現在関西音楽帖【第1回】~PICK UP NEW DISC REVIEW~

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齢25・フロム大阪。今は“東京の天満”こと阿波踊りとブルースによるカオスなポリリズムが純情的に商店街を席巻する街、高円寺に居を構えるわたくし、品川から地元・新大阪に向かう新幹線の中から口上申し上げております。

関西の音楽を中心に取り上げております音楽メディアki-ft(キフト)は音楽評論家・岡村詩野が講師を務める「音楽ライター講座in京都」の受講者で運営を行っており、間もなく開設2年。“関西音楽へのフォーカス”というコンセプトは2014年3月にBCCKSの電子書籍で発行された前身媒体、『現代関西音楽帖』から引き継いだものでございます。その辺りの詳しい歩みについてはAboutページに説明を任せるとしますが、『現代関西音楽帖』発刊から2年以上経った今、関西のローカルシーンはなお変容と拡大を続けております。

当時新星の芽吹きとして取り上げたtofubeats、Homecomings、夜の本気ダンスらは全国的な人気を獲得し、NOKIES! として取り上げたクメユウスケはSpecial Favorite Musicとしてインディシーンにポップ旋風を吹かせ、THE FULL TEENZやAnd Summer Clubら「生き埋めレコーズ」の面々を始めとして2年前には取り上げていなかったニューカマーたちも続々と台頭しております。

余談にはなりますが、本著の編集長を担当した私も当時は同志社大学の学生でありましたが、今は冒頭の通りのサラリーマンとして東京都(HIGASHI KYOTO)在住の遠隔関西ウォッチング生活となり、2年の時の流れを日々感じております。しかし日本の中枢機能が全て備わった街に住んでいても、年々“関西を拠点とする~”の触れ込みに出会う機会は増すばかり、ましてや関西だけではなく札幌、名古屋、福岡etc……とローカルシーンからの新たな才能の登場はいわんや、ローカルという軸でカテゴライズ(シーン化)するという音楽の聴き方の加速度的な発展をひしひしと感じているのです。

そんなますますの盛り上がりを見せ、リリースタイトルも爆発的に増えております関西シーン。現状のki-ftの体制ではなかなかその全てをフォローしきれないことから、久々の連載企画を立ち上げます。よりフットワーク軽く、より定期的、よりリアルタイムに音源作品をレビューしようという、延長線かつスピンオフとなる企画でございます。タイトルは前作を引き継ぎまして「“現在”関西音楽帖」。タイトルは落語家立川談志の名著「現代落語論」の出版50年である昨年、引き継ぐ形で新たな価値観を展開した立川吉笑さん「現在落語論」に対するリスペクト&インスパイアでございます。

2年前も講座受講生である我々の拙い文章、知識不足等々により様々な叱咤激励をいただきましたが、当時も今も“それでも、書くんだよ!!”というマインドは変わっておりません。本稿では関西の音楽の「現在」を紹介してまいりますので興味を持ってもらえるようでしたらこれほど幸いなことはございません。それではさっそく参りましょう。第1回は7枚のご紹介です!(前口上:峯 大貴

CUma『あの娘にボンブ』

CUma『あの娘にボンブ』

CUma
あの娘にボンブ
癒着レコーズ / PINE FIELDS, 2016年4月20日
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まず一発目に紹介するのは、所属は兵庫、属性はほぼ大阪、ダウンタウンを始めとする数々の芸人を輩出した街・尼崎を拠点とする5人組CUma(キュマ)による、初全国流通ミニアルバム。シラタカズシゲ(Vo)のソロワークスから発展したバンドであり、シラタとタツカヒロキ(G)は今月26日アルカラ主催のネコフェスを以て活動休止を発表したbradshawにも在籍している。bradshawが高い演奏力でもって、リフレインフレーズと言葉遊びのグルーヴを組み合わせたポストロック的なアプローチであるのに対して、こちらでは酒の力を借りたオーガニックかつソウルフルなサウンドだ。冒頭「whisky」では即興性の高いオールディーズ・ブルースの様相だが、桜井和寿の甲高いポップネスとG.LOVEのしゃがれたラグタイムのリズム感を兼ね備えたシライの声が独自の響き方をしている。「nawatobi」はBO GUMBOSをも思わせるアクの強いファンクナンバー。ラスト「ハリキルデ」はタイトルの通り鮮やかなコーラスでの大阪弁「張り切るで」の違和感あるカッコよさに思わずニヤつく。ゲストに箕面のバンドnayutaの2人が入っていたり、デザインは京都のSATORIの内藤ちゃんが手掛けている点には周辺の関係性も見て取れる。

しかしこれまで述べてきたような洗練されたグルーヴ、ポップなメロディに対して、彼ら最大の魅力とは初期のTheピーズにも通ずるそれっぽい言葉を並べただけの“歌いたいことのなさ、茶化し”及び悪ふざけめいたギャグ満載のMCとのギャップである。HPの文章では常に自虐的に小ボケを挟もうとするし、MVの振り切った安っぽさ(それに伴うクラウドファンディング企画)も含めて「しっかりせえよ!」と言いたくなるような、おっさんらのうさん臭さがいつの間にかクセになっているのだ。(峯大貴)

