【ライヴレビュー】SUMMER SONIC 2014 大阪 Day1
- By: 杉山 慧
- カテゴリー: Live Review
- Tags: Banks, Circa Waves, Kasabian, Metronomy, Robert Glasper, tofubeats


サーカ・ウェーヴス EP
Hostess Entertainment, 2014年
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〈SUMMER SONIC 2014〉大阪の1日目に行ってきた。あいにくの雨模様であったのは確かだが、雨にそんなに当たることなく、おかげで涼しく快適な印象が残った1日だった。サーカ・ウェーヴスから始まり、ロバート・グラスパー・エクスペリメント、Banks、メトロノミー、tofubeats、カサビアンとシッカリ見たのはこの5組だった。ここではその中から予想以上のライヴを見せてくれた3つのアーティストをピックアップしてレポートしようと思う。
ついにこの日がやってきた。リヴァプールの4人組、サーカ・ウェーヴスの初来日公演だ。サマソニ大阪唯一の屋内ステージであるソニックステージには、新人としては異例の満杯の聴衆が詰め掛けた。彼らのツアー帯同スタッフの2人が入念に一つ一つの音の鳴りをチェックする。その様子を眺めていると垂れ幕が目に入った、EPのジャケットやPVにも見られた60年代の映画から出てきたようなレトロなヴィジュアル・イメージを漂わす。そして、サーカ・ウェーヴスの4人が登場すると歓声が上がる。彼らへの期待の高さがこの時点で伺える。挨拶代りにいきなりの「Young Chasers」を投下し会場のボルテージは一気にヒートアップ。巻き起こるモッシュ。これが1stアルバムを出す前の新人とは思えない盛り上がり方である。前日の取材では、キエランは“シンガロングはあまり意識していない”と語っていた。しかし、EP収録曲では、サビ部分で挙ってシンガロングが沸き起こり大合唱の心地良さを体感した。特に「Stuck In My Teeth」で彼が”Singalog!”と観客を煽ったときの一体感には鳥肌が立った。この日は新曲も多数演奏された。大合唱のナンバーになるであろう「Lost It」など、そのキャッチャーな楽曲に会場では一体感を持って受け入れられた。キエランは取材で「このバンドはプロフェッショナルの集まりである」とも口にしていたのを思い出した。それを証明するかのようにベースのサム、ギターのジョーがそれぞれソロを交えながら個を出していく様はキエランのワンマンバンドのイメージを払拭する会心のライヴであった。

Goddess (+ 4 Bonus Tracks)
Harvest, 2014年
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パラパラと小雨が降る中、サウンドチェックが行われる。定刻になると、「Drowing」のイントロが流れ出す。張り詰める緊張感を破るように、黒一色を身に纏ったスラッとした女性が黒髪をなびかせ登場。そう、LAのシンガーソングライターBanksだ。黒のロングスカートにはスリットが入っており、美しい脚が見え隠れする。女神の登場と共に先程までの小雨は上がり時折太陽まで顔を覗かせた。そんな彼女のサウンドはロンドンを中心に発展しているFKAツイッグスなどを思わせるJessie Ware以降のビートを強調した女性SSWの系譜を受け継ぐ。音源では、ダークウェーヴと言われている事などから打ち込みの要素が強いかと思われた。しかし、実際はギター/キーボードとドラムの2人によるバックバンドの生演奏を軸にして、ゾクゾクする彼女の歌声が切迫感を持って訴えてくる。スタジオ音源では、冷たさを感じる「Goddess」が、ライヴだとまた違う一面を見せてくれる。ドラムがよりアグレッシヴに前に出てくるアレンジになっており、ラストのサビで激情する彼女歌声にあわせ、ハイハットが鳴り響く様は圧巻であった。

Love Letters
Because/Warner, 2014年
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ロンドンからやってきた5人組バンド、メトロノミー。09年以来2度目の登場となった。それから5年、堂々のソニックステージへとスケールアップして帰ってきた。『Nights Out』では、ジョセフ・マウントのエバーグリーンな輝きを放つグッドメロディーと皆で踊るヘッポコポップ融合であった。その後出された2枚では、グッドメロディーはそのままにどちらも一人で聞きながら小さく口ずさむ楽曲へと方向転換。メンバーが5人となり身体に訴える肉厚な音の厚みが売りのバンドへと変貌。そのグルーヴと、オモチャ箱をひっくり返したトイポップという相反するモノが共存するサウンドを獲得した。ライヴだとそのコントラストはより顕著であった。
ステージには、最新作『Love Letters』の装飾が施されドリーミーな世界観を表現していた。メンバーでポーズを決めるパフォーマンスは、いつ見てもクスリと笑え、ほのぼのする。特に初期メンバーであるキーボードのオスカー・キャッシュは、キレのあるポーズを披露していた。そして、ポーズをとった後、出だしの音を時々外すのだ。さらに「Love Letters」で彼が魅せるタンバリンを叩きながらのダンスを見ていると、ライトを体に着けていた5年と変わらないスタイルを感じ、クスっと笑うと同時に”じぃ〜ん”と響くものがあった。

First Album (初回完全限定生産盤)
ワーナーミュージック・ジャパン, 2014年
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この他にも森高千里とコラボしたtofubeatsは、50代から若者まで入り混じる会場で、彼女の往年のヒット曲をダンスミックス。ドンドンと鳴るベースに揺られる者と、メロディーでリズムを取る者にくっきりと別れ、この四半世紀の間にBPMがこんなにも早くなったのかと実感した。オオトリのアダムランバートとクイーンなど時代を越えたコラボにより、新たな結節点が生まれる様子はとても興味深かった。