【レビュー】neco眠る『BOY』
- By: 白原 美佳
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: neco眠る


BOY
こんがりおんがく, 2014年
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2012年の活動再開以後、私は関西の様々なイベントでneco眠るを目撃した。活動休止前は「盆踊り系」と形容されていたが、初めて味園ユニバースで彼らを観た時には、本作品の1曲目でもあり、こんがりおんがくとカクバリズムのWネームで12インチでも発表されている「お茶」がneco眠るのリード・トラックとなっていた。キャッチーで踊れる事に間違いはないのだが、形容されているサウンドと若干のズレが生じているのを感じた。その予感通り、本作で彼らは6年のブランクを経て、新たなステージへ華麗に着地した。
本作メイン・コンポーザーのBIOMAN(Syn, Per.)による功績が著しく、アートワークのディレクションも手がけ、結成来のリーダーの森雄大(G)と同じくらいここ最近で大きな存在感を示している。ドラム、ベース、リズム・ギターが規則正しく反復する「neco眠る節」はそのままに、その上にとびきりチープなMIDIサウンドを乗せていく構成が中心だ。8ビット・チップ・チューンのパイオニアは過去にYMCKがいたし、海外アーティストにも多く存在し、目新しいものではないのだが、「素材ありき」でアレンジするパターンが定番な前述のアーティストに対し、彼の場合は、オリジナルのサンプリングとボコーダーを駆使する。その音像は、昭和世代には堪らない土曜日の昼下がりにテレビから流れる吉本新喜劇を彷彿させる、懐かしくも切ないフレーズの他に、不覚にも1度聞いたら脳内にこびりつくおかしくて微妙なフレーズがてんこもりで、どの角度から突入してもリスナーを裏切らない。M7「すごく安い肉」M8「ドラゴンラーメン」M9「KANIMISO」の流れはそのままスーパーの生鮮食品売り場で流れていても全く違和感は無いだろう。一方で、ラスト「BOY」ではエモーショナルなギターとノスタルジックなシンセサイザーの音色が重なり、クライマックスへの盛り上がりも忘れない。全17曲、徹底的に電子音満載なのに、気負いの無さが凄い。生活感に溢れている妙。青空の下の原っぱでの演奏が似合う妙。つまり、音楽性の着地点に変化はあったものの、バンドの根本は揺るぎないものだった。
こうして、「自分達の暮らしの環境下で、世の中の大衆音楽を昇華したらこうなった」neco眠る式メソッドを見事に提示し、おまけにセルフブランディングも成功した。恐らくは、10年代関西音楽シーンの重要な鍵を握る作品になるだろう。もしかしたら『BOY』こそが、新時代のJ-POPの正しい解釈なのかもしれない。いよいよ森がモタコ(オシリペンペンズ)とDODDODOで旗揚げした〈こんがりおんがく〉(今年も〈こんがりおんがく祭〉が2015年5月4日に大阪城野外音楽堂で開催決定!)のレール上で全国へ舵をきったと思うと、ニヤニヤが止まらない。