2016年 関西のヴィジュアル系シーンを紐解く | 凛 LAST LIVE〈the end of corruption world〉3月20日 at なんばHatch

Pocket

凛『the end of corruption world (MEMORIAL BEST BOX)』

凛-the end of corruption world-
the end of corruption world (MEMORIAL BEST BOX)
wyze iD factory Inc., 2016年
BUY: Amazon CD+DVD, タワーレコード, iTunesで見る

思えば、凛というバンド及び、凛の首謀者であるKISAKI(B)という人は、関西のヴィジュアル系(以下V系)シーンにおいて、さまざまな人やものを繋ぐ、橋渡しのような役割を担っていた。関西を拠点としたインディーズ・レーベルUNDER CODE PRODUCTIONを2003年から2013年まで主宰していたことから、関西とその他の地域のバンドマンを繋ぐ存在であったし、世代的にも、1990年代のX JAPANやLUNA SEAなどに代表される、いわゆるV系元祖の世代と、2000年代中期から登場した“ネオ・ヴィジュアル系”と呼ばれる世代の、ちょうど間の世代であるKISAKIは、そういうビッグな先輩たちと、ネオ・V系以降に登場した後輩たちを繋ぐ存在でもあった。そうして、レーベルオーナーとしても、ミュージシャンとしても、関西のV系シーンを10年以上背負ってきたKISAKIが、2010年に始動したバンドが凛だった。2013年にレーベルUNDER CODEを解体した時に、凛も一時活動休止をしたが、翌年メンバーチェンジを経てカムバック。紆余曲折のあったバンドではあるが、このたびついに、解散という形でその活動に幕をおろす。

このラストライヴが素晴らしかったのは、これまでもさまざまな人やものを繋いできたKISAKIが、凛としてのラストステージでもその役割を全うしていたことだ。本公演で凛が繋いだものは主に2つあったように思う。ひとつは、後輩だ。本公演は、凛のラストライヴにもかかわらずワンマンライヴではなく、凛の他に8バンドが出演するイベント形式で、しかも、その大半が2010年以降結成の若いバンドだった。そのキャスティングは、凛のいない今後のV系シーンの未来をその後輩たちに託し、バトンを後輩たちに繋いでいるようにも見えた。そして、後輩たちはというと、必要以上に気負うことも、湿っぽさもなく、いつも通りの自分たちのパフォーマンスを貫いており、その毅然とした姿がとても頼もしかった。トップバッターを任されたFEST VAINQUEURの骨太なサウンドと、確かなスキルは、SIAM SHADEやそれこそ関西に脈々と続く、LOUDNESS、44MAGNUM、EARTH SHAKERなどのハードロック勢の血を感じさせ、続いて登場したグリーヴァは初期のDir en greyを思わせるような出で立ちに、キャッチーなフレーズを多用したギターロックでオーディエンスを引き込んだ。名古屋からの刺客Avel Cainはゴスを和で解釈したスタイルで、衣装も全員真っ白で登場。かつてUNDER CODE PRODUCTIONに在籍していたヴィドールのRame(B)と、NEGAのSAN(G)を擁するBlack Gene For the Next Sceneは、耳をつんざくようなエレクトロを用い、ヘヴィロックにダンスミュージックを掛け合わせたサウンドでフロアをおおいに盛り上げた(なお、Avel Cainは解散、Black Gene For the Next Sceneは活動停止が発表されています)。その後に登場したHEROは、JIN(Vo)が衣装、ヘアメイクともに完璧なKISAKIコスで登場し、オーディエンスの爆笑をさらう。さらにMCでは自分の背の低さと座高の高さをネタにして笑わせる。とにかく目の前のお客さんを笑顔にしたいという姿勢は、まるで、その過剰なサービス精神で、いつも対バン相手のお客さんの心を鮮やかに奪う、氣志團の綾小路翔のよう。それでもきっちりと、曲ではHEROの持ち味であるポップセンスで会場の心をがっちり掴んでいたのはさすがであった。続いて登場したMEJIBRAYとDIAURAは、近年めきめきと頭角を現している若手の筆頭である。MEJIBRAYはメタルコアを基軸とした過激なサウンドでオーディエンスを圧倒し、DIAURAはミドルバラードまで披露するという、バンドの多面的な魅力をギュッと詰め込んだセットリストで、他のバンドのお客さんを奪ってやるという気迫すら感じられた。なお、今回唯一“ゲスト”という枠で登場したDは、メンバーのASAGI(Vo)とRuiza(G)が、かつてKISAKIとSyndromeというバンドを組んでおり、その縁もあってのゲスト参加で、重厚感たっぷりのど迫力サウンドとASAGIの圧倒的な声量を聞かせ、この日、Dのステージだけは同志への餞けのようであった。そうして多数の若手バンドが出演したことで、今の若手はこんなにも層が厚いということを見せつけられた。

そして、いよいよ凛のラストステージ。ここで凛が繋いだ、もうひとつのものに気が付く。それは、90年代のV系の伝統や美学を現在のシーンに投げかけ、繋いでいることだ。例えば、畳みかける激しいリフに、シンフォニックを盛り込んだ「The Psalms and Lamentations」や、組曲のような構成でドラマチックな「Dedicate to Graveyard」からは、X JAPANやMALICE MIZERなどの90年代のV系バンドが醸し出していた、どうしようもなく悲しいのに美しいという感覚や、スケールの大きさ、プログレッシブな匂いを嗅ぎ取ることができる。

凛「Dedicate to Graveyard」

また、ステージパフォーマンスにおいても、曲の途中でKISAKIがステージ袖からCO2ボンベを引っ張り出して客席に噴射するという、X JAPANのYOSHIKIがライヴでよく行っていたパフォーマンスを意識したものがあったり、本日出演したバンドたちがステージに集合して暴れまくるという、エクスタシーサミットを想起させる場面もあった。こういうところからも、KISAKIの先人に対する尊敬の念を感じるし、そういうV系の伝統みたいなものを引き継いで、多様な解釈がなされている現在のV系シーンに投げかけ、橋をかけているようだった。そしてこれは、上の世代とも、下の世代とも、多くの関わりをもっているポジションにいるKISAKIだからこそ、その役割を担えたのだと思う。KISAKIにしかできないことだったのだ。

ステージ終盤。SUI(Vo)が「君たちの中で凛が在り続けますように」と、一言ずつ言葉を選びながら誠実にファンへ思いを伝え、ラストナンバーを終えると、ステージの幕が閉まり、凛のラストライヴは終了した。アンコールも無しという潔さであった。今後、KISAKIがどのような形で音楽と関わっていくのか、現時点では分からないけれど、SUI、MIZALY(G)、CERO(G)、YUSHI(Dr)の若いメンバーには、凛での経験を糧に、さらに大きな姿を見せてくれることを期待したい。この数年、KISAKIを一番近くで見てきた彼らだからこそできること、彼らにしかできないことがきっとあるはずだ。