【ライヴレビュー】フジロック・フェスティバル 2014

〈フジロック・フェスティバル 2014〉入場ゲート
Live Review
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〈フジロック・フェスティバル 2014〉入場ゲート
〈フジロック・フェスティバル 2014〉入場ゲート

2014年7月25日から27日まで、新潟県苗場スキー場にて開催された〈フジロック・フェスティバル 2014〉のライヴレビューをクロスレビュー(複数名によるライヴレビュー)形式で掲載します。以下、イベントの詳細です。

公演名:フジロック・フェスティバル 2014
日時:2014年7月25日、26日、27日
場所:新潟県湯沢町三国202 苗場スキー場
出演:フランツ・フェルディナンド、ワイルド・ビースツ、ボンベイ・バイシクル・クラブ、ジャングル、ディスクロージャー、ウルフルズ、ザ・ルミニアーズ、アーケイド・ファイア、ザ・ルースターズ、ジャック・ジョンソン、ザ・フレーミング・リップスほか

フジロック・フェスティバル 2014 – 7月25日

1日目だけの参加であったので、11時頃に会場の苗場に到着し、朝の6時までノンストップで満喫した。どっしりしたドラムにミニマルな音を丁寧に重ねていくことで生み出すグルーヴとファルセットヴォイスはやはり格別のものがあったワイルド・ビースツ。終始お祭り騒ぎだったボンベイ・バイシクル・クラブは、単独公演をも予見させるモノであった。予想通りの強靭なグルーヴは日中の疲れもなんのそのと思わせるモノがあったジャングルと、さらっと振り返ってみた。ここでは、踊り明かしたというキーワードが相応しいこの日の中でも、特に印象に残った2組を取り上げレポートする。

1組目は今年初日のヘッドライナー。スコットランドはグラスゴーの4人組フランツ・フェルディナンド。この日のライヴは、まさにギターのニック・マッカートニーに始まり、彼に終わるセットと言えるものだった。ソリッドかつアグレッシヴで手数の多いギターのカッティングが冴え渡っていた。特に「Michael」では、荒々しく観客を煽るかのようなカッティングによるギターソロにライヴの醍醐味を感じた。

Franz Ferdinand: Right Thoughts, Right Words, Right Action
Franz Ferdinand
Right Thoughts, Right Words, Right Action
Hostess Entertainment, 2013年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunes Music Store

新作の中に彼らの代表曲を挟んだ「Bullet」「Take Me Out」「Love Illumination」の3曲は、鋭利な彼のギターアレンジで、よりダンサブルな楽曲へと表情を変える。この流れは原点回帰した『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』の性格をよく表していたと思う。最後4人によるドラムタイムへと雪崩れ込むことから定番曲の「Outsiders」だが、この日は前半部分の緩急をつけながら、高揚感を徐々に上げていくギターに魅せられた。改めて感じたのは、“踊る”をキーワードにした彼らの曲作りに対する姿勢だ。「Right Action」ではそれが顕著であった。擬音語や単純な言葉の繰り返しを使い、知らなくともシンガロングできるように工夫されていることを実感した。

この日は、コール&レスポンスが見事にハマッており会場との一体感があった。その盛り上がりにフロントマンのアレックス・カプラノスは気持ちよくなってしまったのだろう。彼が「Are You Feeling Good? Yeah!!」と叫んだ時、マイク・マイヤーズが主演の映画『オースティン・パワーズ』を思い出し笑ってしまった。そして、彼は何度も「フぅ~ジぃ~ロぉ~ック!」とも叫んでいた。その誰よりも箍の外れた姿は、この日の会心の出来をよく現していた。

〈フジロック・フェスティバル 2014〉木道
〈フジロック・フェスティバル 2014〉木道

2組目は、昨年、本国UKを中心に話題を集めた新人であるロンドンの兄弟デュオのディスクロージャー。彼らのライヴを見るのは3回目となるが、見るたびに明らかにスケールが大きくなっていく彼らの姿を目の当たりにし、勢いというものを肌で感じた。

