三輪二郎: Ⅲ

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三輪二郎: Ⅲ

三輪二郎

マイベスト!レコード, 2014年
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京都拾得で前野健太の弾き語りを観た。感極まり悶えるように激しく歌いながら、終演後に話すと丁寧で穏やかな物腰に驚いた。高田渡、井上陽水から、サニーデイ・サービスに至るまで、日本のブルース、カントリー、フォーク・ロックには、静かな演奏の内に狂気、激情、ユーモアが共存している。前野の盟友であるSSW三輪二郎もきっと同じ類いの表現者だろう。

本作『Ⅲ』は男なら基本的に共感するような唄で埋め尽くされていて、ヤバいくらいエロい。力が抜けているようで、青筋出てるみたいな不思議な曲たち。息継ぎの間、瞬間瞬間のギター・カッティングにこめられた何かがいちいち心臓に訴えかけてくる。mmm(ミーマイモー)がコーラスで参加した、言葉遊びも楽しい「君とチャイ」、それに大森靖子とのピロー・トークのようなデュエット「ダブル・ファンタジー」から漂う18禁な色気も、アルバムの流れの中で適切に機能していて、浮いていない。むしろ三輪の男臭い表現と女性のしなやかさが上手い具合に絡み合い対比され、互いの魅力を引き立たせている。

その大森とのかけ合いの中で、三輪は自身を裸の大将だと吐き捨てる。何気ないその言葉はしかし、彼の表現の本質を突いている。裸の大将の愛称で知られる画家山下清は、サヴァン症候群だったともいわれる直感像記憶の持ち主、旅先で見た風景を正確に描くことができたという。一方、三輪も何気ない日常に潜む魔物をギターと唄で真空パックする。7インチ・カットされる軽快なブギ「すけろくさん」では、風変わりな男、都会の片隅に吸いこまれ消えていったどこか憎めない奇人について歌うが、これは三輪版「ワイルド・サイドを歩け」かもしれない。そもそも三輪の唄の登場人物は皆、どこか抜けていて、だからいとおしい。だいたい、こんな世の中まともに生きていたらおかしくならないほうがおかしいのだ。

だからあんた、おいらのギターを聴いとくれ。ディランだってストーンズだって目じゃないから。