Especia: GUSTO
- By: 峯 大貴
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: Especia


GUSTO
つばさレコーズ, 2014年
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大阪。若者と文化に溢れたアメ村から避難して四ツ橋筋を横断し脇道へ入る。関西随一の音楽発信基地FLAKE RECORDSでレコードを一枚買って、オレンジストリートに入ればゆったり時間の流れるおしゃれタウン、堀江。そのまま真直ぐ行けばライブハウスVedette Boiteに着く。堀江系ガールズグループEspeciaが今年1月まで定例ライブを行っていた場所だ。結成2年を迎え、届けられたこの1stには A.O.R、ソウルファンク、フュージョンなどの洗練されたバブリーサウンドを、アイドルというスタンスからものにしようとこの街で奮闘し続けた、彼女たちと制作陣の足跡が伺える。
イントロのアダルトなシンセとサックスフレーズ、歌詞にも“悲しい色ね”とあり、関西の大先輩、上田正樹さながらのR&Bソウルナンバー、まさしく「BayBlues」で幕を開ける全16曲。過去のシングル2作に通じる男女7人夏物語的80’sユーロ・ポップ「No.1 Sweeper」でこそEspecia印ともいえるキャッチーな要素が詰まっているが、総じてアルバム全体の空気はクール。大胆にもヴェイパーウェイヴを取り入れた「アバンチュールは銀色に」ではイントロにデリック・メイ「Strings of Life」のフレーズが加わっていたり、「ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)」がカイリー・ミノーグやバナナラマを輩出したPWL(Pete Waterman Limited)サウンドになっているなど、既出のシングル曲は全てアルバム用にリアレンジするというこだわりようで、音楽的発見にも事欠かない。
彼女たち自身も、結成当初こそ対象年齢の高い音楽性に対するムード・実力共に背伸びした歌唱、というズレがアイドル的で魅力だったが、本作では見事に楽曲に追いついた著しい成長が見て取れる。中でも脇田もなりの太く跳ねる声はJ-POP全体を見回しても随一のファンクネスを持っているではないか。
AKBが作ったアイドルブームは余りにも肥大し、事務所の先輩BiSも解散間近。斜陽ならではの美しさもあるぞと言わんばかりの、サンセットにマッチする極上のポップス群。いざ堀江を飛び出し、次のステージへ。