【レビュー】オシリペンペンズ『オールバック学園Z』

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オシリペンペンズ『オールバック学園Z』

オシリペンペンズ
オールバック学園Z
こんがりおんがく, 2015年
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「まだパンクスやらせてくれ」と、石井モタコはステージでそう言った。3月6日、南堀江socore factoryで行われたオシリペンペンズのレコ発ライヴでのことだ。何気ない一言かも知れないが妙に引っかかった。“パンクス(punks)”とはなんだろうか? 社会に反抗する精神を持つ者、ステージ上で過激なパフォーマンスを見せる者、セックスとドラッグにまみれた生活を送る者のことだろうか? パンクスの定義は十人十色、人それぞれだがオシリペンペンズの最新アルバムを聞いた上で私は「理屈抜きにその時代に流れる空気感や雰囲気を切り取ることが出来る者」を挙げたい。

本作『オールバック学園Z』は前回から約2年半ぶりのリリースであり、意外にもスタジオ録音のフルアルバムとしては2枚目となる作品である。2014年にドラムの迎祐輔が脱退、それまでPAとして参加していた道下慎介がドラムに転向し新編成で制作されたものだが、音楽性や曲調に大きな変化は無く、隙間を重要視した音作り。勿論、中林キララのギターは相変わらずキャプテンビーフハートも賛辞を送るであろうと思わせるほどに切れ味鋭く、小細工なしのモタコのボーカルも健在だ。一方で道下のドラムは前任と比べ明らかにヘヴィでタイト。それにより、彼らの今までの作品に比べれば、骨太でスマートさすら感じる1枚となっている。

しかし、何より注目すべきなのは、やはりモタコが書く歌詞だ。本作には「ナンセンス」や「ユーモアあふれる」といった表現で片づけられない言葉がそこかしこに見られる。例えばM1「グッドモーニング」は、風景の描写だけでこの先アルバムの中で起こる様々な理不尽な出来事を予言するようであるし、「拷問」は一見時代劇風コントのようでもあるが、「君たちこの先いいことなんか一つもない」という冒頭部分での宣言に加え、次々と拷問を受け苦しむ自分と唯一人それを見て笑う殿様という構図には、思わずハッとさせられるものがある。そう、本作においてモタコは飄々としながらも、時代の空気感を読み取り作品に落とし込んでいる。今の彼らには以前の様な荒々しさは無いかもしれない。このアルバムを聴き「彼らは成熟し大人になった」と感じる人もいるかもしれない。しかしそれでもまだ自身をパンクスだと自負するモタコは現代の不条理、理不尽さをシンプルな言葉で露わにさせ、その上で時代を生き抜く術を作品に詰め込んだのだ。町田康はパンクについて述べるのに「瞬間的」という言葉を使ったが、時代を切り取り常に「今」という瞬間に輝いている彼らは決して「かつてシーンを築いたバンド」でも「伝説のバンド」でも無く「今」を評価されるべきパンクバンドだ。