【インタビュー】my letter『my letter』

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my letterのキヌガサ(Vo, G) ライブハウスnanoでの演奏(2014年11月30日)

my letterのキヌガサ(Vo, G) ライブハウスnanoでの演奏(2014年11月30日)

アルバムはバンドの“その瞬間の記録”やと思うんです。

──結成7年目でようやくアルバムをリリースすることになりましたよね。ファーストアルバムでありながら、集大成なのかなとも感じました。時間をかけたからこそ、作り終えての想いを聞きたいのですが、いかがでしょうか。

キャシー : 自分のアルバムをむっちゃ聴いているんです。聴いていて落ち着くから、ずっとリピートしているんです。いいものができたなあって素直に思います。作っているときはすごく楽しくて。ギターの音やアレンジにあ~だこ~だ言うことが……(笑)。あと、しっかりしたスタジオで、panopica-eijiさん(レコーディング、ミキシング&マスタリング担当)と録音できたことがよかったです。「こんな風にできるんや!」っていう驚きがありました。4人で録っていたら出てこなかったアイデアとかを見れたし。

キヌガサ : 集大成ではないんですよ。なぜかというと、アルバムには9曲入っていますが、メンバーチェンジから7曲(「壁」「もうひとつの10月に」以外)を作ったんですよ。本当は3rdデモをアルバムにしたかったんですけどね。そのときにメンバーが変わってしまいましたから。チェンジ後にライヴをして、曲を作って、いい感じにできたら録音に入ったという流れです。曲自体はメンバーのアイデアで舵を取っていることもあるので、メンバーが変わったら必然的に曲も変化していきます。アルバムはバンドの“その瞬間の記録”やと思うんです。次のアルバムでどうなるか分からないですし。

──ああ、バンドは常に変化していたんですね。

キヌガサ : 影響されたものをどんどん出してます。今後ですが、ドローンに影響されたら、そうなるかもしれないし、ルー・リードの『メタル・マシーン・ミュージック』みたいになるかもしれない(笑)。

おざわさよこ : 私は絵からの影響の方があるかもしれないですね。個々メンバーの影響でバンドが変化していくと思います。

キヌガサ : 今をパッケージしたという意味では、積み重ねてきたものを作品に落としこんだというわけではないですね。なぜアルバムを作るのに期間が空いてしまったか? という話ですけど、全体の完成度が見えなかったんです。世の中にある自分の好きな音楽と、録音しようとしている音楽の差をすごく感じていて。例えば普通に録る場合、ベース、ドラム、ギター、ギターで「せーのっ!」でやります。でもそれではないなと。右と左、そして真ん中に音を振ったアレンジで作るのは違うなって。音がどこにあるかという定義がすごく好きなんですけど、自分のバンドに対してはそれが掴めなかったんです。3rdデモで色々やったり、まつもととプリプロで3ヶ月位いじったりしたんです。録音してから完成まで半年かかりましたね。「世に出していい」と思えるラインになかなか届かなくって。技術とか自身がやっと到達したと思えたんです。だから7年間かかりましたね。

──ライヴとパッケージ化されたCDというのは別物ということですね。

キヌガサ : 音源をライヴでどう再現するのか? ということが面白いですね。音源を聴いてライヴを見るという流れが自然やと思うんです。例えばハー・スペース・ホリデイの作品を聴くと、いろんな音が入っています。でもライヴを見たら「アレンジ全然違うやん」「イントロ始まったけど何の曲か分からへん」とかの驚きがあるわけです。「これはこれでいいな」ということもあれば「CDの方がええやん」という場合もありますよね。だから2倍楽しめるじゃないですか。ライヴがカッコいいバンドやったら、そのままパッケージングしてもいいし、当然ありやと思います。

まつもと : ファーストアルバムはいろんな色の曲が入っていてほしいなというリスナー的な意見もあって、それに近いものができたかなって。曲調、楽器、コード感とかもカラフルだし。

キャシー : 曲順は完璧やろ。

まつもと : そうですね(笑)。

おざわさよこ : 私はみんなが言うことと違うことを言いたくなる(笑)。音楽的な意味じゃなくても、いろんな人といっぱい関わってきたし。デモしか出せなかったことが、すごいモヤモヤしていて。もっとちゃんとまとめて聴いて欲しいし、常に新しくしていたかったのに、それができなかった。前のデモを録ってから一年も空いてしまって、それが嫌でした。めぐり合わせもなかったからということもあって、リリースがすごく嬉しくて。ただ、録ってからライヴしている間に、気持ちに変化があったりとか、新しい曲ができたりするじゃないですか。だからこの作品も少し過去のものになります。

キヌガサ : そう言った意味でも記録です。

おざわさよこ : 作品を聴いていてすごくいいなと思うんですけど、そのときとは違う自分たちになっているから。「新しくなりました」そして「記録しました」という1回目のやり方を覚えたから、それがよかったかなと思います。また次を録りたいと思いました。

