【レビュー】Hi, how are you?『さまぁ~ぎふと』

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Hi, how are you?『さまぁ~ぎふと』

Hi, how are you?
さまぁ~ぎふと
ROSE RECORDS, 2014年
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鍵盤ハーモニカってやや高音の音がでる。それが清涼感と切なくてどこか懐かしいサウンドを奏でる。原田晃行のギター弾き語りの上を浮遊する馬渕モモの鍵盤ハーモニカを聞いてそう思った。本作は、この京都の大学生2人による夏の思い出を表現した1枚。曲名や歌詞は夏をキーワードにした言葉が並ぶ。

一曲、一曲が独立した夏の日の思い出として聞くこともできるだろう。しかし、アルバムを俯瞰してみれば、2人でどこか遠い場所へ行きたいと歌う「NIGHT ON THE PLANET」から始まり、軽井沢に行きたいと夏の現実逃避的な思いを歌う「ひしょち」、麦茶飲んで甲子園を見るという夏休みの過ごし方を歌った「お盆」、プール開きまでに髪を切ろうかなという君(=好きな人)への思いを歌った「プール開き」、おそらく、好きな人と付き合えて、20歳になったら海辺の町へ住もうという「はたち」。ところが、終盤に差し掛かり、「秋の日はつるべ落とし」という曲で様子は一変する。実は、片思いのままだったのだ。秋の海に涙を落とす。それでも、もしも、付き合えていたら……と、いう妄想が炸裂する「潮風ちゃん」。カローラⅡでドライブって、経済的なことを考えると、20歳超えて、30歳、40歳になってからできること。ラストの「メロン」で明かされる現実。

好きな子がいても、妄想ばかりが膨らみ、結局は片思い(100%)。話すことも眺めることすらもできない。なんとも切ない。

その切なさを助長するような鍵盤ハーモニカ。楽しい妄想に駆られる「はたち」では軽快なギターを弾きながら歌う原田。しかし、切ない鍵盤ハーモニカは、実は、それが現実にはならない、ただの妄想であることを暗示していたのだ。夏の楽しさと片思いの妄想の楽しさを織り込みながらも、夏の終わりの切なさと現実の残酷さを秋に収斂させ、最終的に、ひと夏の思い出は、ひと夏の妄想で終わってしまったのだ。

Author Profile

杢谷 栄里ライター兼地図描き、京都講座大阪特派員
1986年浜松市生まれ。大学進学と共に上京。学生時代は地理学とジャズサックスに熱中。そのまま東京で就職したが、転勤のため、大阪へ。UK、USインディ・ロックとハードバップを好む。『現代関西音楽帖』にも参加したことで、関西音楽シーンの面白さに開眼。極稀にLA特派員と化す。