【ライヴレビュー】ボロフェスタ2016 at KBSホール

Pocket

KBSホールで行われたボロフェスタ2016

KBSホールで行われたボロフェスタ2016

ボロフェスタ祝15周年! 2002年に京都の若者4人が手弁当で始めたローカルフェスが、今年もKBSホールで開催された。15年経って主催者4人もアラフォー、そのキャリアは四方に散った。飯田仁一郎はLimited Express (has gone?)を率いながら、音楽配信サイトOTOTOYもリアル脱出ゲームのSCRAPも運営、ミュージシャン・マインドでビジネスの世界もサーフライドしている。ゆーきゃんは京都を出て行って地元富山に帰ったが毎年ボロフェスタにはいる相変わらずの存在。二条のライヴハウスnano店長のMC土龍は京都音楽シーンのアニキ的存在に。そしてもう一人の加藤隆生(ロボピッチャー)はボロフェスタを離れてしまってしばらく経ち、すっかりSCRAPの代表・ゲームクリエイターとして時代の寵児となった。

京都大学西部講堂を会場としていた始動当初は、15年続くことなんて予想だにしていなかっただろう。毎年“今年を最後にしよう!”との勢いで心血を注いて燃え尽きては、翌年“今年もやるに決まっている!”と考えが一致して動き出す。「継続」が前提ではなく、この場限りの最高のフェスを作るという気概でやってきたのだから。しかし近年、会期中通して進行を取るMC土龍は“また来年もやりますので!!”と言うようになった。また今年も全公演が終了したあと、会場に流れるエンドロール中のメッセージでは“激しい台風がやって来ても、でっかい地震が起こっても、また来年、ここで会いましょう。”と締めくくられ、明確に20周年をも見据えていた。15年の歩みの中で京都音楽シーンの大文化祭、また良心としてすっかり根付き、若きバンドマンたちにとっても目標・ステータスとなり、続けることの意義や使命感が伺えるようになった。特に今年は“京都音楽イベントの最高峰”を背負って立つような気概が見えたのである。

ベテランかつ破天荒っぷりを見せつけたLimited Express (has gone?)

そんな精神を最も象徴していたのはLimited Express (has gone?)(10/30出演)のステージだろう。ホール内に設営された2つの舞台、メインとなる1stステージの方でHave a Nice Day! が終了したかと思いきや、そこに突如YUKARI(Vo)が乱入、隣の2ndステージでは他のメンバーが「Heaven Discharge Hells Delight」の演奏を開始、観客に対するドッキリ的にステージを跨いだ2組のコラボが始まった。また後半「カラダイデオロギー」ではBiSHが乱入し、メンバーが矢継ぎ早に観客に飛び込んでリフトされる乱痴気騒ぎ。主催バンドであると共にラインナップの中ではベテランとなりつつあるリミエキ、これまで先頭切ってギャーギャー騒ぎ立てて来たが、相変わらずの破天荒でありつつどこか他のミュージシャンたちの受け皿となるような立ち振る舞いを見せる度量の広さを感じた。

またMCで飯田仁一郎(G,Vo)が「代表の飯田です。」と挨拶すると“この人が仕切っているんだ”という意味の“へー”の声が会場のあちこちで聞こえた。くるりの〈京都音楽博覧会〉や10-FEETの〈京都大作戦〉とは違い、主催メンバーがフェスのアイデンティティではなく、ラインナップ・ボランティアスタッフ・毎年のように遊びに来る観客(筆者もその一人)が作り出すボロフェスタ全体のマインドそのものが魅力となっていることが見て取れる。

ceroのバトンを受けてトリを任されたHomecomings

Homecomings『Somehow, Somewhere』

Homecomings
Somehow, Somewhere
Second Royal / felicity, 2014年
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunesで見る

また今年顕著に感じられたのはボロフェスタを目指し、遊び、共に育ってきた、いわば申し子と言えるような京都(関西)拠点の若手演者の成長だ。初日28日の大前夜祭、42年ぶりの京都公演で、かしぶち哲郎の想いを背負いながら日本語ロック黎明期と2016年の今をつなぐような演奏を見せるはちみつぱい、2010年代の日本ロックシーンの主役と言えるようなceroのバトンを受けてトリを任されたのはHomecomings。京都精華大学在学中から出演を続けているが、「Don’t Worry Boys」からビートを引き継いで代表曲「I WANT YOU BACK」になだれ込むなどの全体構成や畳野彩加(Vo,G)の表情変えぬ出で立ちから放たれるオーラなど一回り成長した姿を見せる。初めて彼らがメインステージに立った2013年は「I WANT YOU BACK」演奏中にKBSホールの象徴と言えるバックのカーテンが開帳してステンドグラスが公開、数多くのミュージシャンが“メインステージでステンドグラス開けさせるようなバンドになりたい”と目標に掲げる演出を達成し、福富勇樹(G)は演奏中にも関わらず何度も後ろを振り返って感動していた。あれから3年、今年も本編ラスト「HURTS」演奏中に開帳し会場は歓声に沸いたが、開いて当たり前というかのごとく、堂々たる立ち振る舞い。京都を代表するバンドとの説得力が感じられた。またアンコールでは彼ら唯一の日本語詞、平賀さち枝とのコラボ曲「白い光の朝に」を披露。ボロフェスタは特別な場所と思っているからこその選曲で、彼らのシンデレラストーリーはまだ続きそうだ。

