【レビュー】Tequeolo Caliqueolo『S.O.S』
- By: 佐藤 ワカナ
- カテゴリー: Disc Review
- Tags: Tequeolo Caliqueolo


S.O.S
PRIVATE RECORDS, 2015年
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「このバンド名、何て読むの?」彼らとの出会いの多くは、ここから始まるのではないだろうか。しかし、リスナーの頭上に浮かんだ“?マーク”は、彼らの音楽を聴けば、胸躍る“!マーク”へと変わっていくのだ。
京都発の4ピースバンド、読み方はテキョロカリキョロだ。2015年9月16日にリリースした『S.O.S』が自身初の全国流通盤となる。2011年より盟友、夜の本気ダンスとの共同企画〈NEW ERROR〉を開催し、京都の片隅で面白いシーンがあるぞと叫んでいた。時は流れ、一足先に全国区で自分たちのダンス・ロックを轟かせる夜ダンの存在は、彼らの共同企画がメインストリームとなり得る音楽であったことを証明した。またこの頃から、今や関西を代表するロックDJイベント〈onion night〉でも、テキョロの楽曲がじわじわと存在感を放つようになっていく。西ノ宮のキュウソネコカミ、堺のKANA-BOON、京都の夜ダン……といった具合に〈onion night〉が後押ししたバンドたちが、関西のインディー・ロックシーンを盛り上げていくという流れはいまも健在で、満を持して全国へ打って出たテキョロは、次に大きくシーンを掻き回す逸材として一目置かれる存在となっている。
今作の冒頭を飾るのは作品タイトルになっている「S.O.S」! まるでバイクのエンジンをふかすかのように鳴らされるギターを皮切りに、力強いバスドラムのビートが、身体中にリズムを刻みこんでいく。序盤はシンプルに、そこから徐々に音数を増やし、その最高潮でサビを迎える王道パターンには、これまでのテキョロのイメージを一新するような感覚を覚えた。それは力強くキャッチーで、リスナーの好奇心を鷲掴みにする、一転、続く「Action Please」からはいつものテキョロワールドが展開される。控えめなBPMに似合いのカッティングギターが小気味よく鳴り、そこに扇谷真澄(Vo, Syn)が軽快に言葉を乗せていく。アークティック・モンキーズやフランツ・フェルディナンドに通じる、ラフでありながらも存在感抜群のイカしたギターリフが随所に散りばめられ、楽曲を彩っていく。そして、BPMはそのままに、さながらDJがターンテーブル上で曲を繋いでいくかのように間髪入れずに「INVADERS」が始まるという、何ともニクい展開! 1曲単位だけでなく、1枚の作品としての完成度の高さをうかがわせる。ラストを飾るのは、ライヴの定番曲「Whammy」だ。裏拍を心地よく感じるアップビートと、相反するタメが共存し、緩急を効果的に魅せつつ、どんどんリスナーを巻き込んでいく。リフレインされるサビの「Whammy Whammy You!!」は、実に単純明快。ライヴでもシンガロング必至のキラーチューンで、陽気にアルバムをしめくくる。
緩めなビートでラップを織り交ぜつつ、ルーズに展開していくテキョロ流のダンス・ロックに彩られた今作。彼らの鳴らす音は、軽くステップを踏みながら、気張らずに踊れる、そんなダンス・ロックだと思う。自分たちのこれまでやってきた音楽を提示しつつ、挑戦的な一面もみせた今作は、スタート地点に立つに相応しい1枚となっている。まだまだ粗削りな部分が見え隠れするが、彼らの楽曲は抜群の求心力を持ち合わせている。