まず挨拶代わりの1発目は「F For You」にソウル・ディーヴァであるメアリー・J・ブライジをフィーチャーしたセルフリミックスで堂々の幕開け。伸びのある歌声とひんやりした冷たいビートの温度差が心地よかった。そこから畳み掛けるようにアッパーな人気曲を連発していく。サンプリングされた歌声のテンポをずらしたりエコーをかけたりと、踊れるようにいくつものフックが用意されていた。観客を煽るような即興セルフリミックスにライヴ・アクトとしての成長を感じた。

DISCLOSURE: SETTLE
DISCLOSURE
SETTLE
ユニバーサル・インターナショナル, 2014年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunes Music Store

午前中からライヴ三昧の体にこたえてきた時に、清涼感のあるシンセが心地よい「Help Me Lose My Mind」を披露。涼しい風が通り抜け、ふと空を見上げると火照った体の熱を和らげるようにパラパラと小雨が降ってきた。この浮遊感はまさにハイライトとなった。その余韻に浸っていると、「One more song?」と彼らが言った。これだけアンセムを出してまだあったかな? と考えていると、「How about this one?」と言いながら「Latch」の“ダッダー”という効果音を鳴らす。このニクイ演出に会場は「待ってました!」と言わんばかりの歓声が上がった。一番の代表曲がなくとも満足させられるほど、今の彼らは楽曲を自らリミックスしアレンジすることで、流れるようなセットリストを構築する力があることを、まざまざと魅せつけた。

今回、私はある意味で20時間耐久ライヴであった。そこで音楽を聴く事=踊ることを強く感じた。狂乱のお祭り騒ぎから、ゆったりカラダを揺らすだけのものまであるが、スピーカーからの振動をカラダでキャッチするとき、人は不可抗力として踊ってしまうのだ。陽が登り始めた明け方になっても、絶え間ない音の波に揺られ続けている人の群れは、それがエクスタシーの一種であることを魅せつけるかのようであった。

(レビュアー:杉山 慧

〈フジロック・フェスティバル 2014〉THE PALACE OF WONDER
〈フジロック・フェスティバル 2014〉THE PALACE OF WONDER

フジロック・フェスティバル 2014 – 7月26日

フジロック2日目終了を告げるMCが聞こえる中、私は呆然とその場に立ち尽くしていた。ふと、気づけば手のひらに一片の紙吹雪。それを見つめ、今日体験した素晴らしいライヴを思い返してみた。

ウルフルズ: ONE MIND
ウルフルズ
ONE MIND (初回生産限定盤:ベストアルバム付き 復活だぜ!!盤/復活記念77,777枚限定)
ワーナーミュージック・ジャパン, 2014年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunes Music Store

初めに思い出したのは、今年活動を再開したウルフルズのライヴだった。「イエーイ、フジロック! エブリバディ!」とトータス松本のかけ声が苗場に響き渡ると同時に、彼らの代表曲「ガッツだぜ!! 」を投下。これには観客から割れんばかり歓声が響く。その後も「バンザイ」では会場全体が手を挙げて、無数の手の花を咲かせたかと思うと、「ええねん!」では会場全体から力強い「ええねん!」コールが響きわたる。ラストにトータスが「もう1曲やってもええか? 歌うに決まってるやろ! いくぞ!」と言い、彼らのライヴでは定番のナンバー「いい女」を披露。曲中で「来年も必ず戻ってくるぞ!」と言うと観客から拍手と歓声が巻き起こる。

活動休止から4年半、改めてウルフルズのライヴを観て、観客を巻き込む力がとても強いバンドだと実感した。是非、来年もフジロックへ出演してほしいと強く思ったライヴであった。

The Lumineers: ザ・ルミニアーズ
The Lumineers
ザ・ルミニアーズ
ユニバーサル・インターナショナル, 2013年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunes Music Store

次に思い出したのが、夕暮れ時に観たザ・ルミニアーズのライヴだった。大勢の聴衆のまなざしを受けながら「Classy Girls」からスタート。フォーク、カントリー、ロックなどの音楽を取り入れたサウンドが苗場の夕景に響き渡る。そして曲が次々と進むにつれて、あることに気が付く。曲によってメンバー全員、演奏楽器がころころと変わるのだ。特にジェレマイア・フレイテス(Dr, Mando, A.G)とステルス・ウルヴァング(Pf, Acod, A.G)の2人が演奏する様は目を見張った。

