【レビュー】人との縁で歩んだ、ここ2年の航路を辿る作品 | 金 佑龍『ling lom』

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金 佑龍『ling lom』

金 佑龍
ling lom
apple of my eye, 2015年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

筆者がスタッフをしていた今年の祝春一番。出番を前にフラフラでお茶を注ぎに来る彼。「出番前はお酒やないんですね」と聞いたら「昨日もライヴで、飲みすぎてまいましてん。」と腰低く、顔色悪く、にっか~と笑う彼。何とも人懐っこく、愛らしく、人との関わりと縁の中で生きているという感じがする。

cutman-booche解散後のソロデビュー作となった『Live in Living』の発売以降、BIGNOUNや キムウリョンと45トリオなどの活動も挟みながら多方面の人と関わり、歌ってきた。2年ぶりのアルバムとなる本作は、3月のミニアルバム『The Straight Story』での “生と死”“家族”という悶々と深いコンセプチュアルな内容を引き継ぎながら、寂しがりなゆえの人懐っこさと、楽曲の幅からソロとしての成長を感じる作品だ。

カットマン時代の“浪速のG.ラヴ”と称されていた音楽性をおおよそ引き継いでいた前作に対して「オンリーロンリー ~Part 1~」でのレゲエ、「とける feat. シーナアキコと薔薇の木」のドラムンビートや、「Feeling down」で見せるカリプソ要素などワールドミュージックな音楽性をも抱擁したものに大きく幅を広げている。

一方で、ミニアルバムでは小曲だったがフルサイズとして完成させ、より抒情的となった「時が止まれば~Reprise~」やキムウリョンと45トリオのセルフカバー「When You Decide(月桃荘version)」など、過度な手を加えずとも別の世界を曲に吹き込んでしまう一面は彼のお家芸とも言えよう。その最たるものは昨年7インチでも発売され、本作にも収められているフィッシュマンズのカバー「ナイトクルージング」だ。東日本大震災で気持ちが沈んでいた時に聴いて再び歌い出すきっかけとなった曲であり、ルーパーを使って幻想的に描き出す演奏スタイルはライヴでも一番息を呑む場面となっている。“だれのせいでもなくてイカれちまった夜”、“窓はあけておくんだよ”という歌詞と声に新たな意味が付加され、間違いなく彼の代表曲かつ歌い手としてのアイデンティティとなる楽曲だ。

moqmoqのオカザキエミ(Choなど)やシーナアキコ(Keyなど)、PHONO TONES・きわわの宮下広輔(ペダルスチール)、tobaccojuiceの脇山広介(Dr)などそれぞれが別にメインワークスを持ち、互いにライヴ・レコーディングをサポートし合う同世代のミュージシャンたちが脇を固め、やいやい言いながら曲作りをしていった様子が手に取るようだ。これもウリョンの人間味がなせる空気感であり、仲間集めの旅の如くライヴでのコラボを重ねる中で多様な音楽を吸収していった、彼のこの2年の航路を辿るような作品だ。

Author Profile

峯 大貴音楽ライター兼社会人、京都講座東京特派員
1991年大阪生まれ。2014年3月に京都講座 で制作した「現代関西音楽帖」を編集長として発刊し、同志社大卒業、就職のため上京。 現在もライターとしてQuick Japan,CDジャーナル,BELONGなどに寄稿。落語とフォークをこよなく愛する生粋の大阪人。HITORI JAMBOREE~Mine Daiki Official Tumblr~