【レビュー】クリエイター集団が生んだ今の京都を体現するポップアルバム | 渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』

渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』
Disc Review
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渚のベートーベンズ『フルーツパーラーミュージック』
渚のベートーベンズ
フルーツパーラーミュージック
思い出レコード, 2015年
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まるで町屋を改築したコワーキングスペースやシェアハウスに集うクリエイター達のようにそれぞれの特色を希釈も折衷もさせずに同居させているかのようだ。小さい街、少ない人数で入れ替わり立ち替わりにエイジレス、ジャンルレスな無法地帯的なコラボが繰り返されることで、びっくりするような音楽が生まれ続けているのが2010年代に入っての京都の印象である。

丸太町の駅から京都御苑に背を向け、下ったところに位置し、先日2015年いっぱいの営業を持って閉店を発表したライヴハウス“ネガポジ”。そこでブッキングも務める江添恵介が中心となり2014年に結成された渚のベートーベンズも4人全員が作詞・作曲を手掛け、かつマルチプレイヤーである集団。同じく京都のバンドである私の思い出の所属レーベル“思い出レコード”から第2弾アーティストとしてリリースされる本作1stは、そんな京都の街の各所で生まれたボーダレスな音楽を各自の高い作家性でもってぎゅっと押し込めたような作品である。

ティン・パン・アレーがバックを務めているかのような「今日は街へ行かずに」、4畳半ハワイアンフォーク「壁」、オルタナロックサウンドの「Party Boys Party Girls」、だらしない日常をジェリーフィッシュサウンドでカラフルに表現した「暇なら飲もう!!」など曲ごとにまるで様変わりしていく『ホワイト・アルバム』形態。「木漏れ陽の中から」などに見えるコーラスの重厚さ、楽曲の多様性、それぞれの強い個性という点で言えば最も端的に近い姿勢を持つのはTHE ALFEEともいえるのではないだろうか。それぞれに個性を持ちながらも4人の才能のぶつかり合いになることはなく、ルーツに忠実かつ合議制でもってわいわい取り組まれる中で生まれたグレートアマチュアリズムの坩堝のような楽曲達だ。本日休演の岩出拓十郎を始めとする京都界隈の多彩なゲストミュージシャンの参加もサウンドの華やかを手伝っており、タイトルからもカラフル・多種多様の志向が伺える。

15曲の中でもハイライトは「雨はひとひら」。大瀧詠一、サニーデイ・サービス、スピッツ、ママレイドラグなどを彷彿する、コーラスワークの美しい、ささやかなジャパニーズフォークポップ。ふり幅の広いの中でのど真ん中な良心として甘酸っぱさを薫らせている。
そんなそれぞれのわがままに任せやりたいことを詰め込みながらも、なんとなくまとめあげてしまう許容性の高さがまた京都らしいとも言える。この時代のこの土地だからこそ生まれたポップアルバムである。

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峯 大貴
峯 大貴
1991年生まれ 音楽ライター 兼 新宿勤務会社員 兼 大阪人
CDジャーナル、OTOTOY、Mikikiなどで執筆。
過去執筆履歴などはnoteにまとめております。
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