【総力特集】Especia第2章へ…。第1章総括の全作品レビュー
- By: 峯 大貴
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: Especia, Negipecia

VERSIONMUSIC / ビクター期(メジャー)
3rd EP『Primera』

Primera
VERSIONMUSIC / ビクター・エンタテインメント, 2015年2月18日
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ビクターからのメジャーデビュー作。アダルトな世界観・音楽性を持ち、パーソナルな部分は全く反映されていない楽曲を彼女たちが懸命に表現しようとするところがEspeciaがこれまで“魅力>実力”のアイドル足らしめている部分であった。近年のアイドル文化の象徴であるAKBやももクロ、でんぱ組.incに共通していたドキュメンタリー性を排し、本人を置いてきぼりにするようなただよい曲を追及していたところに特異性があったのである。
しかしリード曲となった若旦那(湘南乃風)プロデュース「We are Especia~泣きながらダンシング~」は彼女たちのメジャーデビューの苦悩に対する独唱が冒頭3分にわたって続き、パーソナルな部分にフォーカスしたことはペシストに痛烈な違和感を与えた。でも今考えると活動2年を超え現状の方向性を一旦『GUSTO』で高みを極めてしまった、また本人たちのスキルの向上により従来の路線での化学反応が頭打ちになってしまう中、必然的な実験だったともいえる。事実Schtein & Longerによるこれまでを引き継いだブギーなアレンジと“Everybody Go So”なレゲエテイストの融合は、『GUSTO』以降の新たなEspecia像として徐々に受け入れられていった。また本作のジャケットやMVで使われた味園ユニバースのステージは大阪・ラグジュアリーというEspecia元来のコンセプトも合致し新たなパーティー感を提示。ライヴでは冒頭独白の3分はカットされたり、登場SEで使われるなど試行錯誤を繰り返しながらも結果としてメジャー進出以降の代表曲として浸透されることに成功したのである。
またペシストを安心させたのはそれ以外の楽曲も『GUSTO』までのEspeciaらしさを継承しつつ少しずつ変化を迎えていたことだろう。フィリ―・ソウルチックな「West Philly」、グルーヴィーなフュージョン・ソウル「sweet tactics」など一聴してつかまれるようなキャッチーなサウンドではないものの新しい試みが多数。また最も従来のスタイルに近いユーロ・ポップの「Security Lucy」でもトラックのラグジュアリーさではなく複雑かつセンチメンタルなメロディでじわじわ高揚感を煽るステップアップした魅せ方が出来るようになっている。
またメンバーの歌唱力の向上も著しく、これも初の全国ツアーを経て鍛えられたゆえ。「Security Lucy」でボーカル2トップ冨永・脇田がサビのフレーズを交互に取りながらエモーショナルにシャウトをするなんて『GUSTO』まででは考えられなかった。二人の成熟を追うように森もよりストレートに声が出るようになり曲の重要パートを担う箇所も増えている。本人たちの実力も踏まえ、またそもそものあまのじゃくな人間の集まりだからこそ今以上の高みを目指すために“変わらなければ”と模索を続ける、危うい新規性が詰まった意欲作である。
3rd Single『Aviator / Boogie Aroma』

Aviator / Boogie Aroma
VERSIONMUSIC / ビクター・エンタテインメント, 2015年7月22日
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「We are Especia」をようやく受け入れつつある時期、ぺシストたちにとって次の作品を楽しみ半分、怖さ半分で待つ中届けられたシングル。「Aviator」はレイ・パーカーJr「Ghost Busters」オマージュともとれるベースフレーズがループ、「Boogie Aroma」も合わせて久々の清涼感あふれるEspeciaど真ん中のサマーポップチューンとなった。ノーランズ、グロリア・エステファン&ザ・マイアミ・サウンド・マシーン、アラベスク、カイリー・ミノーグと世界のガールズ・グループ、シンガーの系譜も意識したアプローチはメジャーの地で一つ階段を上ったような自信も感じられ、本作をひっさげ全国23か所を回るロングツアーに出ることとなる。
2nd Album『CARTA』

CARTA
VERSIONMUSIC / ビクター・エンタテインメント, 2016年2月24日
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CARTA(Remix&Inst盤)
VERSIONMUSIC / ビクター・エンタテインメント, 2016年2月24日
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メジャー初のフルアルバムかつ現体制最後の作品となった最新作。「We are Especia」での試みに味を占めたか、冒頭「Clover」は作詞・山根康広、作曲・藤井尚之を迎えた異例のアメリカンハードロック。前作を上回るほどの期待を裏切るあまのじゃくっぷりでもはやシュールの域である。しかしボン・ジョヴィなどが彩ったUS 80’sサウンドであることは間違いなく、デヴィット・ボウイやプリンスなど作ごとにまるでアプローチを変えてしまうミュージシャンたちに習い、挑戦の象徴としてこの曲を置いたのではないだろうか。
またドラムンビートトラックの上をこれまで歌では主張の少なかった三ノ宮ちかが軸となりラップを取る「Interstellar」、今後も残る冨永悠香・森絵莉加が核となるフュージョン・ロック「Saga」、ボーカルの要・脇田もなり集大成の声を響かせる全編英詞のジャズ・ソウル「Rittenhouse Square」と全体的にウェッサイなヒップホップへの傾倒を感じつつ、新鮮なサウンドが展開されている。唯一従来のEspecia印を反映させた「Mistake」もこれまでの「No.1 Sweeper」や「Security Lucy」のようなフックの効いたものではなくミディアムなユーロ・ポップに仕上がっており、そのサンセットに照らされる引き潮のようにさざめくメロディはまるでぺシストへの置き手紙のようにも思える。レコーディング時はまだ状況や卒業の話は出ていなかったようだが着実に次のステップに上っていることがサウンドからも読み取れるだけに…。
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