【インタビュー】憧れを奏でるバンド。Ribet townsが語る、いまと未来の私たちについて。

Interview
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Ribet towns

京都にRibet townsというバンドがいる。今年avex、DUM-DUM LLP、HOT STUFF、lute、ULTRA-VYBEがタッグを組んで行ったライブ・オーディション「TOKYO BIG UP!」で特別賞を獲得し、4月にはNHK for school ほうかごソングスに「春が咲いた」を提供するなど今勢いに乗る、渋谷と北ヨーロッパに憧れる12人組だ。アコースティックギター、鍵盤ハーモニカ、マンドリン、グロッケンといった楽器群で鳴らされるそのサウンドは、トイポップ、チェンバー・ポップ、トラッド・フォーク、渋谷系への敬愛を感じさせるもので、味気のない日常を多幸感あふれる華やかな世界へと変えてくれる。

そんな彼らは7月11日にニューアルバム『ショーケース』を全国流通でリリースする。ki-ftではアサイゲン(Dr)とミヤチアサヨ(Vo)にインタビューを実施。バンドの結成や渋谷と北ヨーロッパに憧れる理由、そして本人たちも「ネクストステージ感が出せた」と豪語する最新作『ショーケース』の話など語ってくれた。(インタビュー・テキスト:マーガレット安井、編集:ki-ft)

全部自分たちの手で出した音だけで構築したいし、それがアイデンティティになるのかなと。(アサイ)

アサイゲン(Dr)

──まずはRibet towns結成のきっかけについて教えてください。

アサイゲン(Dr/ 以下、アサイ):そもそも、みんな立命館大学の軽音楽部にいました。立命館にはくるりやキセルがいた《ロックコミューン》、ベランダやメシアと人人がいた《KEAKS》といったサークルもありますが、僕たちはサークルではなく軽音楽部。

ミヤチアサヨ(Vo/ 以下、アサヨ):大学の公認団体だったんで、大学から運営金がもらえたりしていましたね。

──ではこの時から、いまの編成でバンドを結成したのですか。

アサイ:いや、大学の頃はまったくRibet townsをやろうとは思ってなくて。大学を卒業してからしばらくは東京で仕事をしていたんですが、京都に戻ってきて。そこでいま一緒に曲を作っているホリエアイコ(以下、アイコ)と、二人で「何かやるか」と言ってやったのが始まりで。ただしばらくバンド活動から離れていたこともあって、声を掛けれるバンドマンが身近にいなかったんです。そこで部活の後輩をどんどん誘っていきました。「大所帯でやりたいな」という、ざっくりとした構想はあって、最初はメンバー7人ぐらいで曲作りを始めました。

アサヨ:でも、やっているうちに「この楽器ほしくなーい?」「グロッケンほしくなーい?」と芋づる式で後輩が後輩を誘っていったら、いまの形になりました(笑)

──大人数だから、最初はサポートもいるのかなと思いましたが全員正規メンバーなんですね。12人全員が正規メンバーである理由ってなんですかね。

アサイ:僕はドラマーなんで、サポートを割とやってきたんですが、自分のバンドじゃないので、アレンジにはかかわるけどバンドを動かす気持ちは薄いじゃないですか。だから全員メンバーの方がバンド自体の動きがよりアクティブになるのかなとやってみて感じています。作曲担当、会計担当、といった役割分担もできますし。意見をまとめるのに時間がかかる側面もありますが、できたものに自信が持てるしなにより楽しいですしね。現時点ではライヴに出ていないメンバーもいます。

──ライヴに出ないメンバーとは?

アサイ:作曲担当のアイコと元々ベースを弾いていたフジノジュンスケも現在はライヴに出ていないですね。だからライヴでは10人がMAXです。

──そういえば現在、メンバー全員が京都に住まわれているわけではないんですよね。

アサイ:そうですね、遠方に住んでいるメンバーもいますんで。みんなで合わすのも月1~2回で来れる人だけでやっています。そういうこともあってライヴ等は早めにスケジュールをたてます。流石に「来週ライヴやるけど出ない?」みたいなことはできないので。

アサヨ:あと、みんな社会人なんで、基本的に土日しか無理ですね。

アサイ:ただ音楽的なことに関しては、多人数であるので制約なく楽曲を作れています。あえて制約を作ったりもしていますが。

──制約を作るとは?