AFRICA『Summer Long』

AFRICA『Summer Long』

AFRICA
Summer Long
PULP DISC, 2016年4月27日
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続いて2014年6月に鞆良磨(Vo)、中村泰二朗(G)を中心に結成された5人組AFRICAの初全国流通ミニアルバム。大阪を拠点としながらもYogee New WavesやNever young beach、Lucky Tapesら今の東京インディを代表する面々と共鳴しており、しなやかにシーンに登場し全国的に注目を集め始めている。実際にサウンドはナイアガラの影響を自他ともに認めており、近年のいわゆるシティポップの文脈で語られがちである。しかしリゾート感のあるエンタテインメント性に富んだシンセポップサウンドはナイアガラよりも三谷泰弘在籍時のスターダスト・レビュー(80年代~94年)を思わせる、洗練かついぶし銀のセンスが光りっぱなしだ。鞆のカラッと鼻に抜けた声もリクオや大江千里といった関西出身のベテランポップシンガーの血筋の濃厚かつ懐かしさを感じる。しかし全体的な熱量は愛はズボーン、プププランド、DENIMSら日々切磋琢磨しているような同世代たちと同じく、バカ高いテンションで全編を駆け抜けており、大阪のバンドとしてのアイデンティティがしっかり刻み込まれているのだ。現行シーンにおいて東京と関西に橋が架かったことが実感できるニューカマーの登場だ。(峯大貴)

ズカイ『Jump (For you)』

ズカイ『Jump (For you)』

ズカイ
Jump (For you)
自主制作, 2016年6月3日

マンクモ(Vo, G)を中心に大阪で2013年に結成。メンバーチェンジもありながらハタチそこそこのモヤモヤを携え、くすぶりながら活動を続けてきたが、本作は3曲入り自主制作2nd EPである。ドミノ・レコーズ界隈のインディー・ロックサウンドをandymoriのような日本の叙情的ギターロックエッセンスで咀嚼したとでも言おうか、音の繊細な足し引きが琴線に触れるガラスの様なポップネス。「ビックウェーブはまだ来ない」はタイトルから彷彿するサザンの「忘れられたBIG WAVE」みたいなノスタルジーではなく、まだ何も成し遂げてない、夢に向かってさまよい続けている荒削りな若者の歌だ。「ある町では天才とうたわれたミュージシャン」、「うんざり!」も含め、歌詞や演奏はまだまだ拙い。ただ小山田壮平を思わせるジュブナイルなマンクモの声がロックスターが持つ危うさを伴って胸を掴んでくるし、ギターフレーズにもThe PastelsやReal Estateを思わせる平坦な中にキラリを光る瞬間を織り交ぜてくる天性の人懐っこさがある。同世代バンドの躍進、就職活動といった尻を叩かれる状況に置かれる中、大きい波を待っている場合ではないと去勢された精神がついに開放された。ビックウェーブを起こすのはこれからだ。(峯大貴)

Boiler陸亀『自伝』

Boiler陸亀『自伝』

Boiler陸亀
自伝
SWOON records, 2016年4月20日
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2010年に結成、個性の強すぎるフロントの女性3人(ボーカル、ギター2人)と男性ベース、ドラムはサポートという編成、Boiler陸亀の初全国流通アルバム。すでに台湾でもツアーを行ったりと赤丸急上昇の活躍ぶり。“動くサファリパーク”と標榜する通り、キング・クリムゾンとたまと上沼恵美子とメスカリン・ドライヴとでんぱ組.incが集結して「We are the world」を歌っているようなひっちゃかめっちゃかな電波的プログレッシヴサウンド。「そして豚がロックを覚えた」「チャッカマンになりたいな」「伝説の麺づくり男」と視点の定まらぬぶっとんだタイトルや歌詞世界にも翻弄される。バカ騒ぎではあるものの“どれだけ憎んでも現実は変わらず、僕が変わるしか方法はないらしい”(←豚視点だが……)、“僕たち死んだら燃やされる 骨か石かもわからん姿に”(←でもチャッカマンにはなりたくないだろ……)とたまに胸捕まれるフレーズが組み込まれている点がニクイ。綿棒、豚、チャッカマン、麺づくりの男、デブ、じじい、ばばあと常に彼女たちはヒトモノを物理的対象化して語る。そのコンセプトは社会批判ではないもののピンク・フロイドの『アニマルズ』に通じてマッドに響いている。

関西ゼロ世代以降のガールズバンドとしてミドリからtricotの系譜におとぼけビ~バ~がいるならば、彼女たちはあふりらんぽやDODDODOの系譜にあり双璧をなす。大阪テン年代の演者がついに揃ってきた!(峯大貴)

