キツネの嫁入りpresents 第四回スキマアワー「学校では教わらなかった音楽」

キツネの嫁入りpresents 第四回スキマアワー「学校では教わらなかった音楽」
Live Review
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第四回スキマアワーに出演したRopes
荒井由美「卒業写真」のカヴァーを披露したRopes(アチコ、戸高賢史)
photo by tutty

日常に寄り添う、普遍的な音楽 (森 豊和)

小学校の広々とした和室で、金佑龍が弾き語る。フィッシュマンズの「ナイトクルージング」のカヴァー。「バンドが解散して震災もあって、そんな時フィッシュマンズを聴いたんです」。金は申し訳なさそうに笑う。しかし歌い出せば圧倒的な存在感を示す。

キツネの嫁入り主催イベント『スキマアワー』。2014年4月13日京都の元・立誠小学校での一コマ。その日は他にTHA BLUE HERB、テニスコーツ、Ropes、dry river stringが出演。共演する面子、会場のシチュエーションも含めて主催者の音楽性を表していた。「音楽が本来持っていた価値を取り戻す」。それがイベントの趣旨。小学校という誰の記憶にもある空間をステージに、キツネの嫁入りはどこにもない音を鳴らす。フォークとグランジの歪な融合に変拍子を多用。ギターとキーボードの奏でるメロディーを、ジャズ、ファンクの素養を感じさせるリズム隊の強靭なグルーヴが支える。核となるヴォーカルは快楽的なメロディーに安易に傾かずメッセージを詰め込む。綺麗にまとまることを拒否し、求道者のように音を紡ぐさまに、私は円空の彫り物をイメージした。最後の曲で唐突に音が途切れる。余韻が印象に残る。無音に圧倒された。神が人間と共に居た時代の感性。千年前にあったとしてもおかしくない、千年後にもあるかもしれない音楽。

胸が洗い流されるような、すがすがしい気持ちになった。普段のライヴ・イベントとは少し違う充実感。京都の中心部にあるため様々な市の行事に利用されている。しだれ桜の咲くグラウンドで子ども達が遊ぶ。学生から子連れまで客層は幅広い。廃校がまるでノアの箱舟のようだった。残すべき音楽を箱舟に積み込む。金が歌ったナイトクルージングは象徴的。受け継がれていく“うた”。CDか配信か生演奏か、どんな形態にせよ聴く者が価値を見出すかどうか。キツネの嫁入りの試みは一つの理想形に思えた。黄昏どきのこの世界を彼らは航海する。

第四回スキマアワーに出演した金佑龍(キムウリョン)
フィッシュマンズ「ナイトクルージング」を演奏した金佑龍(キムウリョン)
photo by tutty

キツネの嫁入りpresents 第四回スキマアワー「学校では教わらなかった音楽」 (高橋 夏澄)

あなたには「音楽に身を置く時間」があるだろうか。「音楽に身を置く時間」とは、スキマアワーで配られたパンフレットに書かれている言葉である。スキマアワーはキツネの嫁入り主催の元・立誠小学校で開催されているイベントだ。この日はdry river string、Ropes、金 佑龍、キツネの嫁入り、テニスコーツ、THA BLUE HERBが出演した。会場である元・立誠小学校職員室では、カレーや中古CD、手作りのアクセサリーなどが販売されており、レコードから心地よい音楽が流れている。まるで文化祭のようだ。

まず、3階の和室でトップバッターを飾ったのは、メンバーがパン屋、饅頭屋、整体師をしているという、dry river stringだ。2年ぶりのライブとのことだったが、新曲も披露し、休日の午後にふさわしいゆったりとしたステージだった。次に講堂で演奏したのは、東京で活動している、ボーカル アチコ、ART-SCHOOLギタリスト 戸高賢史からなる男女2人組ユニットのRopesである。伸びのあるアチコの声で歌われたのは、荒井由美の「卒業写真」。桜咲く季節に講堂で「卒業写真」、なんだか懐かしい気分になった。続いて和室で演奏したのは金 佑龍。今までの2組はどちらかと言えば、「聞かせる音楽」を披露したが、彼の演奏では手拍子が起き、会場全体を巻き込み、音楽を楽しむ空間を作っていた。時間の都合上、キツネの嫁入り、テニスコーツ、THA BLUE HERBは見れなかった。しかし、きっと3組とも素晴らしい演奏をしたに違いない。

1番印象に残ったのは、どの出演者というよりも、元・立誠小学校という場所でライブを見たということだ。このスキマアワーの存在を知ったとき、「なぜ、ライブハウスなどではなく、小学校で開催するのか」と思った。今まで、ライブハウスやホールなどでのライブは色々と見てきたが、このように学校で、しかも和室や講堂でライブを見るのは初めてだった。しかし、すごく新鮮だった。ライブハウスのような立派な音響装置があるわけでもなく、照明によるステージ演出がすごい!! ということもない。しかし、その素朴さがアットホームさを生み出し、「音楽に寄り添う」「音楽は生活の一部」ということを考えさせた。「音楽そのものと向き合う」ということが、「音楽に身を置く時間」なのでは、と思った。

普通のフェスやライブなどでは、客の年代が偏っていることが多いが、このスキマアワーは世代を問わないイベントだ。むしろ、家族揃って参加して欲しい。きっと「音楽に身を置く時間」を作ることで、いい休日になるはずだ。

第四回スキマアワーに出演したテニスコーツの植野隆司
テニスコーツのライブではさやにマイクを向けられ、植野隆司も歌う。
photo by 井上嘉和
スキマアワーに出演したテニスコーツのさや
スキマアワーに出演したテニスコーツのさや
photo by 井上嘉和
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