AZUMI: 夜なし

Pocket

憂歌団、上田正樹とサウス・トゥ・サウスにフジロック限定だが、ソー・バッド・レビューが再始動と、最近関西の重鎮たちが再び動きを見せている。浪速のソウル・ブルースが隆盛の時期は彼らが活動していた70年代だが、その次の世代として80年代に活動を開始し、現在までいぶし銀のブルースをギター一本で鳴らし続けているのがAZUMIだ。71年から現在も続く大阪の名物コンサート「春一番」の70年代の看板がザ・ディラン(Ⅱ)ならば、彼は休止期間を挟んで復活した95年以降の大看板を背負っている。

本作は鈴木常吉プロデュースの2枚組。“SONG”盤には神戸在住の盟友、光玄の「6月25日」、播州汚泥フォークを名乗る加古川のSSWカニコーセン「播州平野に黄砂が降る」のカバーを含む近年ライブでよく披露されている曲が中心。「現代歌謡浪曲アズミ節 天王寺“おとうはん”」は彼の代表曲「天王寺」の改題で、昨年死んだ“おとうはん”が姿を現し、生駒の山から大阪平野を眺めている会話が語りとして入る。

“ONDO”盤には近年、彼が熱中している河内音頭の新作が2編収録。「あべのぼる一代記“不常識”」は、昨年の山中一平とのコラボ盤に収録されたもののソロverとなる。ここで取り上げられる故人・あべのぼるは福岡風太と共に、長年春一番を主催した音楽プロデューサーであり、今年ハンバートハンバートが新作でも2曲カバーしたミュージシャン。リズムを刻む程度のドラムとAZUMIのギターのみで語られ、進むにつれ河内音頭の枠から外れてあべがAZUMIに憑依し「アズミ! 歌わんかい!」と吠える。

彼の歌は歌いつぐごとに更新される。その時の感情によって曲の解釈も変わり、河内音頭や浪曲をも取り入れ、何度も曲を分解しては紡いでいく。だからこそ彼の歌は聴くたびに、新たな魂が露わになるのである。タイトルの“夜なし”とは昼間に寝て、夜に働く人の意。人は色んな物を失いながら生きている。“あべちゃんもおとうはんももうおれへん。なんで故郷捨ててまで辛い仕事をせんならんねやろか、なんでこんなに独りなんやろか、夜が短い、夜が短い…。”と時に弱音も吐きながら。新世界~天王寺、加古川~神戸辺りで夜にしか生きられない人たちの孤独に、AZUMIのブルースはそっと寄り添う。

Author Profile

峯 大貴音楽ライター兼社会人、京都講座東京特派員
1991年大阪生まれ。2014年3月に京都講座 で制作した「現代関西音楽帖」を編集長として発刊し、同志社大卒業、就職のため上京。 現在もライターとしてQuick Japan,CDジャーナル,BELONGなどに寄稿。落語とフォークをこよなく愛する生粋の大阪人。HITORI JAMBOREE~Mine Daiki Official Tumblr~