アサイ:精神的なものではなく、物理的な制約です。例えばバンドの音の出し方について、リバーブやディレイを禁止しています。あとは極端な歪みは使わないとか、一人で持ち運べない楽器は使わないとか(笑)。

──何故そんな制約を課したのですか?

アサイ:いま、打ち込みでなんでもできるし、それはそのカッコよさもあるんですが、全部自分たちの手で出した音だけで構築したいし、それがアイデンティティになるのかなと。あと、どこでもライヴが出来るようなバンドではありたいなとは思っています。音響機器が無かったら道端でも、どこでもできるので。

アサヨ:まあ、治外法権的にルールを破る事もたまにありますけどね(笑)。最初にスタジオ入った時はシンセサイザーを入れていたんですけど、なんか「セコいな」って。「全部かっこよくなるやん」って話になって。だからエレクトリックな楽器は使わない、全部自力でやるって感じですね。

渋谷と北ヨーロッパとは書いているんですけど、結局、憧れでしかないんですよね。(アサイ)

──質問を最初に戻しますが、大所帯でこだわる理由ってなんだったんですかね。

アサイ:単純に作りたい音がそれで。“シンプルな音がたくさん鳴って積み重なっている”ような感じのバンドが作りたかったんです。だから“大所帯がやりたい”のではなく、“こういう音楽がやりたい”というところに必要なのが大所帯だった、という感じですね。

──“こういう音楽がやりたい”と仰いましたが、具体的に影響を受けたバンドとかありますか。

アサイ:よくお客さんからは「トクマルシューゴっぽいよね」と言われます。大好きなアーティストの一人ではありますが、バンドを組んだ当初はフランスのMermonteのような、もう少し大きい楽器がいっぱい並んでいるようなバンドに憧れを持っていました。あと日本だとSPECIAL OTHERSなどからも影響を受けました。

──楽曲の作詞、作曲は主にどなたが担当していますか。またアレンジとかはどのようにされていますか。

アサイ:主に僕とアイコが担当してます。おもにアイコが歌詞やメロディ、僕はバンドの大枠のアレンジをやって、作曲は二人でやっています。流れ的には、まず僕がデモ音源作ってメンバーに「コピーしてきて」って言うんですね。ただ音源は“メロディをコピーしてきてほしい部分”と“穴埋め問題のように歯抜けになっている部分”を作っているんですね。僕が曲を作っていて一番好きなのは、自分の手を離れる時で。だから自分の中で納めたものをメンバーに渡して、それが各々の裁量で全然違う曲になった時はうれしいですね。

──アサヨさんは歌い手として、歌詞を書かれているアイコさんとの意思の共有はどうされています?

アサヨ:歌詞はアイコさんの歌が入ったデモが出来上がった状態で届くのですが、アイコさんはクセが強いというか、独特の世界観みたいなのがあって。だから、敢えて最初にアイコさんの意図をインプットしないように心掛けています。全部、そっちの世界へ引きずられてしまうので。そしてその歌詞を自分なりに解釈・咀嚼して歌って、しばらくしてから意味を聞いたりします。

──その「独特な世界感」をアサヨさんの言葉で言い換えるなら、どう表現します?

アサヨ:そうですね……。アイコさんがよく現代女子を揶揄してて。例えばインスタ映えをめっちゃ気にする女子とか(笑)。そこに憧れる気持ちはあるけど、でもそれって日常だけど“作られた日常”だから、その“作られた日常”が現れたりしているのかなと思います。だから、パッと見はファンタジーなんですけど、でもよく見たらめっちゃ生々しいことを歌っていたり、日常のなんでもないことを歌っていたりしていて。スーパーにいてるだけとか、電車乗るだけとか。

──そのことは、プロフィールにある“渋谷と北ヨーロッパに憧れるバンド”というコンセプトにも繋がる気もしますが、このコンセプトって一体なんですか?