ライヴ中盤ではボーカルのウェスリー・シャルツ、ジェレマイア、ステルスがステージを降り、観客がいる中央部に来て「Darlene」と「Elouise」を演奏。これには演奏する彼らを間近でみたいと大勢の観客が詰め寄る。その後ステージへ戻り、数曲演奏し、最後に「Big Parade」で大団円。予測不能の演出で観る者を楽しませる。今日のザ・ルミニアーズはまさにそんなライヴであった。

〈フジロック・フェスティバル 2014〉THE PALACE OF WONDER
〈フジロック・フェスティバル 2014〉THE PALACE OF WONDER

そして、今終わったアーケイド・ファイアのライヴを思い返した。ステージが暗くなり中央の特設ステージにスポットライトが当たると、身を鏡で包んだミラーマンが登場。「今日は初めてのフジロック! 多いに楽しんでください! アーケイド・ファイア!」その掛け声と同時にステージでは「Reflektor」が演奏され、会場は一気にダンスホールへと変化。その後「Rebellion」「Ready To Start」と彼らの代表曲が惜しげもなく次々と鳴り響く。

今回、彼らのライヴを観て、そのエンターテイメント性の高さに舌を巻いた。「Afterlife」ではミラーマンを再び登場。自らに光を当ててミラーボールのようにし会場をダンスホールに変えたと思えば、次の「It’s Never Over (Hey Orpheus)」では特設ステージに、ボーカルのウィン・バトラーの妻であるレジーヌ・シャサーニュが立ち、向かい合い歌っていると、突然、背後で死神が登場し踊りだし、曲が意図するオルフェウスの物語をアーケイド・ファイアというバンドの中で再現するという演出を見せてくれた。さらにライヴ終盤では、今日来てくれたお客さんのためにYMOの「ライディーン」を演奏。それに合わせ巨大な人型のお面を被った人間が登場し観客を沸かせた。

Arcade Fire: Reflektor
Arcade Fire
Reflektor
ユニバーサル・ミュージック, 2013年
BUY: Amazon CD, タワーレコード, iTunes Music Store

そして、ラスト2曲は今回のフジロック最大のハイライトだった。「Here Come The Night Time」が鳴り響くと、地鳴りのような歓声が沸き起こり、終盤にはステージが全く見えなくなるほどの大量の紙吹雪が降り注ぎ、会場は歓喜に包まれた。そして、ラストは彼ら最大のライヴアンセム「Wake Up」では会場全体から待っていましたとばかり、大合唱の嵐が苗場に吹き荒れた。

終演後、あまりの圧倒的なライヴ観た事もあり、しばらくその場を動くことができない自分がいた。魅せる事に、聴かせることに徹底した本当に素晴らしいライヴだったと、手のひらの紙吹雪を見つめながら思っていた。

(レビュアー:安井 豊喜

〈フジロック・フェスティバル 2014〉夜の会場
〈フジロック・フェスティバル 2014〉夜の会場

フジロック・フェスティバル 2014 – 7月27日

1日目、2日目、晴天であったフジロックも3日目は雨。しかし、たまの晴れ間に飲んだビールは格別に美味かった。と、帰りの電車に揺られながら、フジロックであった事を思い出していた。そんな中、私のイヤホンからザ・ルースターズの音が聴こえてきた。

THE ROOSTERS: RESPECTABLE ROOSTERS→Z
THE ROOSTERS
RESPECTABLE ROOSTERS→Z
参加アーティスト:KEMURI, PEALOUT, Thee Michelle Gun Elephant, THE GROOVERS, MO’SOME TONEBENDER, 斉藤和義, 勝手にしやがれ, bloodthirsty butchers, HEATWAVE, dip, 東京スカパラダイスオーケストラ, THE BACK HORN, グループ魂, アベフトシ&ベアボーンズ, Potshot、朝本浩文&吉村健一, the pillows, GYOGAN REND’S, SUPERCAR, Radio Caroline
日本コロムビア, 2014年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

