そういう風にみられるだろうなと覚悟はしています。

──根なし感とありましたが「外」という場所があることで、それも変わっていくのではないですか。

古谷野:いやむしろ強まっていくんじゃないですか。

山田:拠点はあるけれど、音楽のジャンルで言うと、どんどん訳のわかんないものになっていくかもしれない。

古谷野:なんか名付け辛いものをやりたいなって思っています。もう観に来るしかないみたいな。

山田:観に来れば分かるっていう。

──僕自身オープンを本当に楽しみにしているので、皆さんもちろんそのつもりだとは思いますが、長く続く場所であってほしいなと思っています。

野口:そうですね。ちなみに空間現代は今年10周年なんです。10年続けてたらこういうこともあるんだと工事現場を行くたびに驚いています(笑)。建物ってこうやってできるんだって(笑)。

──(インタビュー当日の8/31時点で)まだまだ工事中なのには驚きました(笑)。

山田:それは俺らも(笑)。

野口:一つも予定通り進んでないです(笑)。でもオープンまでに完成させたいっていう気持ちもありつつ、オープンした後も成長させていきたいという観点もあって。そういうのも楽しみではありますね。例えば椅子ひとつとっても変わっていくかもしれない。

──なるほど。ますますオープンが楽しみになりました。今日はありがとうございました。

京都・錦林車庫前のイベントスペース「外」

  • 場所:〒606-8427 京都府京都市左京区鹿ケ谷法然院西町18 1F
  • 公式サイト:

「外」オープニング企画スケジュール

  • 9/17~19 空間現代(17日のみアフタートーク[佐々木敦、三浦基])
  • 9/22 PHEW
  • 9/23 MADEGG企画(ASUNA、ニューマヌケ、新仲間)
  • 9/24 山本精一
  • 9/25 SjQ、空間現代
  • 9/26 STEVEN PORTER、DJ行松陽介(O.A.空間現代)
  • 9/29 服部峻(O.A.空間現代)
  • 9/30 Hair Stylistics、Atsuhiro Ito、空間現代
  • 10/2 毛玉、のっぽのグーニー、Hara Kazutoshi
  • 10/8~9 ダダリズム
  • 10/10 YPY企画
  • 10/13~14 空間現代
空間現代『地面』

空間現代
地面(カセットテープ、DLコード付、限定300個)
自主制作, 2016年9月17日
BUY:
1. 眩んだ 2. 見送り 3. 仮託 4. お前たち
DLコード付、限定300枚。ここ数年のライヴで披露されていたM2「見送り」、M4「お前たち」に加え、M1「眩んだ」、M3「仮託」は完全新曲。空間現代が自ら運営するライヴハウス「外」オープンに合わせ発売する。ファンクへの指向が示された4曲となっている。録音・ミックス・マスタリングは西川文章。「外」と関西の一部店舗にて限定販売予定。