アサイ:渋谷と北ヨーロッパとは書いているんですけど、結局、憧れでしかないんですよね。僕たちがいるのは京都ですし。僕らは渋谷系とケルト・アイリッシュの音楽、どちらもやりたくって。だから渋谷系みたいなめちゃくちゃPOPな音楽とアイリッシュ音楽を合わせるという見たままなことをやっているんです。日本の音楽の楽しみ方って“演者”がいて“聴く人”がいるっていうのが一般的じゃないですか。でもアイリッシュ音楽って、パブで飲みながら、みんなで演奏しだすところがあって。ただアイリッシュ音楽をやるだけだったら「そういう音楽もあるよね」で終わるじゃないですか。僕らは日本にいるので、日常の中に音楽があるという文化を、もうちょっと日本に寄せたいなと思っていて。めちゃくちゃPOPな音楽で日本のやり方をすれば、親しみやすくなるかなと考えてやっています。

ネクストステージ感は出せたかと思います。(アサヨ)

ミヤチアサヨ(Vo)

──この『ショーケース』ってタイトルはどういう意図でつけられたのですか。

アサヨ:それぞれの曲が独立した“誰かのとある1日”みたいな感じで作られているんです。それを言い表せないかなという話をしていて、単語をいっぱい並べてみたんですね。それから、いままでの1stミニ・アルバムの『ショートショート』と配信限定EP『フラッシュフィクション』との関連性も考えて選びました。

──1曲目の「アメジスト」は変拍子やポリリズムを多用していますよね。過去のRibet townsの楽曲も変拍子を使っている楽曲が多くありますが、それはなぜですか。

アサイ:それはフレーズ主体で作られていて、結果として変拍子になったのかなと。曲作りに関しては、フレーズをまず考えて、パっと浮かんできたリフをメモしていくんです。そして「これイイな」と思って取ってきたやつを、「どのように譜割していくか」というところを考えていくんですね。だから5拍子⇒5拍子⇒3拍子⇒6拍子⇒6拍子みたいなリズムになったりするんです。

アサヨ:変拍子だからメンバー誰も拍がわからなくて(笑)。どこが表なのですか?裏なのですか?っていうふうになることもありますね。

アサイ:だから、フレーズだけ聴いてもらえればあんまり拍を意識せずに聴けるんですね。ドラムで拍の区切りを出しているので変拍子にはなるんですが、フレーズだけ聴いていたら違和感なく聴けるのかなと。

──あと渋谷に憧れるバンドということもあって、「エソラ」は本当に東京の渋谷のことを歌っていますよね。

アサヨ:以前からもメチャクチャ、東京のことは歌っています。「メトロ」も東京の地下鉄の話だし、「ショートシネマ」も〈ネイビーブルー 染まる東京の街で〉という歌詞があったり。

アサイ:アイコと曲ごとにテーマを決める時に、この街に住んでいる女の子がこういう風にするって筋書きを作るんですが、かなり具体的に決めています。例えば六本木の夜の街とか、「エソラ」だと渋谷にエソラってお店があって、それを使ったりとか。

──しかしRibet townsの歌詞を聴くと何度も“タウン”というワードが出てきますね。渋谷って“タウン”というより“シティ”だと個人的には思うんですが。

アサイ:京都をテーマとして作ったことはないのですが、やはり京都に住んでいるのでその感じが出ているのかもしれないですね。京都って“シティ”って言い難いじゃないですか。“タウン”の方がしっくりくるのかなと。僕らも渋谷には憧れているけど、別にシティな音楽にしたい訳ではないし、身近なものであってほしいという意味で“タウン”なのかなと。