フジロックで解散した伝説が、10年後の苗場に再降臨。メンバーが揃い、激しいドラムのビートから「テキーラ」がスタートし、観客は「テキーラ」と叫び大盛り上がり。その後も「LEATHER BOOTS」「ROSIE」といった往年の名曲を披露する。「日本語で言います。レッツロッケンロール!」という掛け声で演奏した「Let’s Rock」では、苗場に「DAN DAN」コールが響く。狂気じみた感覚すら感じられる、その姿はロックが危険でカッコいいものである事を教えてくれる。

ラスト「恋をしようよ」が鳴り響くと後方のお客が前方のピットに走り出し「C.M.C.」ではモッシュとダイヴの嵐が吹き荒れる。彼らの直撃世代だった人、そして20代の若きファンが1つとなり、楽しむ姿は世代関係なく、彼らの音楽が愛されていると実感した。終演後、さっと帰る姿に痺れながらBGMとして流れた「GIRL FRIEND」は暖かく私の耳に響いていた。

その後に聴こえてきたのは、何とも陽気でハワイの風を感じさせるサーフ・ミュージックである。これはジャック・ジョンソンの曲だ。

Jack Johnson: From Here to Now to You
Jack Johnson
From Here to Now to You (DVD付)
ユニバーサル・ミュージック, 2014年
BUY: Amazon CD+DVD, タワーレコード, iTunes Music Store

夜になり小雨が降り始め、レインウェアを着ても肌冷えする中、ジャック・ジョンソンが登場。今日来てくれたお客さんに日本語で挨拶をして、サラッとアコーステック・ギターを持つと「Flake」を披露。夏の浜辺を思い起こすそのサウンドは、冷えた苗場をハワイの空気へと変えていく。

その後も「You and Your Heart」「Wasting Time」を披露すると、「私の友達を紹介します」と言い登場したのは、なんとジョン・バトラー。まさかの共演に観客席からは大きな歓声がこだまする中「Breakdown」を演奏。さらにライヴ終盤ではオゾマトリを向かい入れ「Staple It Together」を披露し、そのままレッド・ツェッペリンの曲をセッションし、会場を沸かせた。

そして日本語で「ありがとうございます」と言い、最後に「Better Together」を演奏しライヴは終了。肌寒かった苗場には心地の良い南風が駆け抜けた。

〈フジロック・フェスティバル 2014〉KIDS LAND
〈フジロック・フェスティバル 2014〉KIDS LAND

そろそろ大阪へ着く。席を立った時に聴こえてきたのはザ・フレーミング・リップスであった。それを聴きながら、苗場が夢の国に変わった瞬間を思い出していた。

「なんじゃこりゃ??」

天井には紐状のLEDが沢山吊るされ、後ろの壁一面が沢山の銀色の球体で覆われている。さらに舞台には巨大なキノコや、虹の着ぐるみ人物が登場。最後に出てきたボーカルのウェイン・コインは人体模型のように筋肉を描いた全身タイツを着用。観るもの全てに呆気を取られたが、これは観客を夢の国へいざなう準備だった。

「The Abandened Hospital Ship」からライヴはスタート。優しいサウンドが苗場にいた観客を夢の国の入り口まで誘導。そして、続けて「Yoshimi Battles the Pink Robots, Pt.1」が鳴り響くと夢の国の扉が開かれる。暗かったステージに眩い光が差し込み、会場には大量の紙吹雪が降り注ぐ。これには観客席からは歓喜の声が溢れかえる。

The Flaming Lips & Fwends: With a Little Help From My Fwends
The Flaming Lips & Fwends
With a Little Help From My Fwends
Warner Bros, 2014年
BUY: Amazon CD

ここからは完全に彼らの独壇場。「Race for the Prize」では大歓声が起こり、紐状LEDがカラフルに輝きステージに花を添え、続く「Vein of Stars」ではウェインがバルーンボールに入り、観客の頭上を転がりながら歌う。気付くと宇宙人の様なキャラクターが入り乱れて、おもちゃ箱ひっくり返した世界が目の前に広がっていた。そして、最後は「Do You Realize??」を披露し、夢の国は我々に別れを告げた。

帰宅し、リストバンドを切り、私の旅は終わった。準備も大変、関西から行くのも大変、会場についても雨降っている事が大半。だけど、それ以上に素晴らしい音楽、フジロックを心から愛する音楽ファンに出会える。来年の夏がまた楽しみである。

(レビュアー:安井 豊喜

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