中田裕二『SONG COMPOSITE』SPECIAL: at 京都磔磔

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中田裕二: SONG COMPOSITE (通常盤)

2014年7月13日 at 京都磔磔
中田裕二『SONG COMPOSITE』SPECIAL

この男はやはりバンドマンである。バンドが生み出すグルーヴの真ん中で歌うことによって、ただならぬ色気を醸し出す男なのだ。

中田裕二(ex.椿屋四重奏)がソロとしては4作目となるアルバムを6月にリリースした。これが『SONG COMPOSITE』という自身初のカバーアルバムで、中森明菜、荒井由実、大橋純子、井上陽水、玉置浩二などの彼のルーツであり、愛してやまない日本の歌謡曲、J-POPを品よくカバーしている。

そもそもバンド時代から活動の合間をぬっては、弾き語りやアコースティック編成で、往年の歌謡曲を中心としたカバー曲を披露するライヴを定期的に開催していた中田。その公演タイトルが“SONG CONPOSITE”であり、このカバーアルバムに繋がっているのだが、 今ツアーは“SONG COMPOSITE SPECIAL”と銘打ち、ギターに平泉光司(ex.benzo)、ベースに隅倉弘至(初恋の嵐)、ドラムは小松シゲル(ノーナ・リーヴス)そしてキーボード奥野真哉(ソウルフラワーユニオン)という豪華なサポートメンバーを従えた、バンド編成でのライヴとなった。

開演時間のほぼ定刻にサポートメンバーが1曲目の布施明「シクラメンのかほり」のイントロを奏で、オーディエンスの拍手の中、黒シャツとワイン色のスーツでキメた中田裕二が登場。小松(D)と隅倉(B)が織りなすしなやかなリズムに平泉(G)の歌うようなギターが絡まり、奥野(Key)が色を付けると、ボワッとした温かみのある音が会場を包む。中田は、その生々しいグルーヴを全身で感じ、時折頭を振り乱して、エモーショナルに、気持ちよさそうに歌う。きっと彼が想像していた以上の音が鳴っているのだろう。バンドの音に身を任せて自由に歌うその姿は、どう見たって、歌謡シンガーではなくロックシンガーだった。

中田裕二: SONG COMPOSITE (初回限定盤) (DVD付)

中田裕二
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インペリアルレコード, 2014年
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また、今回はバンド編成を活かしたメリハリのある構成も見事だった。これまでの“SONG COMPOSITE”といえば、基本的にお客さんは着席して観賞するのが定番で、今回も例えば、久保田利伸「MISSING」や玉置浩二「ロマン」のような曲では、お客さんは中田の歌を堪能するし、中田もものすごい集中力で歌に向き合う。しかし、UAの「情熱」や中田の持ち曲のスウィートなソウルナンバー「彼女のレインブーツ」、ディスコ調の「MIDNIGHT FLYER」ではお客さんを立たせて踊らせ、中田はステージを所狭しと動いてお客さんを煽りライヴ感を楽しむ。ピンと張り詰めた緊張感と、会場全体を揺らすライヴ感、そしてリラックスした雰囲気を自由に行き来するのだ。そうすることで中田の醸し出す色気も一切際立っていた。森山直太朗の「愛し君へ」では、お客さんの鼓動が聞こえるくらいの静けさの中、平泉と中田がアコギで繊細なアルペジオを紡ぎ、中田が歌に入った直後、Aメロの歌詞を間違えてしまい、とっさに「ごめんやり直させて」と素にかえって笑った。すぐに「みなさんラッキーですね。2回も聴けるなんてね!」と俺様発言が飛び出したけれど、そのくしゃくしゃの照れ笑いがなんともセクシーだった。

椿屋四重奏: Tokyo City Rhapsody

椿屋四重奏
Tokyo City Rhapsody
Warner Music Japan, 2008年
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アンコールのラストには、椿屋四重奏時代の代表曲「恋わずらい」を披露。ふくよかなバンドアンサンブルが爆発するようなウネリを生み、もともとジャジーでムードのある曲が、より艶めかしく身体に響く。そして、そんなバンドの音に酔うように歌う中田。こんなにもバンドの音に全てをゆだねて歌う中田は初めて見た気がするし、その姿から、彼は今ツアーで、ルーツである歌謡曲をバンド編成で歌うことにより、自分が表現すべき理想の音楽像をしっかりと掴んだのだろうなと感じた。更に、その理想像をファンとも共有できたことは、今ツアーの大きな収獲だと思う。自分の音楽に対する自信と確信を手に入れた中田。次作が楽しみだ。