【レビュー】タフな“なにわ魂”が炸裂|FEST VAINQUEUR『GENERATION 2〜7 Colors~』

FEST VAINQUEUR『GENERATION 2〜7 Colors~』
Disc Review
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FEST VAINQUEUR『GENERATION 2〜7 Colors~』
FEST VAINQUEUR
GENERATION 2〜7 Colors~
PLUG RECORDS west, 2018年2月14日
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FEST VAINQUEURが活動休止を発表した。2019年10月まで約1年間の期限付きではあるものの、2020年に大阪城ホールでの単独公演に挑戦するためにも、2018年10月28日の大阪なんばHatch公演以降は、ソロ活動で個人の力を伸ばすという。FEST VAINQUEURは、2010年代の関西のV系シーンにおいて、最も重要なバンドだ。彼らがいたから関西のV系シーンは活気があった。昨年は、ドラマーのKAZIが脱退し、思うように活動できない時期もあっただろう。それでも、2月にリリースされた4人体制初の作品『GENERATION 2〜7 Colors~』を聴くと、困難すら、自分たちにとっておいしい状況へ持っていくという、彼らの“なにわ魂”を感じずにはいられない。

本作には、7人の、そうそうたるゲストドラマーが参加したことが、リリース前から話題になった。その顔ぶれとは、FEST VAINQUEURのルーツにもあたる宮脇“JOE”知史(44MAGNUM)、同じシーンの先輩である淳士(BULL ZEICHEN 88、ex.SIAM SHADE)やshuji(Janne Da Arc)、同じレーベルに所属する先輩の風弥〜kazami〜(Daizy Stripper)、更に、BABYMETALやJAM Projectのサポートとしても有名な青山英樹(EVER+LAST)、氷室京介やGLAYをはじめ、数々のアーティストのサポートを務めてきたToshi Nagai、ゲーム音楽の“叩いてみた動画”での超絶テクが注目を集めたダイナ四と、とにかくスキルの高いドラマーがズラリと並んだのだ。

FEST VAINQUEURの魅力は主に3つある。ひとつは、ヘヴィなリフ主体のハードな曲だけではなく、メロディを大切にしたミディアム・バラードなど、ヴィジュアル系のリスナー以外にも受け入れられやすい楽曲も持ち合わせる間口の広さ。次に、関西限定で購入できる“なにわ盤”や、大型イベントでステージから、あめちゃん(飴玉)を投げてみせるなどの、茶目っ気たっぷりでユニークな発想力。そして、ヴィジュアル系シーンの中でも群を抜く、演奏力の高さだ。本作は、技巧派のドラマーばかりが迎えられていることからも、特に、演奏力に力点を置いた作品と言える。ブックレットでも、使用されたすべての写真が、ライヴで演奏中の写真なのも、本作が彼らのプレイヤーとしての側面にフォーカスした作品であることを表しているようだ。

そんな本作において、FEST  VAINQUEURはその実力を大いにふるっている。「Mirror」でのドラムの手数の多さに呼応するような弦楽器隊の多彩なフレーズ、「桜並木の下で」の、歌を引き立てる丁寧な演奏とエモーショナルなギターソロ、そして、これほど豪華なミュージシャンとの共演でも、少しも浮き足立つことなく伸び伸びと歌い上げるヴォーカルのHAL。更に、Pay money To my PainのギタリストPABLO a.k.a.WTF!?がプロデュースした「SHADOW」ではラウド・ロックに挑戦し、風弥〜kazami〜がプロデュースした「Sunnyside」ではソウルを取り入れるなど、参加ミュージシャンの手を借りながら、新しい扉を開いている点も見逃せない。

 また、エレクトロニックなアレンジの楽曲が目立った前作に対し、本作は生楽器の音が一層際立っており、そのバンドアンサンブルを聴くと、「まだまだうまくなりたい」、「あんな風に演奏したい」という、まるで楽器を始めたばかりのロックキッズのような心意気さえ感じさせるのだから、彼らの、曲作りや演奏への探究心と向上心は、尽きることがないのだろう。メンバーが1人欠けてしまった困難さえ、ポジティブに変換し、これだけのゲストとの共演を叶えたうえに、その経験をしっかり自分たちの糧としてしまうタフさ、転んでもただでは起き上がらないその精神には、FEST  VAINQUEURらしい、なにわ魂を感じる。

 今秋以降、しばらくバンドとしての動きは止まるが、1年後、4人のメンバーそれぞれがたくさんのお土産を持ってバンドに戻ってきてくれるだろう。そして、2020年の大阪城ホール単独公演の成功はもちろん、その夢の先にこそ、本当に期待をしたい。信じている。(小川あかね


※ 関西ヴィジュアル系シーンにおけるFEST VAINQUEURの重要性については、過去のレビュー「ペルソナ傷女」をご覧ください。

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小川 あかね
小川 あかね
京都府在住。趣味はセーラームーングッズ集めとアニメ鑑賞。ライターとしては、ヴィジュアル系について書く機会が多いです。
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