キヌガサ : 当然、満足いっていない部分もあって、次はどうクリアしていくか、自分の理想に近づくのかという作業もありますね。

【インタビュー】my letter(京都二条カフェパランにて)

【インタビュー】my letter(京都二条カフェパランにて)

ドリーミー感を出したかったから。それを消化できてよかった。

──ありがとうございます。それではみなさんが気に入っている曲を教えて下さい。最後に僕が好きな曲を言います。

おざわさよこ : (笑)。お、聞きたい。さらにその曲をパンに例えてくれるんですか?(笑)。

キヌガサ : メンバーに全く理解されないんですけど、M4「どうしようかな」が一番好きなんですよね。音が縦に重なっていない曲が好きなんですよ。具体的に言うと、全員が違うリズムを弾いている手法です。アレンジと組み合わせ、そしてアプローチがうまくいった曲ですね。でも演奏が難しくて、ライヴでできないという(笑)。

キャシー : 一番疾走感があるM6「グッデイ」が曲として好きです。音源にして、案外いいじゃんって思ったのがM7「セブン」。いろんなものを足して、キラキラしていて華やかになって。トランペットも生音で入れたのがよかったなと思います。

まつもと : M3「ルーザー」ですね。

キヌガサ : コード弾いているだけじゃん(笑)。

まつもと : いやあ、それもまたいいです(笑)。ラクやし、かっこいいから最高(笑)。ギターのハモリも最高です。

おざわさよこ : 私はみんなと違って、ライヴのときは一つの楽器を弾いているわけじゃないので、すごく難しくて。ベースが一番楽しいですけどね。アルバム全体でのいろいろやっている分量感が自分にとって調度いいから……。

キヌガサ : 早く選んでくださいよ。

一同 : (笑)。

おざわさよこ : あえて言うんやったらM2「夜は遠くから」。ベースを歪ましたり唄ったりでシュワシュワしとるし、自分がこういうことをしたかったことをできたというか……。スーパーカーにあこがれていたことを消化したし、「あれやってもいいんや」という挑戦的なことをしたから。大きい音を歪ませることは気持ちいいということが分かったから、よかったなと思います。

──さて、僕が好きな曲についてです。my letterを初めて聴いたときって、わりと尖っているイメージがあって。「壁」とかだと思うんですけど。それからの変化を感じ取れたのはM7「セブン」です。いろんな音によって色彩豊かな印象を受け取りました。これをライヴでどう表現するのかということに興味があります。

キャシー : そうですよね〜!

キヌガサ : これはまつもとが入って一番目に作った曲なんです。伸びしろの多いものというか、どうとでもなりそうな曲を作りました。ちょっと変拍子が入っていて、好き放題に転がっていった曲ですね。

おざわさよこ : my letterではできひん曲やなって思いました。ベルセバ(ベル・アンド・セバスチャン)好き感とか、ハースペ好き感とか。

キヌガサ : &(& records)感!

おざわさよこ : 私はそういうドリーミー感を出したかったから。それを消化できてよかった。

──レーベルメイトですけど、4 bonjour’s parties感もありますよね。

おざわさよこ : そうです。かつ、my letterっぽいなと思ってもらえたのがよかったですね。楽しかったです。

キャシー : 音源にしていくときにどんどん賑やかになりましたね。

キヌガサ : あれもできるこれもできると試したんです。例えばシンセサイザーを入れたんですけど、それは違うなって。80’s感も出るかなと思ったらそれも出なくて。それからトランペットを入れたらハマったんですよね。

おざわさよこ : ライヴでできるようにして、今後もこういう曲を作るかどうかは考える……。

キヌガサ : 出たとこ勝負みたいな部分もあるから。

おざわさよこ : ライヴは何も入れずにやっていたんですけどね。

キヌガサ : 録音する前はね。

キャシー : そのときは正直そんなにいい曲ではなかった。

おざわさよこ : だから録音って面白いですよね。

キヌガサ : 収録曲をどうアレンジしていくかですよね。CD通りにできないことも多いですし。メンバーを増やしてやってみたいんですけどね。トランペットとかも。

おざわさよこ : 気づいたら9人くらいになっていたとか(笑)。

キャシー : ライヴでできないことを音源で表現したから、演奏できないんですよね。

キヌガサ : そう。音は結構重ねてますからね。

Author Profile

山田 慎運営者、sweet music、PAINLOT
1982年東京生まれ。東京新宿で過ごした後、2008年夏にふらっと京都市へ移住。フリーペーパーを製作した後、sweet musicとしてライター、音楽ライター講座in京都の企画、インタビュー、Web制作などで活動中。紆余曲折を経てパンの水先案内人PAINLOTというプロジェクトを開始。ex. CRJ-tokyo、OTOTOY
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