メインステージに大抜擢された花泥棒、THE FULL TEENZ

THE FULL TEENZ『ハローとグッバイのマーチ』

THE FULL TEENZ
『ハローとグッバイのマーチ』
SECOND ROYAL, 2016年5月26日
BUY: Amazon CD, タワーレコード

また本祭2日間のモタレ(落語用語:トリのひとつ前出番)には花泥棒(10/29出演)、THE FULL TEENZ(10/30出演)とこれまでホールとは別の地下に位置するUnderground Stageや京都メトロで行われるオールナイトイベントVol.夜露死苦で育ってきた2組をメインステージに大抜擢。大看板がひしめく終盤“プレッシャーでつぶす気”満載の並びの中で、花泥棒は本来のスマートでポップなメロディを浮足立つことなく届けるようなステージ。THE FULL TEENZも伊藤祐樹(Vo,G)からは緊張が感じられながらもやっとメインステージに立てた喜びをかみしめているようだった。どちらもMCで「ボロフェスタずっと続いていてください」と口にし、またどちらのステージでも最前線には誰よりも腕をあげてシンガロングしているMC土龍の姿があり、信頼関係が見て取れた。

京都ロック本流を担う存在の台風クラブ

Helga Press『From Here To Another Place』

Helga Press(岡村詩野)
From Here To Another Place
Helga Press, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

そんなボロフェスタの登竜門と言える地下のUnderground Stage。年々関西インディーシーンの充実度に比例して出演枠も争奪戦となっている。本祭1日目のトップバッターを務めたのは京都の3ピースバンド台風クラブ(10/29出演)。流通音源がまだ数少ないにも関わらず演奏前から入場規制がかかるほどの人気で、3曲入りシングル「ずる休み」を聴く限りでは京都らしい叙情的なメロディを持ちながらも、やさぐれがかったロックンロール・バンドという印象であった。しかしこの日披露された未音源化の「飛・び・た・い」ではフォークロックの質感ながらもとびっきりのディスコチューンでまだ見ぬ幅広さがうかがい知れる。またどこか気が抜けたダメ人間のにおい、歌うというよりも吐き捨てるという石塚淳(G,Vo)の声にはTheピーズの大木温之、TOMOVSKYの大木兄弟を思い起こさせる。真っ昼間13時なのに日本酒が飲みたくなる。村八分、ローザ・ルクセンブルグ、騒音寺、くるり、連綿と続く京都ロックの本流を担う存在との期待がかかるステージであった。

アイドルから落語まで!BiS、BiSH、生ハムと焼うどん、3776、二ツ目、立川吉笑

またここ数年ボロフェスタを盛り上げる重要な要素となっているアイドルも、復活のBiS(10/29出演)やBiSH(10/30出演)、生ハムと焼うどん(10/30出演)、3776(10/29出演)と行き届いたラインナップ。だが今年その幅広さは、落語立川流の二ツ目、立川吉笑(10/29出演)の招集にも及んだ。落語界だけではなくテレビや音楽イベントなどの他流試合も盛んに行っていることや、そもそも京都出身ということからの実験的ブッキングだろう。枕ではアウェーな舞台であることの自虐的くすぐりから入り、六代目笑福亭松鶴のエピソードも軽めの語り口で、生の落語自体初体験が大多数だろう観客を引き込んでいく。次第に隣のステージからの音漏れも聞こえなくなってくるから不思議だ。そこから彼の創作落語から擬古典(古典を舞台とした創作)「ぞおん」を披露。ダイナミックなモーションと、キャッチーかつSFチックな筋書き、ロジックが積み重なっていく心地よさを感じる話芸は見事に音楽フェスでも通用していた。

ボロフェスタには初代代表・加藤隆生(ロボピッチャー)が帰って来た!

ボロフェスタは気分を大学生の時分に戻してくれる。音楽好きな京都の大学生たちが有志スタッフをしていたり、ダンボールやプラ板で工作した学祭的装飾だったり、外では玉入れをしていたり。竹千代(THEロック大臣ズ)は出演していないが飲食ブースでまぜそばを売ってたり、出演できなかったミュージシャンもこの場で遊んで“来年は絶対出る!”と言ってたり、クリトリック・リス(10/29出演)は出番を終えてその辺の女の子に次々抱きつきながら歩いている。ボロフェスタは演者・観客・スタッフの垣根を超えた大きな溜まり場なのだ。

最後に1つ。今回のボロフェスタには初代代表・加藤隆生(ロボピッチャー)(10/30出演)が演者として帰って来た。15周年を記念して……、みたいなノスタルジックではなく、ゆーきゃんと共演した東京でのライヴを見に来た飯田が「今加藤の歌よくなってる!」とMC土龍に言ったことから直前に出演オファーをかけたようだ。加藤もボロフェスタを主催していた当時の話など軽快なトークを交えながら、この場に出るには新曲を作らざるを得なかったと、直前まで楽屋で歌詞を悩んでいたという新曲「10月30日」を披露。メインステージでは大看板eastern youthが演奏しているその真裏という逆境の時間帯に主催メンバーそれぞれの想いが伺えるような文脈を密かに仕込んでおく。15年経って変わったところはたくさんあっても、この場出来る限りの最高のフェスを作るという姿勢は変わらない。そんな京都のインディペンデント・フェスの話。

関連リンク

Author Profile

峯 大貴音楽ライター兼社会人、京都講座東京特派員
1991年大阪生まれ。2014年3月に京都講座 で制作した「現代関西音楽帖」を編集長として発刊し、同志社大卒業、就職のため上京。 現在もライターとしてQuick Japan,CDジャーナル,BELONGなどに寄稿。落語とフォークをこよなく愛する生粋の大阪人。HITORI JAMBOREE~Mine Daiki Official Tumblr~