みるきーうぇい: ほんとは生きるのとても辛い。
- By: 山本 悟士
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: みるきーうぇい


ほんとは生きるのとても辛い。
HOOK UP RECORDS, 2014年
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最初は“怖い”とか“メンヘラ”といった類の言葉が脳裏をよぎるかもしれない。しかし、このバンドが掻き鳴らすものはそんな薄っぺらい先入観を切り裂いた先に聴こえてくると私は声を大にして言いたい。伊集院香織(Vo.&Gt.)を筆頭に大阪で結成された3人組バンド、みるきーうぇい。このシングルは津田大介も評するように今の世代の核心を突く問題作だ。伊集院の学校での実体験から生み出されるその生々しい曲たちは彼女の人間性をありのままに映し出している。
可愛らしいバンド名とは裏腹に痛々しいほどに鋭く尖った音楽が心臓めがけて切りつける。しかし、傷口から流れてくるのは血ではなく、もっとドロドロした人間的で美しいもの。あまりの美しさに一瞬心を奪われる。表題曲「ほんとは生きるのとても辛い。」は一聴するとポップな装いだが、ツイッターやフェイスブックを眺めているだけではわからない現代社会に生きる様々な人間の闇をリアルに歌っている。あの人もこの人もみんな生きるのが辛くても体裁を取り繕う。単調な曲進行の一方で、そんな彼らの背中を叩くように徐々に喉元につっかえていた本音を吐き出していく。その対比にグッと引き寄せられる。
人間誰しも思い出したくないほどの辛い過去を抱えているものだ。今にも途絶えてしまいそうなギターのミュートが弱々しい心臓の鼓動を思わせるM2「世界で一番悲しいこと」。この曲で彼女は“世界で一番悲しいこと 何をしていても、思い出すこと。”と直視するかのように歌う。普通なら目を背けるはずが、彼女は逃げるどころか音楽を武器にして立ち向かう。どこか目には悲しみを浮かべ、ギターを掻き鳴らす。その姿が私にはとても頼もしくて、いつでも少し泣けてしまう。
辛くて辛くて、そんなとき口から出た「ほんとは生きるのとても辛い。」という言葉。自分の弱さを隠さずにさらけ出す、それは本当の意味での強さではないだろうか。きっと彼女はとても強い人間なのだと思う。本作を聴いて、自分も少し強くなれた気がした。