【レビュー】フレッシュ&ポップな熱量を感じるリスタート作 | 花泥棒『Yesterday and more』

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花泥棒『Yesterday and more』

花泥棒
Yesterday and more
Cotton Club, 2016年
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京都のバンド、花泥棒。2014年にフロントマン稲本裕太(Vo,G)以外のメンバーが全員脱退、単身夢を追い求めこの東京砂漠に流れ着いたが早くも3年目。今日の京都シーンの充実を見ると上京ドリームなど偉大なる勘違いヤローなのかもしれない。事実東京上京後はまずメンバー探しから始まり、ようやくのことでイラミナタカヒロ(Ba/ex sukida dramas)がジョイン。下北沢THREEでの主催イベント〈DOWN TOWN〉を始め、定期的にライヴを出来る環境を整ったのは比較的最近だろう。本作はようやく届いた東京移住後初音源となる5曲入りのEP。ここには「渚」に代表されるような京都時代のJ-POPな甘酸っぱさも、上京後の模索期間に一時期顕著になっていたファズがかった荒々しいローファイな面もマイルドにブレンドされた、東京でついに一旗あげる準備の整った花泥棒がここにいる!

冒頭「Back To The Future」のギター・ワン・ストロークのみ、ビートルズ「Help!」ばりのイントロから稲本の声が冴えわたるとタイトなビートとバックコーラス一発で夏の海に連れてってくれる。ヴァースでの歌詞“傷だらけのまま旅をしてる”はまるで彼ら本人のことのようにも思えるが悲壮感は全くなく、ジュブナイルで普遍的なネオアコに消化するセンスにうっとりする。続く「Baby Blue」「Fantasia」「Yesterday and More」と2つのヴァースをつないでコーラスというポップ・ミュージックど真ん中の定型様式に、要所のオルタナティヴなギターリフとざらついた音作りによってロック足らしめる花泥棒のお家芸とも言えるナンバーが続く。

「Fantasia」には“東京は夜の7時”という女性コーラスによるフレーズを挟んでいたり、表題曲「Yesterday and More」の冒頭“I wanna hold your hands”のツイスト・アンド・シャウトがかった稲本の歌い方など要所に耳を惹くパロディ的仕掛けを入れてくるのも稲本らしい。ラストの「Kung-Fu」は前作『daydream ep』(2014年)収録の「Sonic Youth in the House」のモードを引き継ぐライヴでもすでに人気曲のローファイ・パンク・ナンバー。1分半ほどのショートチューンかつ、リバーブがかったギターには京都の後輩THE FULL TEENZへの視座も伺えるが、スピッツ『インディゴ地平線』(1996年)収録のパンク・ナンバー「花泥棒」の立ち位置とも言えるようなポップ・ロック・バンドの幅として機能している。

稲本の“最後には必ず大観衆を沸かせるんだから!”というフレッシュかつポップな熱量をひしひし感じられることが嬉しい、リスタートとして申し分のない快作だ。

Author Profile

峯 大貴音楽ライター兼社会人、京都講座東京特派員
1991年大阪生まれ。2014年3月に京都講座 で制作した「現代関西音楽帖」を編集長として発刊し、同志社大卒業、就職のため上京。 現在もライターとしてQuick Japan,CDジャーナル,BELONGなどに寄稿。落語とフォークをこよなく愛する生粋の大阪人。HITORI JAMBOREE~Mine Daiki Official Tumblr~