ジョセフ・アルフ・ポルカ: 天声人語

Pocket

ジョセフ・アルフ・ポルカ: 天声人語

ジョセフ・アルフ・ポルカ
天声人語
自主制作, 2014年
BUY: FILE-UNDER, disk union, iTunes

CD-Rをカー・ステレオに流し込んだとたん、彼らを育んだ長久手の平原が目の前に広がる。冒頭のニュー・ウェイヴな疾走ナンバー「虫のしらせ」で勇ましい音色のキーボードを弾きながら、てんしんくんは“僕は決してヒーローじゃないけど、みんなで息を合わせて音を出せば何かが始まりそうな気がする”という内容を歌う。彼らは愛知県立芸術大学で結成された4人組ロック・バンド。USインディーに影響された、ローファイでゆるく壊れたような音を鳴らす。ときに狂気をはらんだ演奏は、ドアーズをカヴァーする“たま”、あるいはフジファブリックをバックに歌う坂本慎太郎 とでも例えたい。

2曲目、甘ったるい声で歌われるスロー・ナンバー「かわいいねこ」で鳴るドラムは猫の足どりを思わせ、キーボードの響きは草むらにひそむ鈴虫の声だ。ベースがリードする4つ打ちサイケ・ナンバー「ラジオ」をへて、4曲目の「ゴーストタウン」ではギターの爆音がのどかな雰囲気を切り裂く。続く「夜」は、スペイシーなメロディーに牧歌的なコーラスで始まり、初期のOGRE YOU ASSHOLE(彼らの大学の先輩だ)を思わせる壮大なギター・フレーズでしめる。ラストを飾るのは沢田研二のカヴァー「TOKIO」。ヴォーカルのピッチがやや不安定なのがむしろ心地よくて、投げやりなリズム隊にへろへろなギター、アナログなキーボードの音色と合わさって絶妙のヘタウマ加減。実はそうとう練習してるんだろう。1曲目で“いつも聴いているロックバンドをやっている人達みたいにきらきらと輝いたりできるかな?”と歌った彼らだが、このカヴァーは輝いている。

深い意味なんてない選曲なんだろうけど。彼らが再演した、よたよたと疾走する「TOKIO」は、原発事故の見えない影響に絶えず脅かされる2014年の東京そのものに思える。無意識の内に時代の空気を真空パックする、こういうシャーマンみたいな奴らが、今この世界にはもっと必要だ。