ジェニファー・ロペス: First Love
- By: 山田 慎
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: Jennifer Lopez


First Love
ユニバーサル, 2014年
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「First Love」のイントロが始まった途端、シンセの音の渦にぐるぐると引きこまれ、気付くとダンスフロアーで踊っていた。もちろん想像での話だが、2014年エレクトロポップソング代表と言ってもいい程にインパクトがある。
ジェニファー・ロペス(以下ジェイロー)と言えば、ハリウッド女優であり、ラテンフレイバーなR&Bシンガーとして活躍する大御所。「If You Had My Love」の爆発的ヒットで歌手として認められ、成功と波乱のビッグウェーブに乗りながら、2011年に『ラヴ?』をリリース。同盤収録「オン・ザ・フロア」はビルボード3位を記録、YouTubeでは7500万回以上再生されている。
そのジェイローの曲調はヒップホップ、R&B、ディスコティックなどダンスミュージック要素が強い。共通するのは「グラマラスなアッパー感」。キレの良いダンスを妖艶に披露しつつ、ラッパーをフィーチャリングし、フロアーをグイグイと引っ張っていくことで、テンションを高めていく。ベストアルバム『ダンス・アゲイン』のタイトル曲がそれを示している。
ところが、である。「First Love」はBPM100とスローテンポ。打ち込みリズムも淡白で、シンセも短調。ジェイローに至っては畳み掛けるような歌い方も、バラードっぽさも殆ど披露していない。ヤンキースのキャップやバンダナを巻いたガタイのいい黒人がライムで乱入することも皆無。驚くことに「ないないづくし」の曲。この曲、スターにも関わらず顔出しをしないリリックビデオという形でMVを公開しているのが、自信の表れではないだろうか。今までの要素をほぼ取っ払い、新境地を切り開いた1曲は、ダフト・パンク「ワン・モア・タイム」、レディー・ガガ「ソー・ハッピー・アイ・クッド・ダイ」などと呼応。
作風の変化も楽しみな同曲収録アルバム『A.K.A.』も間もなくリリース。それまでの間、シナモンロールの渦に巻き込まれるかの如く、甘く切なく、少しスパイスの効いた歌をじっくりと噛み締めたい。