【レビュー】女は怖い | 葉山久瑠実『いてもいなくても一緒だよ?』

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葉山久瑠実『いてもいなくても一緒だよ?』

葉山久瑠実
いてもいなくても一緒だよ?
dont care records, 2016年
BUY: Amazon CD, タワーレコード

今回『いてもいなくても一緒だよ?』を聴くにあたり、改めて過去にリリースされた作品を聴き直していたのだが、その時に「葉山久瑠実というアーティストはブラック・ユーモアのセンスがあるアーティストなのかもしれない。」と、そんなことを感じた。以前、このki-ftで葉山久瑠実の『イストワール』をレビューしたときに、生々しいながらもコミカルとシニカルが融合した歌詞と、一歩引いて客観的に見る構成が彼女の魅力であるという事を書いたのだが、それはブラック・ユーモアという差別や偏見といった笑えない事を、皮肉やユーモアを交えて描くときに生きる要素ではないかと考える。そして、顎関節症により歌手活動を約1年休止していた彼女が2月5日にリリースする本作は、まさにこのセンスが思う存分に活かされた形で女性というものを描いた作品となっている。

女性がテーマという事で「仕事で疲れるOLにエールを送るようなもの?」、または「失恋で落ち込んでいる女の子たちをそっと慰めるようなもの?」と、こんな想像された方もいるかもしれないが、本作ではそんな女性たちの化けの皮を剥がすような内容となっている。ピアノの弾き語りで紡がれる女性の姿は、男の前で猫かぶっている女友達に「死んじゃえばいいのに/そしたら私の一人勝ち」と心の中でつぶやき(M1「死んじゃえばいいのに」)、ときには泣いてる女友達をめんどくさそうに思いながらも慰め(M3「よしよしなでなで」)、ときには自分の出来損ないな顔を見て、この世の終わりかの如く嘆く(M2「コンプレックス」)等、どの姿も欲望、絶望、嫉妬にまみれている。

このような曲が続けば嫌悪感を持ちCDプレーヤーのスイッチを止めたくなりそうなものだが、嫉妬や憎悪をテーマにした曲には敢えて軽く明るい曲調にして滑稽さを浮き彫りにし、また絶望をテーマにした曲では悲壮的な歌声に「これでもかっ!」というくらい重く暗いサウンドにする事で、絶妙に作品全体のバランスをとり、観客の耳を引き付ける。そして、標準語、女性口調、命令口調の3種類を使い分ける事で、悲壮さと滑稽さをより際立て、生々しい表現でも皮肉と笑いを交えた、まさにブラックユーモア的な魅力が溢れる作りとなっている。彼女の持つユーモアセンスで強かでドロドロとした女性の本性をえぐり出した一作、それが葉山久瑠実の『いてもいなくても一緒だよ?』である。

Author Profile

安井 豊喜
大阪出身の20代と30代の境目を漂うPOPミュージックバカ一代。基本は邦楽(ロック、ポップス、アイドル等)が中心。ちなみにTwitterのアカウント名が「ゴリさん」となっているのは高校時代あだ名である説が有力。