──『ショーケース』以前の楽曲はリアルをフィクション的に描くことが多くありました。しかし本作では「アメジスト」「エソラ」といった現実の暗い部分も歌う曲もあり、リアルとフィクションの狭間を行き来する作品となっていて、いままでとは毛色の違う作品だなと感じました。

アサイ:バンドとして、ちょっとずつ成長してきた結果だとは思います。『ショートショート』は「自分の見ている風景を音楽で表現する為にはどうするか」という感覚に近かった作品だと思うんです。でも、今回はRibet townsというバンドの中で、メンバーそれぞれが個性を出してきて、“エモーショナルさ”みたいなのが増していると思うんです。だから『ショーケース』は『ショートショート』の先に行けた作品なのかなと感じています。

アサヨ:ネクストステージ感は出せたかと思います。

いまは両方あると思うんです。ポップアイコン的に可愛らしく振る舞っている部分と自分の意思みたいな部分が。(アサヨ)

Ribet towns(昨年夏の海にて)

──今回、アサヨさんは曲ごとで色んな歌い方を試されているなと思いました。1曲目の「アメジスト」におけるエモーショナルな歌い方や、「猫の砂」でのラップ的な歌い方。そのどれもが、いままでのRibet townsではやっていない歌い方をされていると思いました。

アサヨ:「メンバー各々の意思みたいな物が出てきた」ということをアサイが話しましたが、それを私もやった結果ですね。

アサイ:最初の『ショートショート』の時って、それこそバンドのポップアイコン的な位置づけでアサヨにお願いしていたんです。でもバンドやるにつれて、“ポップアイコン”ではなく“アサヨ自身”にしてしまった方が良いんだろうなと思って。

アサヨ:最初は頑張って、ポップアイコンを目指していたんです。特に『ショートショート』は。嫌ではなかったんですが、やったことないから「こういう感じ?」って聞きながら、試行錯誤しながらやってきたんです。でもバンド活動を長くやっていくにつれて、それがスッと自分なりに馴染んで出来るようになってきて。「で、次どうする」って考えたとき、「自分が思った通りやろう」と思い、自我を出したんですね。だからいまは両方あると思うんです。可愛らしいポップアイコン的にふるまっている部分と自分の意思みたいな部分が。結果、可愛いらしいこともやりつつ、エモーショナルに歌ったりということを今回の作品ではやりました。

──最後に今後の話もしたいのですがRibet townsと言えば今年、「TOKYO BIG UP!」で特別賞をもらいましたよね。

アサイ:ほぼほぼ、はじめてオーディション的なものを受けたんです。去年バレーボウイズが受けていたのを見て、僕が勝手に音源送ったんです。そしたら「本選に残ったよ」って連絡が入って。

アサヨ:「え!?平日!!」って思いましたが、でもせっかく選んでもらえたんで、無茶しました(笑)ただライヴが出来るチャンスや、ラジオで流してもらえるチャンスは出来る限り使っていこうっていうスタンスなんで。これからもやっていこうとは思います。

アサイ:2017年2月に『ショートショート』を出して本格的に活動しはじめて、いまで1年半。良いペースでバンドができているのかな、とは思っています。いまは色んなところでライヴがしたいですね。現在はライヴハウスが基本でありますが、今後はアコースティックなライヴとかもやりたいなと思っています。あと、野外フェスにとても出たいです。


【作品情報】


Ribet towns New Album
『ショーケース』
HACOWARE RECORD
2018年7月11日発売

01. アメジスト
02. ベッドタウン
03. 猫の砂
04. Pose
05. caravan
06. エソラ(heartbreak ver.)
07. Souvenir
08. ハートに火をつけて

購入:TOWER RECORDS, AmazonCD, ディスクユニオン

Ribet towns OFFICIAL WEB SITE

Author Profile

マーガレット 安井
マーガレット 安井
大阪在住のしがない音楽好き。普段は介護施設で働きながら、鬱々とした毎日を過ごす。好きなジャンルはシティポップと女性シンガー・ソングライターと女性アイドル。
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