SPARK!!SOUND!!SHOW!!『Xクラシック』

SPARK!!SOUND!!SHOW!!『Xクラシック』

SPARK!!SOUND!!SHOW!!
Xクラシック
SPA!DUPA! INC., 2016年5月11日
BUY: Amazon CD, タワーレコード

そして大阪のアイデンティティを色濃く感じながらも、出世街道を駆け上がっているのはスサシことSPARK!!SOUND!!SHOW!!。昨年の1stミニに引き続き、ライヴで育て上げた3曲を詰め込んだEP。高槻にある大冠高校出身のタナカユーキ(Vo, G)、チヨチヨ(B, Cho)を中心に2010年結成された4人組。当初は青春パンク、メロコアが長らく勢力を誇った北摂のシーンの影響下にあるやんちゃなポップ・パンク・バンドで流通音源もないまま2014年には〈フジロック〉のROOKIE A GO-GOに出てしまった強者だが、紅一点のミカテラ(Key, Vo)加入後、彼女の甲高いポップヴォイスと各人の演奏力の高さでもって一層多様性が開花。ハードコア、ニューウェーヴ、ヒップホップ、オルタナを抱擁したパーティ・ポップ・ミュージックを展開している。「ダンザーラ」はFAITH NO MOREや関西の先輩Limited Express(has gone?)にも通じるオルタナ・パンク。一転「ミッドナイトサイダー」は前のめりなメロコアだがキーボートとベースフレーズがやけにセンチメンタルにタメが効いており、「Do the POP!!」はCreepy Nutsとのステージコラボなどこの1年のオーヴァーグラウンドでの経験をどばっと吐き出したような怒涛の1分半ヒップホップナンバー。

ライヴではThe Specials「Little Bitch」とRIP SLYME「JOINT」をマッシュアップした曲やEarth Wind&Fire『BOOGIE WONDERLAND』を曲間に入れ込むなどポップミュージックの微積分のうまさを見せつけ、POLYSICSや同世代では京都のSATORIにも共鳴するポップ職人っぷりを発揮している。リミエキやモールルに続く関西ボーイズ&ガールズロックの急先鋒。人気爆発の導火線に火はすでについている!!(峯大貴)

ペペッターズ『andP』

ペペッターズ『andP』

ペペッターズ
andP
School of Rock RECORDS, 2016年4月6日
BUY: タワーレコード

「うお! スゲェかっこええ!!」

と、思わず某CDショップの視聴機の前で言ったら隣にいた客と店員、さらには「NO MUSIC NO LIFE」と書かれたポスターに写る樹木希林からも冷たい視線を感じたので、そそくさとレジへ行って買ったのが、この作品。毎年神戸で行われる日本最大のチャリティーロックフェス〈COMIN’KOBE〉の公開ライヴ・オーディションにて2015年にグランプリを受賞し、〈RO69JACK 2015〉でも入賞をはたしたペペッターズ。そんな彼らが去年の末よりライヴ会場限定で販売していたミニ・アルバム『andP』を今年の春に全国流通としてリリースしたのだが、ファンク、ニューソウル、アシッド・ジャズ、そしてJ-POPまで経由して出来たその楽曲はファンクネスなグルーヴ感に甘くメロウな歌声、さらにドラム・ギター・ベースが3者三様で違う動きをしつつも、ポップスに持っていてほしい可愛らしさやキャッチーさまで詰まっている。まだ、バンドメンバーは20代前半、これからどんな作品を作り出すか僕は楽しみで仕方がない。(安井 豊喜

ナードマグネット『CRAZY, STUPID, LOVE』

ナードマグネット『CRAZY, STUPID, LOVE』

ナードマグネット
CRAZY, STUPID, LOVE
THISTIME RECORDS, 2016年5月11日
BUY: Amazon CD&MP3, タワーレコード, iTunes Music Store

カッコ悪い大人になってしまったのかもな。そんなこと呟きながらイヤホンから流れてる音楽を何度も聴きかえしていた。関西のパワーポップ代表ナードマグネットが結成10年目にして出した初のフル・アルバム『CRAZY, STUPID, LOVE』。内容をみればバンドの方向性を決定づけた「ルーザー」をはじめ、タワーレコード店舗限定シングルにもなった「アフタースクール」や、ライヴでは定番になっている「Mixtape」など彼らのこれまでの活動を総括した内容であり、どの楽曲からも、ほとばしる情熱や青春の一ページを切り取ったような初々しく甘酸っぱいサウンドが耳に響き渡る。ちなみにこのタイトル、ライアン・ゴズリングのチャラ男演技が素晴らしかった映画『ラブ・アゲイン』の原題から来ている。この映画は忘れかけていた愛を取り戻すまでを描いた作品であるのだが、そう考えると同じ名前の本作も「こんなはずじゃなかった」と今を嘆く僕らに、忘れかけていた情熱を、青春期に持っていた熱き思いを思い出させてくれる。追い続けないと、絶対あきらめちゃいけない。そんなメッセージを彼らはこの作品で高らかに歌い続ける。(安井豊喜)

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関西拠点の音楽メディア/レビューサイト ki-ft(キフト)

関西を拠点とした音楽メディア/レビューサイト「ki-ft(キフト)」は音楽ライター講座in京都を通して生まれました。音楽を伝えるためのメディアとして、アルバムレビューを中心に更新。複数人によるクロスレビュー、コラムなども書いています。