【レビュー】Homecomings『Somehow, Somewhere』

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Homecomings『Somehow, Somewhere』

Homecomings
Somehow, Somewhere
Second Royal / felicity, 2014年
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先行曲「GREAT ESCAPE」は、リズム隊が前面に出て、重心を落としテンポもゆっくり、パンクを通過した後の80年代ポップス、その最良の瞬間を再現したかのようだった。彼らの音楽は決して過剰にならず隙間を大切に扱っている。以前から影響を公言するザ・スミスではなく、むしろプリンスやシンディー・ローパー等を連想させた。

アルバムを通して聴くと、彼らの世界観はさらに深く掘り下げられ、ザ・スミスが憧れた60年代のアメリカ黒人ポップス、そこから連続する形でオアシスのような90年代以降のイギリスのロック・バンドをも連想させた。例えば2曲目の「DANCING IN THE MOONLIGHT」はザ・スプリームスの「恋はあせらず」を思わせるモータウン風ナンバーだが、ハイファイな音作りはむしろブリット・ポップ以降の感性だ。「MALL」はシャッフル気味のエイト・ビート で、ミュートしたギター・カッティングが効果的。この曲や続く「WINTER BARGAIN」も必要な音が必要な場所で鳴らされる。適所でのコーラスも気持ちいい。

くせがなく聴く者をほっとさせる、しかし毅然とした意思を感じさせるヴォーカルも相まって、本作を通して聴いていると、トラッドな服装の女子大生がボーイフレンドとお茶をする風景が浮かんでくる。しかしそれは『フラニーとズーイ』の冒頭で、彼女はいけ好かない男の子に我慢できなくなる。あるいはバンド名通り、アメリカの大学で行われるホームカミング、つまり同窓会的なフット・ボールの試合やタキシードでキメたダンス・パーティーを連想させる。でも実は『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のホールデン君のように退学になっていて参加できない。何が言いたいかって、ホームカミングスの音楽はザ・ビーチ・ボーイズを思い出させるのだ。サーフィンできない者が書いたサーフィン・ソングのように、現実ではないからこそより強く普遍的な輝きを帯びる。そういった夢の世界を歌っているように聴こえてくる。もちろんそう感じるのは私だけで、世間の大半の若者にとっては美しい青春の1ページをイメージさせるだけかもしれないが。

後半8曲目、既発曲である「I WANT YOU BACK」、その疾走感の向かう先は未来ではなく美しかった過去の恋愛。そしてアルバムのラストを飾る「GHOST WORLD」は過去から現在に至る、素晴らしい音楽を通り抜けた果ての解放感に彩られている。オアシスのような90年代オルタナティヴでも、80年代のザ・スミスを模倣したような2000年代以降のインディー・ロックでもない。この例えは彼らの本意ではないかもしれないが、同じく京都出身のザ・ブリリアント・グリーンが90年代末に行ったように、10年代を生きる若者の感性で、新たな日本独自のポップスを創り出そうとしている。