【レビュー】シカゴが持つソウルミュージックの歴史を体現した一枚 | Donnie Trumpet & The Social Experiment『Surf』

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あのカニエ・ウエストもフェイバリットに上げ、シカゴ・ヒップホップ・シーンを越えて人気を集めているチャンス・ザ・ラッパーことチャンセラー・ベネット。そんな彼が地元シカゴの仲間と組んだ5人組バンドThe Social Experimentの1stアルバムは、シカゴで受け継がれてきたソウルミュージックの歴史を詰め込んだ作品だ。

本作の名義からも分かる通りバンドメンバーのDonnie Trumpetによるリーダー作である。バンドメンバーは、各々のソロ作にも互いに参加してきたため、現代のダンスミュージックとして60~70年代のノーザンソウルのアレンジを取り入れるという基本的なスタイルに変化はない。全編に渡り使われている管楽器によるアレンジ、ラップというよりも“歌”に重点を置いたスタイル、チャンス・ザ・ラッパーによる擬音語を交えたシャウト。これらはインプレッションズやシャイ・ライツなどのシカゴ勢、さらにはデトロイト時代のモータウン、それらを元に発展した70年代フィラデルフィア・ソウルを思わせる。

しかし、彼らは当時のノーザンソウルの持ち味であったカルテットによるコーラスワークには重きは置いていない。本作でのコーラスワークはクワイア(合唱)が基本である。それが最もよく表れているのが「Sunday Candy」だ。本作にはSoundCloudで公開されていた本楽曲がリアレンジして収録されている。元々、福音的な作りになっていた楽曲にコーラスヴァースを増やしゴスペル色をより全面に押し出している。このアレンジはチャンセラーが祖母を思い作った曲であるため、幼い時キャンディを貰うために行っていた日曜礼拝の様子を描くと共に、いつも見守ってくている祖母が自分にとってはキリストのように大事な存在であるということを含め表しているのだと思う。そして彼らのゴスペル的コーラスワークをシカゴという観点から見ると、50年代からゴスペルシンガー/アレンジャーとして活動していたJames Cleveland & The Angelic Chairのオーソドックスな掛け合いを思わせる。ソウルの伝統が息づく町で育った彼らがいまこういう音を鳴らしている所に文化の面白さを感じる。

そして本作を音楽的に面白くしている点は、ノーザンソウルを汲み取りながらも、“現代の音楽”としてスムージーなダンス・ナンバーに作り変えていることだ。ソウルを元に作り変えるという点では、Gap Band「Oops Up Side Your Head」をサンプリングした今年の大ヒット曲「Uptown Funk」を含むMark Ronson『Uptown Special』と共振する所がある。しかし、本作がより洗練された印象を受けるのはビートの使い方がシカゴのゲットーハウスから生まれたJuke/Footworkを取り入れることで“現代”なものへと昇華させているからだ。こう考えると彼らはヒップホップを取り込んだソウルバンドと言え、本作はそんな彼らの出自を明らかにした自己紹介的な作品である。この地がブラック・ミュージックの中心地であり、今も新しいダンス・ミュージックを生み出し続けていることを体現している一枚と言えるのかも知れない。